表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/104

合理的には成功、社会的には詰み

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

――結論から言うと。


非常食は、バカ売れした。


理由? そんなもの、誰も知らない。

だが、事実としてそうなった。


メーカー公式サイトは一時サーバーダウン。

「例の非常食」「木屑飯」「味不要のやつ」――

世間はその奇妙な愛称を、狂ったように検索した。


『逆に気になる』

『そこまで言われる味、体験したい』

『ノアが毎日食べてるなら人は死なない』


……いや、完全に方向性がおかしい。




翌日の配信。


ノアは、開幕から無言だった。


コメント欄はすでにカオス状態。


『非常食の人きた』

『木屑王』

『今日も食う?』


「……食べない」


低い声で、短く答えるノア。


『え?』

『裏切り?』

『案件切られた?』


「いや」


ノアは少しだけ間を置き、ぽつりと。


「普通に、米」


『人間アピール草』

『味覚回復した?』


その瞬間、画面の端に通知が浮かぶ。


【非常食メーカー公式:ノア様】


ノアは一瞬、目を細める。


「……今?」


嫌な予感しかしない。




配信後、ノアはメールを開いた。


『想定以上の反響、誠にありがとうございます』

『現在、全フレーバーが品薄状態です』

『つきましては――』


次の一文を読んだ瞬間、ノアは固まった。


『“非常食の人”としての

 継続的タイアップをご検討いただければ幸いです』


「……は?」


横から覗き込むヒロ。


「なに?」

「また燃えた?」


「燃えた結果」


ノアは無表情で言う。


「売れた」


「は?」


「僕」


淡々と続ける。


「非常食の人になった」


ヒロは数秒黙る。


「……いや、意味わかんねえよ」


「僕も」


だが、世界は待ってくれなかった。




数日後。


ネット記事の見出しが躍る。


【効率厨配信者ノア、非常食レビューで社会現象】

【味を切り捨てた男】

【“不要”が流行語候補に?】


ノアはスマホをそっと伏せる。


「……名前で呼ばれなくなった」


「非常食の人?」


ヒロが確認する。


「うん」


ニコが恐る恐る口を挟む。


「で、でも……売れたなら、すごいことですよね……?」


「すごいよ」


ノアは頷く。


「合理的には、成功」


一拍置いて、ぽつり。


「……でも」


「もう一生、普通の飯を食っても」


「“非常食の人”って言われる」


ヒロが吹き出す。


「一生モンの称号じゃん」


「いらない」


不幸体質が呼んだのか、効率厨が招いたのか。


いずれにせよ。


この日からノアは、

“非常食の人”として、


――不本意ながらも、

揺るぎない地位を築くことになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ