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奴隷のジャージは真実を語る

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

それから、日常が戻ってきた。


俺は大学。ノアはバイト。


朝はすれ違い、夜も時間が合わない日が続く。部屋にノアはいるのに、妙に距離がある。


――なのに。


(……したのか? 俺)


講義中、ノートを取りながら、どうでもいい式を書き殴る。


いや、記憶はない。


でも、あの朝の距離感。呼び捨て。やけに落ち着いたノアの態度。


(……いや、してないよな)

(してたら、もっと色々変だろ)


自分に言い聞かせるほど、気になってくる。


数日後。大学の食堂で佐伯に呼び止められた。


「なあヒロ、これ」


紙袋を差し出される。


「ノアに渡しといて」

「この前のやつ」


「……この前?」


佐伯は一瞬、気まずそうに視線を逸らした。


「飲みすぎた日」

「あいつの服、汚しちゃってさ」


そこで嫌な予感がした。


帰宅して、ノアに紙袋を渡す。


ノアは一目見て、ああ、と頷いた。


「あれね」


ためらいもなく中を開ける。


出てきたのは、見慣れたジャージ上下だった。ノアが普段着ているものだ。


「……これ?」


「うん」


「佐伯がリバースして」

「クリーニング出してくれたんだって」


あっさりと言われて、頭が真っ白になる。


「じゃあ……」

「その日、服着てなかったのは……」


ノアは首を傾げ、さらっと答えた。


「めんどくさかったから」

「ヒロの布団、空いてたし」


……それだけ?


胸の奥に、すとんと何かが落ちた。


同時に、少しだけがっかりした気がして、すぐに否定する。


(……違う)

(がっかりじゃない)

(安心だ)


そう、安心したんだ。そういうことにしておく。


ノアは、そんな俺をじっと見ていた。数秒、いやに長い時間。


「ヒロ」


「……な、なんだよ」


ノアは口元だけで笑った。


「もしかして」

「期待してた?」


「してねえよ!」


即答すると、ノアは満足そうに息を吐いた。


「ふーん」

「じゃあ、いいや」


踵を返しかけて、立ち止まる。


「……でもさ」


振り返って、わざとらしく首を傾げた。


「肉体的奉仕なら」

「いつでも対応できるけど?」


「は!?」


「命令じゃなくても」

「相談って形でもいいよ?」


完全に遊ばれている。


「いらねえ!」


ノアはくすくす笑いながら、ジャージを畳んだ。


「安心した顔してるのに?」

「ヒロ、分かりやすいね」


俺は顔を覆った。


完全敗北だ。


奴隷契約は変わらない。

関係も、きっと変わっていない。


でも、俺の心だけが、勝手に振り回されている。


それを、ノアは全部分かった上で、今日も楽しそうに俺をからかうのだった。


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