俺の奴隷がバズって店が特定されたけど、なぜか大繁盛している
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
発覚は、やっぱり佐伯からだった。
《ヒロ、落ち着いて聞け》
《ノア、今とんでもないことになってる》
嫌な予感しかしない。布団の上でスマホを握ったまま、送られてきたURLを開いた。
――インスタの動画。
照明に照らされたノア。衣装。作り笑い。画面の中央にいるのは、どう見てもノアだった。
「……は?」
コメント欄は地獄だった。
《この子かわいすぎ》
《新しい推し》
《○○駅前のコンカフェの子だよね?》
「特定早すぎだろ!」
その夜、帰宅したノアを玄関で捕まえる。
「ノア、これ何だ」
スマホを突き出すと、ノアは一瞬目を見開き、すぐに納得したように頷いた。
「ああ、公開されたんだ」
「オーディション、合格」
「順番は!?」
「想定内」
「想定するな!!」
ノアは淡々と続ける。
「オーディション経由で客が流れてる」
「店、平日でも満席」
「軽く言うな……」
翌日、佐伯から追撃が来た。
《今日も行列》
《オーナー、泣いてた》
「泣くな」
ノアは普段通りだった。バイトをして、配信をして、飯を食う。
「休め」
「理由がない」
「体力的にだよ!!」
数日後、店の前を通った。行列が本当にできていた。
中ではノアが完璧な女装で接客している。
「……俺の生活、別ジャンルに入ってないか?」
その夜、家で俺は訊いた。
「なあノア、二足の草鞋、キツくないのか」
キッチンから声がした。
「お食事、できています」
エプロン姿のサクラが味噌汁をよそっている。最近、店への外出も増えていた。
「サクラ、今日どこ行ってたんだ?」
一瞬、視線が揺れる。代わりにノアが答えた。
「店」
「従業員契約したし」
「接客、優秀」
「評判いい」
サクラが慌てて頭を下げる。
「ご報告が遅れてしまって……!」
俺は頭を抱えた。ノアはアイドル級。サクラは従業員。俺だけ、何も変わっていない。
「ヒロ」
ノアが珍しく真面目な声で言う。
「置いてかれてる顔してる」
「してねえよ」
「してる」
サクラがそっと言った。
「私たちにとって、ヒロ様は帰る場所です」
「重い役職をつけるな……」
ノアは肩をすくめる。
「でも事実」
「いないと事故る」
少しだけ笑った。
金も名声も、今の俺にはほとんどない。
なのに、家に帰れば二人が待っている――安心感と、やるせなさが入り混じった妙な感覚だけが残っていた。




