ヤニカス奴隷が1000万の借金を背負ってタレント転向することになった件
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ノアの所属事務所から、ヒロは呼び出された。
理由は――なぜか“保護者”として。
「保護者って何!? 俺、親でもマネージャーでもないんですけど!?」
電話口で抗議したが、
『一番止められそうなので』
という理不尽な理由で却下された。
そして現在。
高級感あふれる応接室。
場違いなヒロ。
隣で足を組み、なぜか堂々としているノア。
やがて、事務所の偉い人が入ってきた。
笑顔。
だが目が一ミリも笑っていない。
(ラスボスだ……)
「さて、費用の件ですが」
ヒロは反射的に背筋を伸ばす。
「まず、キッチン修理代が三百万円」
ヒロ、深呼吸。
(よし、知ってる数字だ。耐えろ、俺)
「それから――恋愛バラエティの違約金が七百万円」
思考停止。
「……え?」
「合計、一千万円になります」
カン、と頭の中で何かが折れる音がした。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「途中離脱ですよね!? 爆発はしましたけど!」
「はい」
偉い人は穏やかに頷く。
「番組イメージの毀損」
「企画変更に伴う編集費」
「スポンサー対応」
「安全対策会議」
「その他諸々」
“その他諸々”がラスボス級だった。
ヒロの顔色は、もはや紙。
「い、一千万円って……現実の数字ですか……?」
「はい、税込みです」
優しさゼロの追撃。
偉い人は静かに選択肢を提示した。
「通常でしたら、一括、もしくは分割で返済していただきます」
ヒロ、白目寸前。
「もしくは――」
来た。
これは選択肢ではない。
「アイドル路線を終了し、タレント枠へ移行」
「バラエティ、配信、イベント出演」
「炎上耐性を活かした企画特化型人材として稼働」
肩書きが物騒すぎる。
(炎上耐性を活かすな)
横を見る。
ノアは腕を組み、不満顔。
「非合理的だ」
「僕の専門分野じゃない」
「専門分野って何!? 爆発!?」
ヒロは必死に笑顔を作る。
「ノア……」
「一千万円だぞ……?」
「破産コースか、働くかだ……」
ノアは少し考える。
本気で計算している顔。
「……効率は悪い」
「でも、破産すると住居とタバコが不安定になる」
「そこ基準!?」
「なら、働く」
あっさり決定。
偉い人は満足げに頷いた。
「では本日より、“問題児リアリスト枠”で」
枠の名前が終わっている。
契約書が差し出される。
なぜかヒロにも。
「え?」
「監督責任ということで」
「なんで!?」
こうしてヒロは、
自覚ゼロのまま保護者に就任し、
一千万円の借金を背負い、
合理主義で爆発属性持ちの問題児タレントを管理することになった。
事務所を出たあと。
ヒロは空を見上げた。
「……俺の人生、どこで分岐ミスった?」
隣でノアが言う。
「ヒロ」
「タレント活動って、合理的にやれば儲かる?」
「まず爆発するな」
ヒロの胃が、
本格的に悲鳴を上げ始めた瞬間だった。




