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【連載版】極東異界ハイテク見聞録  作者: 紫 和春


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第31話 解析

 泙成31年4月24日。この日の見回りはワタシブネの助言により取りやめとなった。デイダラのような巨大な霊魂が出現してしまった以上、陰の世界の脅威度は増していると言える。そのため事務室の三人は、対神無月機関の戦力として温存されることになったのだ。現在はワタシブネの千里眼が陰の世界を監視し、脅威となりえる霊魂を適宜排除している。

 そんな中、富士見はスマホをパソコンに接続して、何か調べているようだった。


「うーん……。神藤君、ちょっといい?」

「はい」


 そんな事務室で過ごす神藤は、ここの悪い空気に当てられたようで、富士見に呼ばれるまで私用のスマホでネットサーフィンをしていた。

 当然ながら、公務員のみならず社会人がこのような行為をしているのは、職務専念義務違反であり懲戒処分に該当する。幸いなのは、事務室以外の人間が一切接触してこない環境であるということだろう。

 そんなことは一切気にしていない神藤は、富士見の隣に移動する。


「なんでしょう?」

「ちょっとこのデータを見てほしいんだけど」

「はい。……これは、昨日のデイダラのデータですか?」

「そう。昨日僕が封印させた霊魂の一部をスマホから転送させたヤツだよ。それで少し引っかかっているというか、不明な場所があってね」


 そういって富士見は、データを色々と整理する。

 すると、データの一部が欠落しているような場所が見受けられる。


「封印した箇所のデータを復元しようとしても、うまくいかないことが分かったんだ。僕の整理の仕方が悪かったのかなと思って、別の二つの方法でそれぞれ試したんだけど、それでも上手くいかなかった。これはもしかすると霊魂によってデータが封印されているのかもしれないと思ってね」

「それなら富士見さんのほうが封印に関しては詳しいじゃないですか」

「封印をすることと、封印を解除するのではちょっと分野が違うんだよね。封印なら自分の勝手が分かる方法で封印出来るけど、解除するには特定の手順を踏まないといけない。簡単に言えば、圧縮されたデータの拡張子が違う状態かな。ZIPファイルならいろんなパソコンでも使えるけど、RARファイルだと専用のソフトウェアが必要な感じだよ」


 そう言われて神藤は微妙に納得する。


「そこで神藤君の霊視で、封印された霊魂のデータを見てもらいたいんだ」

「まぁ、いいですけど」


 そういって神藤は祝詞を上げる。


「常世に住み着く流浪の御霊よ、今この声に応えたもうぞ」


 そして親指と人差し指で輪を作り、パソコンの画面を覗く。

 するとそこには、呪符のような物がパソコンの文章上に張りつけられていた。


「なんか、お札みたいなのがテキストに張られてますね……」

「お札かぁ。どんなお札か分かる?」

「ちょっと紙に書いてみますね」


 そういって、その辺に散らばっていた裏紙にボールペンでサラサラと写していく。


「こんな感じですね」


 それを見た富士見は、少し眉間にシワが寄る。


「これ、そのまま写した?」

「はい、そうですけど……。何かありました?」

「いや……。遠い昔に、この書き方をしたお札を見かけたことあったなと思って」

「はぁ……」

「というのも、陰陽師が使うお札には個性が出るとも言われているんだ。だけどこれには個性が存在しないように見える。まるで人ではない存在が書いたような、そんな雰囲気が見えるんだ」


 富士見は少し不機嫌な感情を出す。しかしそれをすぐに引っ込め、いつもの調子に戻る。


「お札の状態が分かれば、封印の解除方法も分かるね。これは『久慈加羅坂冤磧(くじからさかえんせき)』と呼ばれるタイプで、結構珍しい物だね。でも使っているお札の種類が分かれば、解除の仕方も簡単に分かる。この場合なら……」


 そういって富士見は左手で剣印を作り、画面上に文字のようなものをなぞるように動かす。

 すると画面がちょっとだけ明るくなり、テキストが追加でどんどん表示されていく。


「よーし、これで解析が進む。助かったよ、神藤君」

「いえ、大丈夫です。それで、これを調べて何か分かることってあるんですか?」

「色々あるんだけど、今回は複合性異能体霊魂であることは昨日調べた通りだ。ただ、これが自然発生なのか、人為的に合成されて発生したものなのかは分からない。それを調べるために解析しているよ」

「となると、お札みたいなもので封印されていたから、人為的ってことじゃないんですか?」

「さっきも言ったけど、お札には人間の感情のようなものはなかった。つまり、少なくとも人間ではない存在が関わっている可能性があるんだ。まぁ、そこまで調べるなら専門の、特に熟練の筆跡鑑定士の力を持った異能の持ち主を探さないといけないね」


 そういって富士見は、パソコンの作業に戻っていった。


(そんなものなのかぁ)


 神藤は何かしらの痕跡から人物を特定するようなことはしない。そのため、富士見の言っていたことは大雑把にしか把握出来ない。

 神藤は自分の席に戻り、再びスマホの使用という危ない橋を渡るのだった。

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