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EP9 昨日は楽しかったね、と裸の奴隷に言われました

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

 

 頭が割れるように痛かった。


 朝だ、ということだけは分かる。

 チャイムも目覚ましも鳴っていないのに、自然と目が覚めた。


 ゆっくり体を起こそうとして――固まる。


 隣に、ノアがいた。


 金髪が枕に広がっていて、寝息がやけに近い。

 目を瞬かせると、ノアも同時に目を開けた。


 目が合う。


 「……ヒロ、おはよ」


 その一言で、血の気が引いた。


 ――ヒロ?

 しかも、距離が近すぎる。

 布団は一枚。ノアは、服を着ていない。


 まさか。

 いや、待て、そんな記憶は――


 頭の中で、昨夜の映像を必死に巻き戻す。

 酒、ゲーム、煽り、笑い声。

 そこから先が、綺麗に抜け落ちている。


 「……っ」


 声にならない声が漏れた。


 ノアは俺の様子を一瞬だけ観察してから、意味ありげに口角を上げる。

 「昨日、楽しかったね」


 それだけ言って、布団から抜け出した。

 何事もなかったかのように、シャワーへ向かっていく。


 ……楽しかった?

 それだけ?


 呆然としたまま、俺はしばらく動けなかった。


 落ち着け。

 とにかく、落ち着け。


 取り敢えず現実逃避するように、部屋の空き缶を片付け始める。

 机一面に転がる缶を集めていると、昨夜がどれだけ無茶だったかを思い知らされた。


 布団を畳もうとして――違和感。


 新しく買ったはずの、ふかふかの布団が、もぞっと動いた。


 「……え?」


 次の瞬間、布団がめくれ、中から佐伯の顔が現れた。


 「……おはよ……死ぬ……」


 ひどい顔色だった。

 完全な二日酔いだ。


 「お前、いたのかよ……」


 「き、気持ち悪い……水……」


 昨夜のことを聞こうとしたが、佐伯はそれどころじゃなさそうだった。

 仕方なく、遅めの朝食を用意することにする。


 味噌汁と、おにぎり。

 米を炊いて、塩を振って、素手で握る。

 こういう時、無性に普通の飯が食いたくなる。


 準備をしていると、浴室の扉が開いた。


 ノアが、髪を濡らしたまま出てくる。

 服はちゃんと着ている。


 なぜか、それだけで少し安心した。


 「……ノアも、食べるか?」


 口に出してから、慌てて言い訳を考える。

 一応、バイトもしてもらってるし。

 金も入れてもらってるし。

 その、雇い主としての配慮というか――


 ノアは首を傾げた。

 「いいの?」


 「……たまには普通の飯でいいだろ」


 少し考えてから、ノアは肩をすくめた。

 「じゃ、少しだけ」


 三人でちゃぶ台を囲む。

 妙に静かな朝だった。


 おにぎりを一口かじったノアが、もぐもぐと咀嚼する。

 俺は落ち着かずに聞いた。


 「……どうだ?」


 ノアはしばらく考えてから、真顔で言った。


 「味は、あるね」


 それだけで、なぜか佐伯が吹き出した。

 俺も、つられて笑ってしまった。


 奴隷契約は、まだ続いている。

 でも、何かが少しだけ、確実にズレ始めている気がした。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

気に入っていただけましたら、評価やブックマークなどしていただけると励みになります。


作者:しけもく

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