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効率厨に任せきりだった俺が、初めて口を出した日

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

ユイは無事に帰っていった。

どうやら一刻も早く原稿を描きたいらしい。


駅まで見送ったあと、俺は深く息を吐いた。

嵐は去った……はずだった。


その日の夕方、別の嵐が来た。


――コンカフェの強面オーナーからの呼び出しである。


店の奥、事務所。

相変わらず威圧感のある顔で、オーナーは一枚の紙を差し出した。


「最近の売上だ」


受け取った紙には、売上、キャッシュフロー、原価率など、数字がずらりと並んでいた。


正直に言うと、俺にはほとんど分からない。


ただ、一つだけ目に留まった。


ノアの指名売上は相変わらず高い。異常なくらいに。


だが、店全体で見ると、数ヶ月前よりわずかに下がっていた。


「これを見て、どう思う?」


オーナーが俺を見る。


……どう思うも何も。


「えっと……すみません。正直、よく分かりません」


情けないが本音だった。


隣でノアが口を開こうとした、その瞬間。


「待て」


オーナーがノアを制した。


「全部、ノア任せにしてないか?」


その一言で、空気が少し張り詰めた。


ノアは一瞬だけ目を細め、それから小さくため息をついた。


「……今それを言っても、効率は上がらない」


そう前置きしてから、淡々と説明を始める。


「客単価は安定している」

「回転率も問題ない」

「落ちているのは、コスト管理後の利益だ」


俺は話を聞きながら、紙をもう一度見た。


――そこで気づく。


「……あれ?」


原価率。明らかに、不自然に下がっている。


「飲食の原価、減ってませんか?」


俺が言うと、ノアがあっさり答えた。


「仕入れ先を変えた」

「効率がいい」


嫌な予感がした。


俺はオーナーを見る。


「……もしかして、味が落ちてます?」


オーナーは苦い顔で頷いた。


「正直なところな」

「常連が少し減っている」


なるほど。数字が、ようやく線で繋がった。


俺は息を吸って言った。


「飲食メニュー、リニューアルしませんか」


二人が同時に俺を見る。


「安さ優先じゃなくて」

「“ここで飲む理由”になるメニューを作りましょう」


オーナーはしばらく考え込み、やがて大きく頷いた。


「……いいな」

「やろう」


ノアは少しだけ驚いた顔をしてから、肩をすくめた。


「非効率だが」

「長期的には合理的か」


そう言われて、なぜか胸が少し引き締まった。


やることが山ほどある。

考えることも、決めることも。


でも今は、不思議と怖くなかった。


――俺はもう、ただ流されているだけの共同経営者ではない。


そう思えたからだ。


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