新しいメイドは、赤髪ツインテール
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
翌日。
ヒロが事務所に入った瞬間。
嫌な予感が現実になった。
強面オーナーが腕を組んで立っている。
その反対側。
なぜか背筋を伸ばして立つイヴ。
「……おはようございます」
「おうヒロ。求人の件だが決まりそうだぞ」
「……は?」
ヒロの視線がゆっくりイヴへ向く。
イヴは満面の笑みでダブルピース。
「いえーい」
「いえーいじゃない」
オーナーが履歴書を差し出す。
「ほれ」
受け取る。
開く。
──びっしり。
小さい文字で、隅から隅まで埋まっている。
前日のほぼ空欄はなんだったのか。
職歴、資格、特技、自己PR。
しかも無駄に熱量が高い。
「……努力はしたんだな」
「徹夜した」
ドヤ顔。
オーナーが低い声で言う。
「改善と努力は認めないとな」
ヒロ、観念。
「……採用で」
「よっしゃ!」
イヴ、ガッツポーズ。
その瞬間。
「制服は金髪と一緒がいい!」
「は?」
「あれはノアのサイズしかないんだよ」
「一緒がいい!」
「だからサイズが──」
「イヴちゃん?どうしたの?」
ニコが顔を出す。
ヒロはため息をつきながら説明する。
「採用した」
「えー本当? 嬉しいな。同じ制服で働けるね。お揃いだあ」
にこにこ。
イヴは一瞬固まる。
「え? あ、うん。嫌だけどしょうがないから着てあげる」
「素直になれ」
ヒロは更衣室を指差す。
「着替えてこい」
更衣室。
ニコが優しく言う。
「イヴちゃん、髪結んであげる」
「は? 可愛くなかったらすぐほどくから!」
「任せて」
数分後。
赤いインナーカラーが映えるツインテール。
スレンダーな体型が制服に綺麗に収まっている。
パンク要素は残しつつ、店の雰囲気にも合っている。
ヒロは思わず言った。
「……似合ってるよ」
「はあ? 別に褒められたって嬉しくないし」
「顔が嬉しいって言ってる」
「言ってない!」
営業が終わりかけた頃。
収録帰りのノアが店に入ってくる。
「お疲れー」
伸びをしながらカウンターを見る。
「あれ? 新しい人?」
イヴが勢いよく前に出る。
「ジャーン! 金髪見てみて!」
くるっと回る。
ノアは無言でヒロを見る。
「……」
「採用した」
「……そう」
一拍。
ノアはイヴを見る。
「似合ってる……」
やや棒読み。
イヴ、理解するまで一秒。
「きゃーーー!!」
店内に響く絶叫。
「うるさ」
ノアは耳を押さえる。
ニコが微笑む。
「イヴちゃんよかったね」
「うるさい!」
顔を真っ赤にしてカウンターに突っ伏すイヴ。
ノアはそれ以上何も言わず、
「ヒロ、事務所借りる」
静かに奥へ向かった。
その背中を。
制服姿のイヴが、ずっと目で追っていた。
ヒロは思う。
(店、静かになる日あるのか?)
答えは、たぶんない。




