表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/102

解禁するか、継続するか、

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

恋愛バラエティの収録を見守ったヒロは、

帰りの車内でも落ち着かなかった。


(借金、消える……!)

(でもノアに彼女……)


隣のノアは、いつも通り静かだ。


「番組だから」

「これから、ちゃんと考える」


その言い方が妙に真面目で、

ヒロは余計に複雑になる。


アパートに戻ると、

佐伯とサクラ、そしてニコが待っていた。


「おかえり、ノア君」


ニコはいつも通り、柔らかく笑う。

幼馴染の距離感。

変わらない声。


「完済、なんだよね?」


「うん」


「そっかぁ……よかったね」


本当に嬉しそうなのに、

ほんの少しだけ寂しそうにも見える。


そしてニコは、そっと差し出した。


「はい、ノア君」


タバコ。


ヒロが即座に反応する。


「ちょっと待て!!」

「彼女できたんだぞ!?」

「禁煙継続が条件だろ!?」


ノアの手が止まる。


ニコはきょとんとする。


「そうなの?」

「じゃあ……だめだね」


あっさり引っ込めようとする。


その仕草がやけに優しい。


ノアは箱を見つめたまま、動かない。


「……吸えば、うまい」


「当たり前だろ!」


「でも」


一瞬だけ、ニコを見る。


ニコは変わらず、ふわっと笑っている。

責めない。

止めない。

ただ、見ている。


「約束あるし」


ぽつり。


「怒られる」


「そこかよ」


「あと」


少しだけ間を置く。


「嫌われるの、効率悪い」


ヒロは呆れながらも、どこか安堵する。


ノアはタバコを一本抜き取り――


数秒、見つめて。


ゆっくり、箱に戻した。


「今日は、やめる」


ニコが、少し目を丸くする。


「えらいね、ノア君」


「別に」


窓を開ける。


夜風が入る。


ノアは深く息を吸う。


煙の代わりに、冷たい空気。


「……まあ、悪くない」


ニコはその横顔を見つめたまま、小さく呟く。


「ノア君、変わったね」


「合理的になった」


「ううん」


ニコは首を振る。


「前より、ちゃんと我慢するようになった」


その声はやわらかい。


少しだけ、寂しさが混ざっている。


ヒロはそれに気づいて、

視線を逸らした。


(……ああ)


(これ、静かな三角だ)


放送日の夜。


ノアはいつも通り非常食をかじり、

いつも通り配信をつける。


『吸った?』

『禁煙続いてる?』


「続行」

「契約あるし」


『彼女つよw』


「合理的な人」


コメントが流れる横で、

ニコはソファに座って、

ノアの背中を見ていた。


幼馴染の距離。


手を伸ばせば届くのに、

今は少しだけ遠い。


借金は消えた。


タバコも吸わなかった。


けれど――


消えていないものもある。


ヒロのアパートは今日も騒がしい。


笑いと、

少しの気まずさと、

言葉にしない想いを抱えながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ