表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/116

穀潰しだと思っていた奴隷が、有能らしい

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

結論から言うと、俺は笑われた。


それも、心配とか同情とか一切なしで。


「ははははははは!」


テーブルを叩きながら腹を抱えている。


大学近くのファミレス。

向かいに座っているのは佐伯。


講義より配信を優先する男。

だが趣味ではない。


こいつは――配信で生活している。


「無理無理無理、腹いてぇ」


「笑いすぎだろ……」


俺はコーヒーをすすりながら、昨日から今朝までの出来事を全部話した。


酔っ払い。

契約。

奴隷。

市役所。

解除不可。

違約金三千万。


佐伯は笑いすぎて涙を拭いている。


「いや待て……」


息を整えてから言う。


「その奴隷、今どこ?」


「家」


「会わせろ」


「即答すんな」




結局、連れて行くことになった。


問題は服だった。


「着替えこれしかない」


差し出したのはジャージ。

俺サイズ。


奴隷はそれを見ても表情を変えない。


「問題ありません」


数分後。


袖は余り、裾は床を擦る。

完全に借り物だ。


なのに妙に似合うのが腹立つ。


「ありがとうございます、ご主人様」


「その呼び方やめろ」




佐伯の部屋に入った瞬間だった。


「……」


佐伯が止まった。


視線が奴隷に固定される。


「……エルフ?」


「僕のことですか?」


佐伯が一瞬固まる。


「あ、いや……」


「名前は?」


ここで俺は気づいた。


――名前知らない。


「お前、名前は?」


奴隷は少し考えてから言った。


「ノアです」


「偽名っぽいな」


「たぶん偽名です」


認めるんだ。




佐伯の部屋は、機材だらけだった。


モニター三枚。

マイク。

ミキサー。

カメラ。


完全に配信部屋。


「コメント確認するわ」


佐伯がPCを触る。


その後ろからノアが画面を覗く。


「視聴者三千人ですね」


「配信者なんで」


「でも今、二百人抜けました」


佐伯の手が止まる。


「……見てたのか?」


「チャット速度です」


ノアは平然と言う。


画面を指差す。


「今この話題、弱いです」


「雑談の方が伸びます」


佐伯が振り返る。


「……なんで分かる」


ノアは少し考えてから答えた。


「視聴維持率」


「あと女性視聴者が多い」


「深夜帯の方が伸びますね」


沈黙。


佐伯が画面を見る。

それからノアを見る。


「……」


「……」


俺はコーヒーを飲む。


「いや、こいつ穀潰しだぞ」


ノアが首を傾げる。


「僕、役に立っていませんか?」


佐伯は俺を見た。


ゆっくり言う。


「ヒロ」


「それただの奴隷じゃない」


「……は?」


「頭おかしいくらい有能だぞ」


「いや家事できないし」


「そこじゃねぇ」


佐伯はノアを見る。


「なあ」


「お前」


「配信やる気ない?」


ノアは少し考える。


それから首を振る。


「僕はご主人様の奴隷なので」


「ご主人様の許可が必要です」


二人の視線が俺に集まる。


「いや知らん」


即答した。


ノアは満足そうに頷く。


「ではやりません」


佐伯が頭を抱えた。




この時の俺は、まだ分かっていなかった。


契約した相手が、


どれほど有能で、

どれほど面倒で、

どれほど厄介なのか。


この生活が、


静かに、

そして確実に、


俺の人生を変え始めていることを。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ