面接?知らない。今日から住人です
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
閉店後、店のシャッターを下ろしたところで、ノアが言った。
「話がある」
嫌な予感は、だいたい当たる。
「ニコ」
「うちに住ませたい」
「……は?」
俺がそう言うより早く、ニコが固まった。
「え……?」
「す、住む……?」
ノアは首を傾げる。
「言ってなかった?」
「聞いてません……!」
ニコは慌てて俺の方を向き、深く頭を下げた。
「すみません!
私、何も知らなくて……!」
「いや、謝らなくていい」
「説明してないのは、こいつだ」
ノアは悪びれない。
「効率的だと思った」
「思うな」
ニコはまだ不安そうに俺を見ている。
「……ご迷惑、ですよね」
少し考えてから、俺は肩をすくめた。
「とりあえず」
「家、帰ろう」
「……え?」
「腹減ってるだろ。
話は飯食いながらでいい」
ニコはきょとんとしたまま、ゆっくり頷いた。
アパートに戻ると、サクラはもう食事の準備を終えていた。
「おかえりなさいませ」
テーブルには、湯気の立つ味噌汁と炊きたてのご飯。
派手じゃない。けれど、ちゃんとした食事だった。
「こちら……どうぞ」
ニコは恐る恐る箸を取る。
一口。
次の瞬間、ぽろっと涙が落ちた。
「……え」
ニコは慌てて目を擦る。
「す、すみません……
美味しくて……」
それ以上、言葉が続かなかった。
サクラは一瞬驚いてから、そっと目元を押さえた。
「……よかった」
「お口に合って、よかったです……」
その横で、ノアは非常食のバーを齧っていた。
ニコは涙を拭いながら、小さく笑った。
――その日、家に一人増えた。
面倒で、厄介で、説明不足で。
でも、食卓は少しだけ、賑やかになった。
その夜。
風呂場の方から、がちゃりと音がした。
「じゃあ、先に入るね」
「一緒でいいよ」
「え……?」
「い、いいんですか……ノア君……」
「問題ない」
「タイパ良い」
「――は?」
取り残される、俺とサクラ。
しばらくして、浴室の向こうから聞こえてきたのは、
「熱っ……」
「だから言った」
「でも、あったかい……」
「肩まで浸かって」
妙に生活感のある会話だった。
サクラは一瞬だけ考えてから、俺に湯のみを差し出す。
「……ヒロ様」
「この家、もうそういう家です」
「どういう家だよ……」
湯気と水音と、小さな声。
その日から――
この家の風呂は、「一人用」という概念を失った。




