禁煙企画で人生終了
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
事務所の社長が満面の笑みで持ってきた次の企画。
「禁煙企画、です」
その瞬間。
ノアの顔色が、健康診断の時より悪くなった。
BGM:不穏。
「……ドッキリ?」
「本気です」
真田の優しい声が、とどめになった。
前日。
ノアはベランダで、いつも以上に丁寧にタバコを吸っていた。
火をつける所作がゆっくり。
煙を吐く時間が長い。
まるで映画の別れのワンシーン。
「やめろ、その顔」
「フラグ立てるな」
ヒロのツッコミも虚しく、翌日――
禁煙生活スタート。
タバコ没収。
ライター没収。
灰皿撤去。
代わりに渡されたのは、ニコチンガム。
ノアはそれをじっと見つめる。
「……噛むの、非合理的じゃない?」
「吸う方が非合理的なんだよ」
開始一日目。
まだギリ強がれた。
二日目。
明らかに無口。
三日目。
目が虚ろ。
瞬きが減る。
会話が途切れる。
「……世界が遅い」
「お前が鈍ってるんだ」
そして四日目。
事件は起きた。
ノア、突然ダッシュ。
「おい!?ノア!?」
ヒロと真田、全力追跡。
辿り着いたのは、アパート裏の空き地。
そこには――
地面の雑草をかき集め、
紙に包み、
真剣な顔で検証するノア。
「……代用できるかもしれない」
一同、凍結。
「色んな意味でアウトだ!!!」
真田とスタッフが即回収。
ノアは我に返り、手の中の雑草を見つめる。
「……ごめん」
「さすがに、効率悪かったね」
「効率の問題じゃない!!」
ヒロ、全力ツッコミ。
妙な沈黙が落ちる。
カメラだけが、無情に回っている。
スタッフの一人が小声で言う。
「……これ、放送できる?」
真田は額に手を当てながらも、どこか確信していた。
(でも……)
(ここまで本気で苦しんでる姿は、嘘じゃない)
その夜。
ノアはベランダに立ち、
何も持たずに空を見上げていた。
「……吸わないと、時間が長い」
ヒロは隣に立つ。
「生きろ」
「合理的に?」
「泥臭く」
ノアは小さく息を吐いた。
煙は、出ない。
禁煙企画。
それは炎上よりも、
爆発よりも、
本人の理性を削る最難関クエストだった。
そしてスタッフ全員が思う。
(これ……)
(成功しても失敗しても、絶対バズる)
嫌な予感しかしなかった。




