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妹は一口で理解した

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

妹のオープンキャンパス当日。


俺は朝から落ち着かなかった。


「ユイ、一人で行かなくてもいいだろ。俺もついてく」


心配性だという自覚はある。


それでも、妹を一人で放り出す気にはなれなかった。


「え、いいの?」


「もちろん」


するとユイはにやっと笑った。


「じゃあさ、みんなで行こうよ」


「……みんな?」


嫌な予感がした。


「ノアくんも、サクラちゃんも。資料になるし」


「資料にするな」


俺は即座にノアの方を見る。


正直、妹をこいつに近づけたくない。


倫理観が信用できない。人としての安全性が低い。


だがユイは、俺の視線をまったく別の意味で受け取ったらしい。


「なに? お兄ちゃん、嫉妬?」


「違う」


「取らないから大丈夫だよ?」


「違うって言ってるだろ!!」


横でノアが、どうでもよさそうに言った。


「効率悪い会話だな」


「黙れ」


外出準備を終えたノアは、いつもの女装姿だった。


それを見た瞬間、ユイが固まる。


「……え」


「完成度、高くない?」


「見るな。感想を言うな」


ユイは俺とノアを交互に見比べて、スマホを構えた。


「並んで」


「並ばない」


「比較資料!」


「やめろ!!」


ノアは無表情で一歩前に出る。


「問題ない」


「問題しかない!!」


なんとか引き剥がして、俺たちはオープンキャンパスへ向かった。


会場に着くと、ユイは一変した。


展示された作品を、一つ一つ真剣に見つめている。


さっきまでの軽口が嘘みたいだった。


その横顔を見て、俺は思う。


――受かってほしいな。


でも同時に、一緒に暮らしたら確実にトラブルが増えるな、とも思う。


兄としては応援したい。


住人としては全力で拒否したい。


感情が忙しかった。


帰り道、みんなでクレープを買った。


サクラは楽しそうに悩み、ユイは写真を撮っている。


ノアだけが首を振った。


「いらない」


そう言って、ポケットから非常食を取り出した。


「やめろ。外で食うな」


俺とサクラが同時に止める。


だがユイが食いついた。


「なにそれ? 味見したい」


「やめとけ。本気でやめとけ」


忠告も虚しく、ユイは一口かじった。


――次の瞬間。


「…………」


無言。


表情が真顔になる。


数秒後、水を探して辺りを見回した。


そして俺と目が合う。


「……お兄ちゃん」


「なんだ」


「この人」


一拍置いて、ユイははっきり言った。


「ヤバいね」


俺は深く頷いた。


ノアだけが平然としている。


「栄養効率は高い」


「効率の話じゃない」


こうして妹は、この家の一番の問題人物を、たった一口で正確に見抜いたのだった。


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