新人が倒れた原因が制服だったので、改修することになった話
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
その日の終わり、ノアが俺に提案してきた。
「今日は、早めに店を閉めよう」
ニコの体調と、今日一日の混乱を考えての判断だろう。
俺も異論はなかった。
「……わかった」
「俺も、早めに切り上げる」
最後の客を見送ったあと、俺たちは店の奥で簡単なミーティングを開いた。
ノアはいつも通り落ち着いた様子だったが、今日はニコを後ろから支えるように抱いている。
ニコは目を少し腫らし、声も弱々しい。
ノアは静かに口を開いた。
「今回の件は、ニコのせいじゃない」
「問題は、制服にある」
「……制服?」
思わず聞き返してしまう。
「胸のあたりがきつくて、動きにくい構造だ」
「長時間着る前提じゃない」
ニコが、小さく頷いた。
「本当に……息が苦しくて……」
俺は言葉に詰まった。
着たことがない以上、そこまで考えが及ばなかった。
「詳しい人を、呼んである」
ノアがそう言った瞬間、背筋に嫌な予感が走る。
その直後、店のチャイムが鳴った。
今日はもう閉店だと伝えようと俺が入口に向かう前に、やたら元気な声が飛び込んでくる。
「メイド服の話なら、俺に任せておけ!」
「……子高か」
嫌な予感は的中した。
子高はずかずかと入り込み、分厚い資料を机に広げる。
紙の束がばさっと音を立てて散らばった。
「まず基本からだ。メイド服には大きく分けて二種類ある」
「『ヴィクトリアンメイド型』と『フレンチメイド型』だ」
ヴィクトリアンメイド型は、動きやすさを重視した実用的な作業着。
フレンチメイド型は、見た目重視の、接客・演出向き。
「で、これが過去のうちの制服だ」
資料に並んだデザインには、確かに見覚えがあった。
「動きやすい作業着の形をしてないのに」
「見た目はコスプレ用みたいに身体を締め付けてる」
「だから、長時間立って動くと息が詰まる」
俺は思わず唸る。
理屈は、通っていた。
「フルオーダーだと金はかかるが」
「過去のうちの制服をベースにリメイクすれば、貧乏でも形になる」
「……言い方はともかく、現実的だな」
「だろ?」
こうして、思ってもみなかった方向から、
コンカフェのメイド服――改善計画が動き出すことになった。
今日の出来事が、店にとって悪いだけの一日ではなかったと、
そう思えるようになるのは、もう少し先の話だ。




