傾斜角1度
透明な朝
庭の草花が冷気に震えている
小さな赤い実が忘れ露を光らせる
変わりのない景色の中
一人佇む
いや
いつからだろう
鳥の姿を見なくなったのは
傾斜角度1度の坂道のように
緩やかな変化はおきている
分らないのは
私の心がそうしているのか
いつの間にか
スクリーントーンの視界を
身につけていた
透き通る朝
線路の音が等間隔に聞こえる
風に流される幾枚かの落ち葉の音
いつも通りの世界の中
ここにいる
いや
いつからだろう
鳥のさえずりが聞こえなくなったのは
傾斜角度1度の坂道の中に
いくつもの変化が埋もれている
見えないのは
私の心が微調整をしてしまっているのか
気が付けば
五感を包み込むような
着ぐるみの中にいる
見えないからといって
聞こえないからといって
忘れていいのか
無いものとしていいのか
あの鳥たちは
何かを伝えようとしていたのかもしれない
あの鳥たちは
何かを求めていたのかもしれない
いや
今も
平凡な世界になじんだ体を
この守られた体を
突き破り
心が叫びをあげる
忘れない と
忘れてなるものか と
思いを言葉に変えて
その言葉が
私を覚醒させる
かじかむこの身体に
力を籠めて
節々の痛みを快感に変えろ
動き出せ
違う世界に住んでいても
私の世界にいる
あの鳥たちを追いかけろ
あの鳥たちを
忘れるな