借金一〇〇〇万円のヤニカス奴隷、商店街ロケでなぜか才能が開花する
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ノアのタレント転向・第一弾。
内容はシンプル。
商店街を歩き、地元の人と交流する。
――炎上要素、比較的少なめ。
真田は事前に深呼吸を三回していた。
(爆発だけは……爆発だけは避けたい)
ロケ開始。
ノアの目が輝く。
理由は単純だった。
古い商店街の一角に――喫煙所。
(……ある)
その瞬間、ノアのテンションは最大値を更新。
真田、即座に釘を刺す。
「最後まで我慢です」
「合理的じゃない」
「番組構成です」
論破。
最初に立ち寄ったのは、昔ながらの肉屋。
「揚げたてだよ」
差し出されたコロッケを、ノアは素直に受け取る。
一口。
もぐもぐ。
「……芋の味がする」
真顔。
スタッフ、数秒沈黙。
そして爆笑。
「そのまんま!」
「でも嘘がない!」
ノアは続ける。
「衣の油分と塩分が最適化されている」
「合理的コロッケ」
「新ジャンル作るな」
だが不思議なことに、
店主はなぜか嬉しそうだった。
「正直でいいねえ!」
次は居酒屋。
昼間から陽気なおじさんが絡んでくる。
「兄ちゃん飲めるか?」
「合理的な範囲で」
差し出された缶ビール。
「いいんですか?」
ニコニコ。
ゴクゴク。
一気。
「……うまい」
それだけ。
なのに、拍手。
なぜか場があたたかい。
「なんだこの兄ちゃん」
「素直だなあ」
真田は気づく。
(計算してないのに、空気を掴む……?)
そして商店街を巡り歩き、
ロケの締め。
ついに――喫煙所。
ノアは許可を確認し、
丁寧に一礼。
タバコに火をつける。
すう、と吸い、
ゆっくり煙を吐く。
その横顔は、
なぜか妙に落ち着いていて、
夕方の光と混ざり合う。
スタッフが小声で呟く。
「……なんか、絵になるな」
「自然体すぎる」
通りすがりのおばあちゃんまで言う。
「この子、変だけど嫌いじゃないよ」
変なのは確定。
だが嫌われない。
少し離れた場所で見守っていた真田は、
メモを取りながら確信した。
(炎上体質なのに)
(なぜか人に懐かれる……?)
真田はその日のうちに社長へ報告した。
「ノアは……素材が強いです」
「放っておいても画になります」
「たぶん、制御するより活かした方が早いです」
電話口の社長が沈黙する。
『……爆発は?』
「今のところ、ありません」
『よし』
こうして、
ヤニカスで合理主義で爆発属性持ちの問題児は、
なぜか“商店街に愛されるタレント”として、
一歩を踏み出した。
なおロケ終了後。
ノアは満足そうに言った。
「喫煙所がある商店街は、良い商店街」
真田は静かに思う。
(評価基準が一貫してるのが逆に怖い)




