美少女奴隷(本物)の破滅フラグ立ちました!?
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
朝、妙にいい匂いで目が覚めた。
台所に行くと、信じられない光景が広がっていた。
煮物、焼き魚、だし巻き卵、漬け物。どれも丁寧に盛り付けられ、湯気が静かに立っている。
「……料亭かよ」
思わず声が漏れた。
「おはようございます、ヒロ様!」
サクラは満面の笑みで頭を下げた。早起きしたのか、目の下にうっすら隈がある。
箸をつけて、すぐに分かった。
――うまい。
いや、うますぎる。
「……これ、本当にサクラが作ったのか?」
「はい! 和食は得意です!」
胸を張る姿を見て、俺は思わず聞いてしまった。
「……なんで、こんなに良い子が……」
言いかけた瞬間、サクラの表情が少し曇った。
「……前の場所では、和食はあまり喜ばれなくて……」
声が小さくなる。
「『地味』『味が薄い』『お金を出す価値がない』って……」
ぽたり、と涙が落ちた。
俺は言葉を失った。
こんな料理を、そんな理由で否定する奴がいるのか。
その横で、ノアは非常食のバーをかじっていた。
「……和食は手間が多い。効率は悪い」
「お前は黙って食え」
ノアのバイトは今日も休みだった。
だが、家に一人で置いておく気にはなれなかった。
「ノア、今日も一緒に大学来い」
「……信用してないな?」
「自覚あるなら直せ」
ノアは肩をすくめたが、拒否はしなかった。
サクラには家の掃除を任せることにした。
「無理しなくていいからな。普通でいい」
「はい! 全力で普通を頑張ります!」
……不安しかない。
家を出る直前、ノアが何か言いかけて口を閉じた。
「? どうした?」
「いや。やっぱりいい」
珍しいな、と思ったが深くは聞かなかった。
――俺は、サクラに自信を取り戻してほしかった。
ここでは、役に立たなくても否定されないと伝えたかった。
だが、その考えは少しだけズレていたらしい。
大学へ向かう道すがら、ノアがぽつりと言った。
「ヒロ。優しくするのはいいけど」
「なんだよ」
「『頑張らなくていい』って言葉は、頑張ることで生きてきた人には、逆に苦しくなることもある」
俺は足を止めた。
「……どういう意味だよ」
ノアは答えず、前を向いたまま歩き出した。
「まあ、そのうち分かる」
その時の俺は、まだ知らなかった。
自分の優しさが、サクラを少しずつ追い詰めていくことになるなんて。




