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無茶振り歓迎、借金持ちタレントです

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

至るところで、ノアは炎上ギリギリの行動をやらかしていた。


普通の配信者なら、とっくに消えている。

スポンサーが飛び、番組が打ち切られ、SNSは焼け野原――それが定石だ。


だが、なぜかノアは消えない。


むしろ逆だった。


「また見たい」

「次は何やらかすんだ」

「炎上芸なのに不快感ゼロなの謎」


視聴者は減るどころか、増えていた。


妙な中毒性。

炎上と天才のあいだを反復横跳びする男。


そしてノアは、再び商店街ロケ番組に呼ばれることになる。


「また来たよ」


軽い挨拶。

反省の色、ゼロ。


スタッフは(頼むから今日は爆発しないでくれ)と祈りながら、ロケ開始。


名物のどら焼きを差し出される。


「うちの看板商品なんです!」


ノアは一口かじり、首を傾げた。


「……どら焼き、初めて食べた」


空気が止まる。


「え!?」

「人生で!?」

「逆にどう生きてきたの!?」


ノアは騒ぎを気にせず、もぐもぐ続ける。


「甘い」

「皮と餡の比率が合理的」

「最適解に近い」


理系の研究発表みたいな食レポだった。


ネットは即座に反応。


『絶対食ったことあるだろwww』

『語彙がプロで草』

『もぐもぐノア、かわいい』


炎上しそうで、しない。

ギリギリを攻める男。


次は酒屋。


「地元の地酒、どうです?」


「いただきます」


ニコニコしながら、グイッと一気飲み。


スタッフ絶叫。


「ちょ、待っ――」


「うまい」


以上。


だが、なぜか拍手が起こる。


商店街の人も笑顔。

視聴者コメントは大盛り上がり。


『飲みっぷりが英雄』

『これで炎上しないのバグだろ』

『顔が無垢すぎる』


ロケも終盤。


(あ、最後は喫煙だな)


スタッフも視聴者も、もはや様式美として覚悟していた。


そのとき。


「最近ね、ストリートピアノ置いたんだよ」


商店街の人が、何気なく言う。


「弾けるなら、弾いてみる?」


完全な無茶振り。

バラエティ的には“失敗待ち”の流れ。


ノアは一瞬だけ考え、

タバコに手を伸ばしかけ――やめた。


「……いいよ」


ピアノの前に座る。


そして、弾いた。


――ガチだった。


素人のポロンポロンではない。

指が迷わず鍵盤を走り、旋律が空気を塗り替える。


商店街の雑踏が、静まる。


子どもが立ち止まり、

店主が手を止め、

カメラマンが息を呑む。


気づけば、人だかり。


誰も喋らない。

ただ、音だけが流れる。


演奏が終わる。


一拍の静寂。


そして、割れんばかりの拍手。


ノアは立ち上がり、平然とひと言。


「喫煙所、どこ?」


スタッフは確信した。


(この人……)

(ステータス配分、完全にバグってる)


こうしてノアは今日も、

炎上と才能の境界線を、

無自覚のまま軽々と踏み越えていくのだった。

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