効率厨な奴隷が有能すぎて、コンカフェの共同経営者になっていました
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
正統派な奴隷、サクラのおかげで、家は常に完璧だった。
掃除、洗濯、炊事。すべてが滞りなく回っている。
結果どうなったかというと――
「……大学行くだけって、こんなに楽だったのか」
俺の生活から「家事」という概念がほぼ消えた。
空いた時間で課題も終わるし、睡眠も取れる。
人間、余裕があると心まで穏やかになるらしい。
そんなある日。
「ヒロ、今夜コンカフェ来て」
ノアが、いつも通り軽い調子で言ってきた。
「佐伯も、サクラも連れて」
「……カモにする気か?」
「違う違う。今日は飲ませる側」
嫌な予感しかしない。
半信半疑のまま向かったコンカフェは、見違えるほど綺麗になっていた。
どうやらリニューアルのデモオープンらしい。
「本日、飲み放題でーす!」
店内はお祭り状態だった。
「サクラの歓迎会も兼ねてさ。みんなで飲もう」
ノアのその一言で、全てが決まった。
ノアはカウンターに立ち、慣れた手つきでシェイカーを振る。
色とりどりのカクテルが次々と並び、グラスが空く速度も異常だった。
「……うま」
「これ危険だろ……」
佐伯はすでに出来上がっている。
サクラも最初は遠慮していたが、ノアに勧められ、少しずつ口をつけていた。
――そこから先の記憶は曖昧だ。
視界がぐにゃりと歪む中で、ノアとコンカフェの強面オーナー、それからスーツ姿の男が俺を囲んでいた気がする。
そこで、意識が落ちた。
「……頭、割れる……」
目を覚ますと、自分の部屋だった。
喉はカラカラ、胃が重い。
テーブルの上に、紙が一枚置いてある。
「……この流れ、知ってるぞ」
嫌な予感しかしないまま、紙を手に取る。
――契約書。
「……は?」
そこには、はっきりと俺の名前が書かれていた。
「コンカフェ共同経営契約書……?」
胃が、きゅっと縮む。
「ちょっと待て……共同……経営……?」
頭が追いつかない。
そのタイミングで、ノアが現れた。
「おはよう、ヒロ。二日酔い?」
「それどころじゃない! これ! 何を勝手に!!」
契約書を突きつけると、ノアは平然と答えた。
「オーナーと話、ついたから」
「ついたから、じゃない!」
「数ヶ月あれば十分だろ。店の数字と将来性、全部見せたし」
あまりにも軽い。
「……まさか、あの日の百万円は?」
「店のリニューアル費用の前払い。あの時は、サクラを引き取るついでに回しただけ」
「……ついで?」
「契約上は、修繕費の一部の立て替え。サクラを助けたのは、結果論だよ」
理由が分かって少し安心したが、すぐに別の違和感が湧いた。
「……ん?」
契約書をめくる。
もう一枚、紙がある。
「従業員雇用契約……?」
嫌な汗が出る。
「……サクラ?」
背後で、サクラがぴしっと姿勢を正した。
「はい。本日付で、正式に従業員として契約させていただきました」
「……は?」
ノアが、にこやかに補足する。
「ちゃっかりね。奴隷のままは効率悪いだろ?」
「お前は効率で何でも決めるな!!」
サクラは少し不安そうに、でも真剣に頭を下げた。
「ヒロ様のお役に立てるなら、私は、どんな形でも頑張ります」
それを聞いて、俺は頭を抱えた。
――こうして俺は、奴隷二人と、なぜかコンカフェの共同経営権、そして真面目すぎる新人従業員を抱えることになった。
大学生のはずなんだが。
人生、完全に道を踏み外している気がする。




