ヤニカス奴隷、早くもクビ宣告
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
第二回・鑑賞会。
今回の放送内容は――恋愛観を語り合うシーンらしい。
ヒロは開始五分前から胃が痛かった。
(頼む……今日は爆弾発言だけはやめろ……)
しかし画面に映ったノアの手元には、しっかり酒。
嫌な予感しかしない。
テロップ:『本音トーク』
「終わった……」
ヒロが呟く。
番組内、しっとりとした空気。
女の子が照れながら聞く。
「ノアくんの恋愛観って、どんな感じ?」
ノア、グラスを回しながら淡々。
「恋愛は、人間の感情が絡むから難しい」
「非効率的」
スタジオざわつく。
まだセーフ。
まだ戻れる。
だが次の一言で、すべてが崩壊した。
「セックスだけでいい。割と好き」
――静止。
コンマ一秒で空気凍結。
ヒロ、テレビに向かって絶叫。
「思ってても言うなぁぁぁ!!」
女の子、完全フリーズ。
スタッフの顔、引きつり。
BGM、なぜかキラキラ系のまま。
地獄である。
(終わった……)
(店も俺も社会的に終わった……)
しかしSNSは別ベクトルで爆発。
『女装やめたらクズで草』
『合理的すぎる暴言』
『清々しすぎて逆に好き』
『炎上芸の完成形』
炎上しているのに、フォロワー増加。
もはや意味が分からない。
放送終了後、ヒロのスマホが鳴る。
着信:ノア。
「……何」
「放送見た? ヒロ、ごめん……僕、クビだって」
ヒロは天井を見上げた。
(でしょうね!!!!)
だが声には出さない。
「発言だろ……」
「ううん、違う」
その言い方が、嫌すぎた。
――翌日。
慰めの会と称した飲み会が、ヒロのアパートで開かれていた。
ノアはなぜか元気。
佐伯も参戦。
「テレビデビュー、惜しかったな」
「惜しいか? 炎上祭りだったぞ」
佐伯はニヤリ。
「クズ発言だけでクビって、案外厳しい世界だな」
ノアはきょとん。
「?」
「発言でクビになったんじゃないよ」
ヒロの背筋に冷たいものが走る。
「……何した」
ノア、ひらりと紙を出す。
「修理代、三百万」
沈黙。
「は?」
「キッチン、ちょっと焦がしちゃって」
「ちょっとの桁が違う!!!」
ノアはあっさり続ける。
「手料理を振る舞おうとしたら、爆発した」
「爆発!?!?!?!?」
どうやったら恋愛番組で爆発イベントが発生するのか。
なろう系でもなかなかない。
ヒロは床に突っ伏す。
「お前、魔法でも使ったのか……」
「フランベって、派手にやるものかと」
「やりすぎだ!!」
ちなみに原因は、
油+アルコール+換気不足+タバコ。
役満である。
「今回は事務所が立て替えてくれるって」
ヒロ、蒼白。
(立て替え……? つまり後で請求……?)
ノアはのんびりタバコに火をつける。
「さて、一服」
ヒロ、限界突破。
「お前絶対それが原因だろ!! 禁煙しろぉぉぉ!!!」
ノアは煙を吐きながら首をかしげる。
「合理的に考えて、ストレス軽減は重要だよ?」
「合理的の使い方間違ってる!!!」
こうして今日も、
ヒロの胃と理性は削られ続ける。
なお翌朝。
SNSトレンド入りワードは――
『爆発系恋愛リアリスト』
ヒロは静かに思った。
(なんで人気上がってるんだよ……)




