男バレしたらなぜか女性ファンと売上が増え、常連の金持ちが山に消えました
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
ノアは、あっさり男に戻った。
女装もウィッグもやめ、
配信も私服のまま、男の姿で行うようになった。
『普通にイケメンじゃん』
『男の方が落ち着く』
『女装より今の方が好き』
結果。
なぜか女性ファンが増えた。
「意味が分からん」
ヒロはカウンター越しに呟く。
コンカフェの客層も変わった。
以前は男性八割だった店内が、
いつの間にか男女比ほぼ半々になっている。
「……なんで女の子多いの?」
「合理的だから」
ノアは胸を張り、
いつもより少しだけドヤ顔だった。
「男の方が安心感あるらしい」
「話しかけやすい」
「あと、非常食が面白い」
「最後いらねえだろ」
「売り上げは伸びてる」
「問題ない」
「まあ、店の売り上げになるなら……」
ヒロは渋々頷く。
「いい、のか……?」
「いいでしょ」
ノアは即答した。
――だが、問題は起きた。
常連の一人が、
ぱったりと姿を見せなくなったのだ。
子高。
金持ちで、偉そうで、
ノアのことを「俺の女神」と言い、
黙って金を落とし続けていた男。
「そういや……」
ヒロは売上表を見ながら言った。
「子高、最近来てなくない?」
「来てない」
ノアは淡々と答える。
「男バレしてから?」
「そう」
「……どうする?」
ヒロは少し迷ってから聞いた。
「探す? 連絡するとか」
ノアは首を振った。
「去る者は追わない」
「非合理的」
「冷たくね?」
「感情を挟むと判断を誤る」
「いや、俺が情で店回してるんだけど……」
ノアは肩をすくめる。
「客層は安定している」
「売上も問題ない」
「子高がいなくても、店は回る」
「……そっか」
ヒロは納得したふりをしたが、
どこか胸の奥がざわついた。
――その頃。
子高は、山にいた。
スマホの電波は入らず、
コンビニも見当たらない。
焚き火の前で、
子高は虚空を見つめていた。
「……ノアちゃん……」
誰もいない山中に、
その声だけが、静かに消えていった。




