禁煙の代わりに、借金が増えました
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
結果から言うと――禁煙企画は失敗した。
ノアは吸わなかった。
だが。
精神が先に壊れた。
目は虚ろ。
口数は激減。
「合理的」という口癖すら出てこないという、前代未聞の緊急事態。
雑草事件は完全コンプラアウト。
スポンサー会議にて、即・封印決定。
『これは笑えません』
重い一言だった。
企画はお蔵入り。
映像は倉庫行き。
世に出ることはない。
つまり――
炎上も、バズりも、なし。
ただ、現実だけが残った。
数日後。
ヒロの前に、分厚い封筒が置かれる。
違約金。
追加撮影費。
再編集費。
スポンサー対応費。
番組差し替えコスト。
ヒロは無言で合計欄を見る。
「……増えてる」
借金残高:
1000万 → 1650万。
静かに、だが確実に。
「……は?」
声が出なかった。
ノアは横で喫煙所の前に立ち、深呼吸。
「吸ってないよ?」
「空気吸ってるだけ」
「そのポーズやめろ!!!」
「ニコチンは摂取していない」
「理論上はクリーン」
「借金はクリーンじゃない!!」
真田は遠い目で資料を閉じた。
「……次は、堅実な仕事にしましょう」
「体を張らない企画で」
声が完全に戦場帰り。
ヒロは封筒を抱えたまま固まる。
「1650万って何だよ……」
「住宅ローンか……?」
ノアは少し考える。
「合理的に分割すれば――」
「その単語禁止!!」
禁煙企画は世に出ていない。
だから世間は何も知らない。
ノアはいつも通り、
少し変わっていて、
少し炎上体質で、
でもなぜか使われ続けているタレント。
ただ裏側で、
借金だけが、
きれいに積み上がっていた。
ヒロは天井を見上げる。
「……完済する頃、俺何歳だ?」
ノアは真顔で答えた。
「長期戦だね」
「だから言うな!!」
合理的問題児と、
強制保護者たちの戦いは、
静かに、しかし確実に
泥沼へと進んでいくのだった。




