個室の露天風呂はご主人様には刺激が強すぎる
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
宿に到着した二人。
案内された部屋の扉を開けると、落ち着いた和室が広がっていた。
畳の香り。
柔らかな光。
外とは切り離された静けさ。
「素敵ですね」
サクラが目を輝かせる。
その素直な反応に、ヒロの肩の力が少し抜けた。
「だな。……景色はどうだろうな」
そう言いながら奥へ進み、障子に手をかける。
深く考えず、そのまま開けた。
――止まる。
そこにあったのは景色ではなく、個室の露天風呂だった。
湯気がゆらりと立ち上る。
完全に“そういう部屋”。
「……」
「……」
言葉が出ない。
ヒロは障子に手をかけたまま固まり、閉めるかどうかの判断が遅れる。
サクラも視線の置き場に困っている。
先に口を開いたのはサクラだった。
「と、扉を閉めたら……見えませんし……」
少し上ずった声。
だが正論だった。
「そ、そうだな……」
ヒロもぎこちなく頷き、すぐに障子を閉める。
しゃっ、という音がやけに響いた。
静かになる。
だが――気まずさは消えない。
サクラがぱっと動く。
「お茶、お入れしますね」
逃げ道を作る。
「お、おう」
ヒロも乗る。
サクラは手際よく準備を始める。
その背中を見ながら、ヒロは小さく息を吐いた。
(落ち着け俺……)
――さっきの光景が、頭から離れない。
一方その頃。
車内は静まり返っていた。
理由は単純。
レオン以外、全員爆睡している。
「……もうすぐ着くぞ」
声をかけるが、反応はない。
数秒後、ノアがうっすら目を開ける。
「……まだ眠い」
「飲みすぎだろ」
即ツッコミ。
そのまま車は宿に到着。
止まった瞬間――
「温泉だー!!」
ユイが即復活。
「楽しみです!」
「やっと着いた〜!」
他の二人も一気に元気になる。
そして一人、明らかに様子がおかしい。
ノア。
ふらっと体が揺れる。
「……気持ち悪い」
「自業自得だ」
レオン、即切り捨て。
トランクを開け、荷物を取り出す。
「ニコ、お前ら先に行け」
「お兄ちゃんすごい!力持ち!」
「いいから行け」
三人はそのまま宿へ向かう。
テンション高めのまま。
ノアもついていこうとする。
「じゃあ……」
「お前は手伝うんだよ」
即捕獲。
逃げ場なし。
渋々、荷物を持つノア。
完全に戦力外だった。
――館内。
「浴衣が選べるみたいだよ!」
ユイの目が輝く。
「可愛い……」
ニコも見入る。
色とりどりの浴衣。
種類も豊富。
「ノア達のも選んじゃお!」
イヴの悪ノリが発動する。
止める者はいない。
三人はそのまま浴衣コーナーへ突撃し、笑いながら好き勝手に選び始める。
――この時点で。
この旅行の行く末は、ほぼ決まっていた。




