不幸体質と完璧奴隷の日常
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
大学に行くため、俺は部屋の前でノアに声をかけようとした。
……その瞬間。
目に飛び込んできた光景に、思考が一瞬で停止した。
布団の中に、ニコとノアが一緒に寝ている。
――いや、待て。どういう状況だ。
しかもニコの足が布団からはみ出していて、そのままテーブルの角に思い切りぶつかる。
「いたっ……!」
ニコは小さく呻き、布団の中で丸くなる。
それを見たノアは、特に気にした様子もなく手を振った。
「いってらっしゃい」
慌てて起き上がるニコ。
服を整えながら、深々と頭を下げる。
「い、いってらっしゃいませ……」
……いやいやいや。
朝から情報量が多すぎる。
その日一日、俺はずっと落ち着かなかった。
家でも、店でも。
ノアは常にニコの一歩後ろにいて、何か起きる前に手を出す。
ニコが物を落としそうになれば支え、
転びかければ腕を掴む。
結果、客からは――
《ノアとニコ、可愛い!》
《セットで推せる!》
などという声が飛び交う始末だ。
……いや、推すな。
俺の胃が削れる。
その夜、閉店後。
いつものように二人が笑いながら片付けをしているのを見て、俺はついに我慢の限界を迎えた。
「……ちょっと待て」
「お前ら、付き合ってるんじゃないだろうな!?」
ノアは肩をすくめるだけだ。
「勘違い」
勘違いなわけあるか。
何より、**一緒に風呂に入っていた件**が俺の中で引っかかりすぎている。
「それも――」
俺が続けようとした瞬間、ノアがにやりと笑った。
「じゃあ、ヒロも一緒に入る?」
「入るかぁぁぁ!!」
「話をそらすな!!」
実際のところ、二人は幼馴染らしい。
ニコはとにかく運が悪い。
棚の扉に指を挟む。
フライパンをひっくり返す。
注文票を落として、そのままつまずく。
……正直、見ていて心配になるレベルだ。
だがノアがそばにいると、不思議と大事にはならない。
「ノア君、私……頑張れるから……」
泣きそうになりながら言うニコ。
それを見て、俺の中で
ツッコミたい気持ちと、笑いたい気持ちと、
何か嫌な予感がごちゃ混ぜになる。
「いや、それは頑張り方間違ってるだろ……」
「俺、てっきりもっと深刻な問題が起きてるのかと思ったぞ」
ノアは涼しい顔で、ニコの袖を軽く引いた。
「大丈夫、ヒロ」
「こっちがカバーすれば問題ない」
……いや、それが一番の問題だ。
俺の役割、完全にツッコミしか残ってないじゃないか。




