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買い物と吸血鬼 〜買い物〜

僕の彼女に勉強を教えた翌日の日曜日。

季節はこの日から7月に入っていた。

僕こと十字架十太じゅうじかじゅうたは、眠い目をこすりながら起きた。

時計を見ると針が9時ちょうどを指していて

昨日より2時間早く起きてしまったらしい。

今日は、部活仲間でもある斎藤由梨さいとうゆり夏樹なつきそして、僕の彼女でもあり部員でもある立花春子たちばなはるこの3人と一緒に買い物に行く予定である。

テスト前にそんな事をしても大丈夫なのかと思ったが、息抜きにちょうどいいと考えその誘いを受ける事にして、そして昨日春子も誘った。

そんな事を考えていると、携帯が光り

見ると由梨のメッセージが1年生グループ来ていた。

※春子は、先週に入部したその日にグループ入っている。


『今日は、11時に待ち合わせでお願いね。』と書いてあり、僕は確認してその返信にOKスタンプで返した。

すると、春子から個別にメッセージがきたので開くと

「由梨ちゃんのメッセージ見た?一緒に行かない?」と書いてあった。

僕は「いいよ。じゃあ、春子の家に10時30分に着くように行くね。」と返して

「分かった。じゃあ待ってるね」と春子から返ってきたのを確認して携帯を閉じた。

すると、「お兄ちゃん、なににやけてるの。気持ち悪いんだけど」と声がしたので

見ると部屋の扉が開いて我が家自慢の妹である十字架梅じゅうじかうめが顔を引きつらせて

見ていた。

「なんだよ。朝からそんな事言わなくてもいいじゃないか。お兄ちゃんだってにやけたくなるんだよ」

と言った。

「だって、昨日春子ちゃんとのデートから帰ってきてずっとにやけてたからそろそろ言わないといけないなと思って」と妹は言った。

「そんな事ないけどな。それに昨日は、勉強を教えてただけでデートじゃないからね。」

「でも二人で一緒にカフェに行ったんでしょ?」と妹が矢継ぎ早に聞いてきた。

「まあ、そうだけど・・・」

「じゃあ、それは何をしてようが正真正銘のデートじゃん」ときっぱり言った。

その言葉に反応したのか、「ほら、やっぱりデートだっただろ」と声がしたので見ると吸血鬼のキングがいた。

「キングかよ。脅かすなよ。びっくりしただろ」と驚いて声を出した。

「そんなに驚かなくてもいいだろ。それに俺とお前の妹とはやっぱり相性がいいみたいだしな」と

キングは言ったが、妹は「全然、相性良くないし。」とすぐに否定していた。

「そういう、梅こそ昨日はデートだったんだろ?」と僕は反論した。

だが、「そうだよ。昨日はデートだったから早く家を出たんだよ」と力強く肯定して言った。

すぐに認めるとは思わなかったため「そうか」としか僕は言うしかなかった。

「今日も春子ちゃんとデートですか?」と意地悪な顔をして聞いてきた。

「今日は、部活の1年生メンバーと買い物に行くんだよ。決してデートじゃないから。」

と僕は先ほどの妹と同様に力強く言った。

「そうですか、そうですか。じゃあ、楽しんでください」と意地悪な顔で言って、僕の部屋から

出た。


「まあ、楽しんで来いよ」とキングが僕の右肩に手を言った。

「キングまで馬鹿にしないでよ」と僕は半分声を震わせて言った。

「ごめんよ。今日は、どこで買い物をするつもりなのだ。前回のショッピングモールってところか?」とキングが聞いてきた。

「違うよ。今日はそこじゃなくて、そのショッピングモールができる前からあった所に行く予定だよ。」と僕は言った。

「そうなのか。そのショッピングモールはここから近いのか。」

「まあ、それなりに近いかな。家から大体20分ぐらいで行けるからね。」

「それは中々いいじゃないか。」

「まあね。僕が生まれる前からある所で、新しいお店とか入ってるから結構居心地がいいんだよね。

 でもね」

「でも?」とキングが聞いてきた。

「でも、中学からと高校の人と出くわすことが多いんだよね。よく春子と一緒に行ってたんだけど、中学時代に付き合い始めてから二人で行った時に同じ学校の人に会って、次の日に学校で結構な話題になって、それで春子も嫌な思いをしてたからそれ以来あまり春子と二人では行けてないんだよね。」


「そうなのか。でも、それはそれを話題にしたやつが悪くてお前たちは全く悪くないぞ。そいつのせいでお前らがどこにも行けなくなるんだったら俺が許さない。」と語気を少し強めながら言って、続けて

「まあ要するにだな、あまり周りの目を気にする必要はないと思うって事は伝えよう。だから、これからも二人で堂々としていればいいさ」とキングが真面目な顔をして言っていた。

「なんか。キングらしくないな。そう言ってくれると相談してよかったと思うよ。ありがとうな。」

と僕は心の底からお礼を伝えた。

「お、おう」とキングは照れ臭そうにしていた。

「そういえば、海さんがまたお前に会いたいらしいぞ」

「海さん?」とキングは首を傾げた。

「忘れたのかよ。昨日、会った荒木先輩のお姉さんだぞ」

「ああ、あの人か。二人で話してた時もかなり質問してきたからな。」

「そんなに質問されたのかよ。」とぼくは聞いた。

「好きな食べ物とか休みの日は何をしているの?とか聞かれたかな。」とキングは言った。

「そうか。まあお前も大変だな。」と僕は言った。

「全然、大変じゃないぞ。かなりあの人と話すと楽しいからな」と笑顔でキングは言った。

「それならよかったよ。じゃあ、今度は一緒にお店に行こうな。」

「いいのか?次も彼女と行かなくて。」

「大丈夫だよ。毎回、春子と行く必要はないから。」と僕は言った。

「それでこそ、俺の友人でもあり家族でもあるやつだ」と嬉しそうに言って手を差し出してきたので

僕はその手を握った。


すると、「うわ、何朝から二人で手なんか握ってるの。気持ち悪いんだけど」とさっき僕の部屋から出たはずの妹が部屋に入らず廊下から眉間にしわを寄せて見ていた。

※その眉間にしわを寄せるのはやめてほしいと思っているが中々やめてくれない。

「これは友情の証さ。それに勝手にお兄ちゃんの部屋の中を見るのは良くないぞ。」と僕は注意したが、「何が、友情の証よ。ただ手を握ってるだけじゃない。」とすぐに反論されてしまった。

「それに、お兄ちゃんの部屋には何もないから勝手に見ても平気でしょ。」と当たり前のように言ってきた。

「なんで、何もないってわかるんだよ。まさか、僕がいない時に勝手に入ったりしてないよな。」と聞いてみた。

「なんで勝手に入っちゃいけないの。鉛筆削りを借りたいから、普通に入ってるよ。」と何の悪びれもなく言った。

「一応、お兄ちゃんの部屋だから勝手に入っちゃだめだよ。それに、鉛筆削りを借りたいなら帰ってくるまで我慢してればいいじゃん」と僕は言ったが

「だって、その時に使いたいんだもん。でも大丈夫だよ。一応、部屋に入るときにノックはしっかりしてるから」とノックをするポーズを妹はした。

「そういう事じゃないんだよな」と僕は半ばあきらめの感じで言った。

「もしかして、見られちゃいけないものでも隠してるの?そしたら、春子ちゃんに報告しないと・・・」と言ってポケットから急いで携帯をだして、操作をし始めた。

僕は嫌な予感がしたので、取り上げて画面を見ると春子に電話をかけようとしていた。

「何やってるんだよ。春子に電話して迷惑かけちゃダメだろ」と僕は注意をした。

すると、妹は素早い動きで自分の携帯を取り返して「分かったよ。連絡しないよ」と言って何とかやめさせる事が出来た。

ていうか、何も隠してないのにどうして僕はこんなに焦っていたのだろうと自分に対して不思議に思った。

「お兄ちゃんはこれから出かける準備をしないといけないから扉を閉めてもいいかな」と僕は言って

妹は何か言おうとしていたが無理やり扉を閉めた。


すると、僕たちの様子を見ていたキングが

「相変わらず、お前たちは仲がいいんだな。」と羨ましそうにして言ってきた。

「そうなのかな。あまり、仲がいいとは思った事ないけど。」

「またまた、朝からあんな言い合いができるのは仲がいい証拠だよ」

「そうなんだね。あんまり、他の家族の事はよく知らないから分からないけど、唯一知ってる春子の家の方が僕たちよりも仲がいいよ。」と僕は言った。

「どうして、そこで彼女の名前が出てくるのだ」と首をかしげて聞いてきた。

「そうか。キングは知らないもんな。春子には中学2年生と小学6年生の妹たちがいるんだよ。」と僕は言ってそれを聞いたキングが「まじか。てっきり一人っ子だと思ったら、あいつにも下の子がいるのかしかも二人。」と目を見開いて驚いていた。

「そうだよ。一番下の子の方が、春子に似てるけどね。まあ、髪形をいつも三つ編みにして春子の真似をしているだけだと思うんだけどね」

「まあ、妹ならお姉ちゃんの真似をしたくなるって事だな。」

「そういえば、キングには兄弟はいないのか」と僕は気になって聞いてみた。

「一応、兄と弟がいるけどな」とキングはなぜか少し寂しそうに言った。

「へえ。じゃあキングは真ん中なんだね。それじゃ何かと大変だね」

「まあね。いつも中立の立場でいないといけなかったから大変だったよ。」

「真ん中も割と大変なんだね。まあ、僕は一番上だから真ん中になることはないんだけど」と自虐気味に言った。

「お前と家族の話をしてたら久しぶりに会いたくなってきたじゃないか」とキングは言った。

「全然、会えてないの?」と僕は聞き

「ああ。全然会えてないな」

「じゃあ、帰った時にたくさん話ができるようにいろんな事をこの世界でやっていこうよ」と僕はキングを励ますように言った。

「そうだな。いつ帰れるか分からないけど、その時までにたくさん思い出を作ろうじゃないか」といつもの調子でキングが言った。

「キングから、家族の話が聞けるなんて思わなかったから新鮮だったよ。」

「そうか、ならよかった。こちらこそありがとうな。」

とキングは目を細めて言った。


それから時間が経ち、僕は朝食を食べて玄関で靴を履いて行く準備をしていると、

「春子ちゃんとのデート楽しんでくださーーーい」と気だるそうな声がしたので振り返ると

妹が僕を見下す姿勢で立っていた。

「さっきも言っただろ。今日はデートじゃなくて1年生の部員たちで買い物に行くだけだよ。」

とすかさず訂正した。

「本当にそうかな?」と聞いてきた。

「本当にそうだよ。嘘だったら、僕の部屋に自由に入っていい券を渡すから。」

「何それ。小学生じゃないんだからやめてよね。」

「あれ?小学生じゃないの?」と先ほどの分も込めて反論してみた。

「ち・が・い・ま・す。私は来年に高校受験を控えてる立派な中学3年生です。」と頬を膨らませて言ってきた。

「そうかそうか。それは悪かったね。じゃあ、受験勉強を頑張ってくださいね」と僕は言った。

「今日は、休日だから私の勉強も休みだもん」と意味の分からない事を言い始め、これ以上話に付き合うと遅れそうな気がしたため途中で話をさえぎって家を出た。


僕は春子の家の前に着き左手首に着けてきた腕時計で時間を確認すると、10時25分を針が差していた。

それを確認してインターホンを押そうとした時、扉が玄関の扉が開き中から一人の女の子が出てきた。

その女の子は僕の姿を見ると、扉を閉めて「春子姉ちゃーん。十太君もう来てるよ。」と外まで聞こえる大きな声で言っていた。

それに答えるように「葵、静かにしてよ。今準備してる所だから」と同じぐらいの声量の春子の声がした。

それから、少し経って玄関が開き春子が出てきた。

「ごめんね。妹がうるさくて」と申し訳なさそうにして言った。

「全然、大丈夫だよ。それじゃ行こうか」と僕が言おうとした時、玄関の扉が開き今度は中学生ぐらいの女の子が出てきた。

「春子姉。ちょっとこれ忘れてるよ」と言って財布を渡してきた。

それを聞いた、春子は驚き持ってきた鞄の中を確認をしてなかったらしく

「あ、本当だ。ありがとう。夏海。」と言って財布を受け取った。

「全くしょうがないなあ」と夏海は呆れていた。

それから、僕の方を見て「梅先輩は元気ですか?」と聞いてきた。

「まあ、相変わらず元気だよ。学校じゃないんだから先輩で呼ばなくていいし敬語も使わなくていいよ」と僕は言った。

それを聞いた夏海が「それじゃ、いつも通りで話すね。梅ちゃんからさっき連絡があって今日の事は聞いてるから、こんな姉だけど十太君よろしくね」と手を合わせてお願いポーズをした。

僕は心の中で妹の連絡の速さに驚いていた。

「何よ。こんな姉って。」と春子は言ったが夏海は聞こえないふりをして家の中に入って行った。

その姿をみて、「全く。お互いに妹には手を焼かれるね」と春子が言った。

「確かにね。でも、こっちは一人だけど、春子は二人だから春子の方が大変じゃん」と僕は言って

春子も「確かに」と言って笑ってくれた。

「今日って何買うんだろうね。」と春子は聞いてきたが

「僕もあまりそれについて由梨に聞いてないんだよね。着いたら聞かないと」と言って

お互いに無言になった。

近くのショッピングモールに着くと入り口にツインテールの女子と一緒にツーブロックにした男子がいて楽し気話していた。

遠目から見てもすぐに由梨と夏樹だとすぐに分かった。

向こうも僕たちに気づいたのか大きく手を振っていた。


僕と春子は顔を見合わせてから、それに答えるように小さく手を振った。







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