今回は、すべて許されました。
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
昼の撮影を終えたノアは、そのままヒロの店――コンカフェに出勤した。
ドアを開けるなり、カウンターの中にいるヒロの肩を、ぽん、と叩く。
「ヒロ」
「ん?」
振り向いた瞬間、ノアの顔が無表情なのに目だけが怒っていることに気づく。
「仕事終わったら話ある」
「……はい?」
低い声。
ヒロは嫌な予感しかしない。
「イヴもだぞ」
ノアが視線を向けると、
「ひっ」
イヴがビクゥッ!!と大きく肩を震わせた。
分かりやすすぎる。
閉店後。
ヒロの家。
リビング。
「なんか起きる!? 起きるよね!?」
ヒロの妹・ユイが布団を抱えて座り込んでいる。
「お前は寝ろ」
「見守るよ!」
「見守らなくていい」
ノアは腕を組んで立っている。
「ヒロ。知ってること全部話せ」
「尋問か?」
「全部」
ヒロは観念したように手を挙げる。
「俺は大学のレポートしてた。マジで。で、ちょっと目を離した隙にイヴが消えた」
一同の視線がイヴに集中。
「で、でも短時間だよ!? 本当にちょっとだけ!」
ヒロは必死に付け加える。
イヴ、冷や汗。
「ア、アタシは写真撮っただけだし!」
「出せ」
即答。
「データ確認する」
「や、やだ! 無理! プライバシー!」
「僕のだろ」
正論。
「イヴちゃん……」
ニコが困った顔で見つめる。
プレッシャー倍増。
ノアは無言でスマホを奪い取る。
「あ、ちょ、待って!!」
データを開く。
一枚目。
ノアの寝顔。
二枚目。
ノアの寝顔(角度違い)。
三枚目。
ノアの寝顔(超接写)。
「……百枚ある」
「愛だよ!!」
「ホラーだ」
さらにスクロール。
そこには――
眠るノアの頬にキスするイヴの自撮り。
「……」
部屋が静まり返る。
まだある。
服を少しはだけさせた写真。
首元に顔を寄せている写真。
キスマークをつけている瞬間の証拠写真。
「こいつ……」
ノアの声が低い。
「ヒロ」
「はい」
「殴っていい?」
「ダメだ!!!!」
ヒロが全力でノアを羽交い締めにする。
「記憶ないのいいことに!!」
「不可抗力!! 不可抗力だから!!」
「歯型までついてる」
「サービス精神!!」
「いらない」
ユイ、目を輝かせる。
「修羅場だ……!」
「寝ろ!!」
ニコはおろおろ。
「イヴちゃん、それはちょっと……」
「ちょっとじゃない!!」
ヒロが叫ぶ。
ノアはじっとイヴを見る。
「なんで」
イヴは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「だって! 失恋して弱ってる金髪なんてレアじゃん!!」
「理由が最低だな」
「しかも寝顔かわいかったし!!」
「フォローになってない」
ヒロは必死に止めながら言う。
「殴ったら余計面倒になる! ミツキちゃんにバレたら終わるぞ!」
ノア、ぴたりと止まる。
「……ミツキちゃんに?」
「確実に怒られる」
数秒の沈黙。
ノアは深く息を吐いた。
「……今回は許す」
「助かったぁ……」
「でも」
ゆっくりイヴを指差す。
「次やったら事務所通す」
「重い!!」
ヒロはどっと疲れた顔をする。
その夜。
ノアの無自覚キスマーク事件の真相は、
こうして無事(?)解決した。
なおイヴのスマホには、
バックアップが存在するかどうかは
誰も確認していない。




