表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/107

炎上で沁みる、別枠

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

ノアの配信は、安全面への配慮という名目で、アイドル事務所の近くにあるスタジオになった。


結果として――

家であまり配信しなくなった。


夜、窓辺が静かだ。

煙を吐きながら外を眺める姿も、最近は見ない。


別に。

気にしているわけじゃない。


……ただ、生活のリズムが少し変わっただけだ。


「……布団、干すか」


自分でも理由が分からないまま、布団を干した。

天気は悪くない。予定もない。

取り込んで、叩いて、ふかふかにする。


使うかどうかは、分からないけど。


数日後。

大学で佐伯が、いつもの軽い調子でスマホを突き出してきた。


「ヒロ」

「ノア、また燃えてる」


「……今度は何だ」


嫌な予感を抱えたまま動画を再生する。


食事配信だった。


ノアがテーブルに、銀色の包みを置く。

見慣れすぎていて、ため息が出る。


「……それ非常食だろ」


ノアは当然のように開封し、

笑顔のまま、普通に食べ始めた。


コメント欄が、一瞬で荒れる。


《それ一番まずいやつ》

《木屑の味って有名》

《味覚どうなってんの》

《可愛い顔でやるな》


「だから言っただろ……!」


思わず声が出る。


画面越しのノアは、淡々としていた。


「効率がいい」

「調理時間ゼロ」

「栄養は十分」


――言い返しが、全部正論なのが一番まずい。


《味覚音痴確定》

《ロボット説》

《人間やめてて草》


その日の夜。


ノアは配信を切り、珍しく家にいた。

窓も開けず、煙も吸っていない。


「……配信」

「少し、控える」


「炎上したからか」


「味覚の話」

「思ったより、刺さった」


そこ、気にするんだなと思う。


少し考えてから、俺は言った。


「……でもさ」

「俺の飯は、ちゃんと食うだろ」


ノアは一瞬だけ考えて、

真面目な顔で答えた。


「それは、別」


「別?」


「ヒロの飯は」

「美味しい」


「非常食は?」


「効率」


「同じ“食べる”だろ!」


本気で不思議そうに首を傾げる。


「だから」

「比べてない」


視線が、部屋の奥に向く。


「……布団」

「今日、ふかふか」


「……干しただけだ」


ノアは何も言わず、

当たり前みたいに布団に潜り込んだ。


特別な言葉はない。

理由の説明もない。


それでも分かる。


この家は、ノアにとって“戻る場所”になっている。


炎上も、配信も、非常食も続く。


ノアは相変わらず効率で生きていて、

俺は相変わらず振り回されている。


それでも――

飯と布団だけは、

いつの間にか“別枠”として守られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ