ヌード撮影!?喜んで!
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
社長が持ってきた次の仕事は、ヒロの予想を三段跳びで超えていた。
「有名写真家のモデルだ」
「当たれば、借金は一気に減る」
ヒロの脳内に、一瞬だけ光が差す。
(ついに普通の仕事……!)
だが社長は、ついでのように言った。
「枕はない」
「ただし、ヌードはあるかもしれない」
「安心材料と不安材料を同じトーンで出さないでください!?」
ヒロが机を叩くより早く――
ノアは目を輝かせていた。
「成功すれば借金が減る」
「合理的だね」
「合理的で片付けるな! 裸だぞ!?」
「布の有無は本質じゃない」
「本質の話をするな!!」
しかし。
炎上耐性持ちの男は止まらない。
話はトントン拍子で進み、
契約も締結。
撮影は三日間の山奥ロケと決まった。
当日、早朝。
マネージャーの真田が迎えに来る。
「じゃあ、行ってくる」
荷物ひとつ。
顔はいつも通り無表情。
――その日、ノアは帰ってこなかった。
次の日も、連絡がつかない。
ヒロの胃が、またひとつレベルダウンする。
(山に埋められてないよな……?)
(芸術家って、命削る系の人種だよな……?)
(ていうか、三日間って聞いてたけど、無事なのか……?)
ヒロの脳内はサスペンス映画。
三日目の夜。
ようやく、着信。
「今、山奥」
「電波、全然なかった」
「生きてた!!」
どうやら撮影場所がド田舎すぎて、
完全圏外だったらしい。
「写真家さん、シャッター止まらなくてさ」
「僕、何もしなくていいから楽だった」
「三日間だぞ!?」
「立ってただけ」
「立ってただけで三日!?」
「たまに座った」
「誤差だ!!」
話を聞けば――
有名写真家がノアを見た瞬間、
「被写体が完成している」と覚醒。
山の朝霧、廃墟、川辺、木漏れ日。
場所を変えながら、ひたすら撮影。
ノアは指示通り立つだけ。
芸術が、勝手に仕上がっていったらしい。
「ごはんは?」
「美味しかった」
「温泉もあった」
「合宿じゃねえか!!」
数か月後、写真集として発売予定。
前評判は上々。
借金も、かなり圧縮できる見込み。
ヒロはようやく、深く息を吐いた。
「これで……少しは落ち着くよな……」
だが。
「次はいつ?」
「同じ感じなら効率いい」
ノアは、まったく懲りていなかった。
なお、ヌードの有無については――
「芸術だから問題ない」
と、本人は言っている。
こうして今日も。
借金と仕事と非常識のバランスだけが、
奇跡的な均衡を保っている。
そしてヒロの胃だけが、
静かに、しかし確実に削られていくのだった。




