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この家のルールと、女装配信スタート

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

「……ノア様を観察させていただきます」


サクラがそう言ったのは、朝食のあとだった。


控えめな声だったが、目は逃げていなかった。


「まず、自分で決める練習です」

「いきなり完璧じゃなくていい、とヒロ様はおっしゃいました」


「……自分で、決める」


真剣な顔で頷く。


その横で、ノアは非常食をかじっていた。


「ノア様の生活を参考にしたいです」


サクラが言う。


俺は反射的に止めた。


「やめとけ」


ノアはどうでもよさそうに肩をすくめる。


「観察は自由」


それから、淡々と付け足した。


「でも僕の真似をしても意味ないよ」


「……なぜですか?」


サクラが聞く。


ノアは少しだけ考えてから言った。


「僕は特別だから」


サクラの目が揺れた。


「特別、とは……?」


「ヒロのために、自分で決めてる」

「ヒロが望んでることをする」

「それがこの家のルール」


ヒロは、胸の奥が少しだけ痛んだ。


サクラはしばらく考え込み、小さく頷いた。


「……私は、私で考えます」


それは命令ではなく、サクラ自身が選んだ答えだった。


その夜。


ノアは配信準備を始めていた。


配信を始めたのは、佐伯の勧めもあったからだ。


店の宣伝になるし、数字も分かりやすい。


外でも完全に女として生活しているノアにとって、配信で女の姿を見せることは特別なことではなかった。


店の奥に作った配信スペース。


ライト、マイク、カメラ。


画面の向こうには、数千人の視聴者がいる。


今日の格好も、女性としての装いだった。


ハーフアップの金髪。控えめなメイク。


コメントが流れる。


「かわいい」

「新衣装?」

「初見です」


ノアは画面を一度だけ見て、静かに言った。


「今日は短め」


そう言ったが、配信が短く終わることはほとんどない。


サクラが小声で聞いてきた。


「ヒロ様……ノア様は、なぜ配信を?」


少し考えてから答える。


「店の宣伝もあるけど、多分」


「数字が分かりやすいんだと思う」


努力と結果が線で繋がる世界。


ノアにとって、それは単純で、居心地がいいのだろう。


画面の向こうでスパチャの音が鳴る。


ノアはそれを一瞥して、静かに言った。


「ありがとう」


それだけだった。


派手なリアクションはしない。


それでも数字は伸びていく。


効率的な世界だった。


サクラは、少しだけ羨ましそうに配信画面を見ていた。


俺はその横顔を見ながら思う。


この家の倫理は、まだどこか歪んでいる。


だが、それを否定するつもりはなかった。


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