勉強と吸血鬼
新しく僕の彼女が新入部員として家庭科部に入ったりと怒涛の1週間だった週の土曜日。
僕こと十字架十太携帯のバイブ音で目を覚ました。
画面に表示された名前を見ると僕の彼女であり、通っている高校で1番可愛いと有名な(僕は大袈裟だとと思っているが)立花春子からだった。
僕は、電話に出た。
「もしもし、春子か?」
僕の声を聞いた春子が「なんで、疑問形なのよ。もしかしてこの電話で起きたの?」
と言ってきた。
「そうだけど。なんか悪い?」
すると、「信じられないんだけど、今何時だと思ってるの。」とあきれたような言い方で言ってきた。
「何時?」と僕は聞いた。
「全くしょうがないね。今は11時で、もうすぐお昼だよ。」
「そうか。11時か。梅がいるときはもう少し早く起きるんだけどなあ」と僕は言った。
そう言うと、電話越しで溜息をつかれ、「もしかして、いつも休みの日は梅ちゃんが起こしてるの?」
と聞いてきた。
「僕は、別に起こさなくてもいいって言ってるんだけど、あいつが勝手に部屋に入ってきて起こしてくるんだよ。」
「梅ちゃんはいい妹さんじゃない。大事にしてあげなさいよ。」と朝から注意をされてしまった。
それより、「そういえば、電話してきてどうしたの?」と僕は聞いた。
すると、さっきまでとは打って変わって「えーっと、なんだっけ。そうそう」と動揺しているのが
伝わってくる。
もう少しだけ寝ていたかったので「何も、用がないなら切るけどいい?」と僕は言った。
それを聞いて「ちょ、ちょっと待って。今から伝えるから。」と呼吸を整えてから
早口で言われたが聞き取ることが出来ず、僕はゆっくり言うように伝えた。
そして、今度はゆっくり話しはじめ、「もうすぐ期末テストだから勉強を教えてほしいんだけど」と恥ずかしそうに頼んできた。
「なんだ。そういう事か、それなら恥ずかしがらずに言えばいいのに」と僕は言った。
すると、「恥ずかしがらずに言えるわけないじゃない。それに、この前のお金を貸した件があるから十太は断れないからね」半ば強制的に伝えてきた。
「分かったよ。そしたら、何時にどこに集まる。」と僕は聞いた。
「ありがとう。そしたら、いいカフェを知ってるからそこでもいい?」
「別にいいよ。」と僕は言った。
「一緒に行きたいから、私の家に13時に来てくれる?」と春子は言った。
「分かったよ。」と僕は言って電話を切った。
電話を切った直後、「今日はあの春子という彼女とデートか。」
と声のした方を見るとキングが椅子に座っていた。
「いや、ただ勉強を教えるだけだからデートではないよ。」
と僕は言った。
「そうか。でもその女はデートだと思ってるんじゃないのか。」
とキングは疑問を含めた口調で言った。
「キングも来るか。そしたら、春子もデートだと思わないじゃないか。」
「それ本当に言っているのか。まあ、お前がどうしてもって言うんだったら行っていやってもいいけれど、もし行った場合にその春子って彼女になにかされそうで怖いんだけどな。」
とキングはおびえながら言った。
こいつ、春子に何かされたのかと思ったがあんまり話したくないだろうと思い心の中に留めておくことにした。
「分かったよ。じゃあ、今回は春子と二人で行くよ。もし来たくなったらいつでも来てもいいからな。」と僕は言った。
それを聞いたキングは、「お前は本当に優しいな。」と言って相好を崩した。
「そういえば、その春子っていう彼女は結構勉強できそうに見えるけど、どうしてお前が教えるんだ。」とキングは疑問に満ちた顔で聞いてきた。
「春子の事を見た目で判断している人からよく聞かれる。」
と僕は言った。
「そうか。そしたらあえて聞こうじゃないか。どうしてなんだ。」
僕は溜息をついて、「実は、春子は一見すると頭がよさそうに見えるけど、決してそうじゃないんだよね。」と僕は言った。
その言葉を聞いたキングが驚き、「そうなのか。それは意外だな。」と言った。
「意外なんだよ。キングと同じ反応をみんなするよ。特に英語と国語がやばいんだよね。それ以外は全然問題ないんだけど・・・」
「でも、お前の学校って結構いいところじゃないのか。」
「まあ、それなりにいいところだよ。中学3年生の時に、春子がどうしても僕と一緒の高校に行きたいって言うから僕自身の受験勉強も兼ねて教えてたんだよ。」と僕は当時を振り返りながら言った。
「まあ、大変だったな。それで今回はどうして教える事になったんだ。」とキングは同情を含めた口調で聞いた。
「それは、さっきの電話で頼まれたからな。それにドーナツ屋での件もあったから断りづらくて。」
「ドーナツ?ああ、あの時か。なんかお前らコソコソ話してたもんな。」
と思い出したのかキングがニヤニヤしながら言った。
そんな事を話しているとキングが
「そういえば、13時に彼女の家に行くって言ってたけどいいのか。もうすぐその13時になるけど」
と言って、僕は急いで時計を見た。
すると13時まであと5分であり僕は急いで準備をして、すぐに家を出た。
春子の家に着いた時には13時を少し過ぎていた。
僕はインターホンを押すと、春子の声がした。
その声から5分経ってから春子が出てきた。
いつもはスカートとかは履いていないが、今日はピンクのスカートをはいていて
僕は無意識に「似合ってる」と発していた。
それを聞いた春子が「当然でしょ。だって梅ちゃんと一緒に選んだんだから。」
と顔を赤らめながら言った。
妹と?そうか、あの時買った洋服ってこれだったのかと合点した。
やはり、これはキングが言っていた通りデートなのか?と心の中で思った。
「それじゃあ、行こっか。」と言って僕の手を握って引っ張った。
僕と春子は目的のカフェに着き、
商店街から少し外れているところにできたおしゃれな外装をしたカフェを見て
「へぇ。こんなところにカフェなんかあったんだね。」と僕は言っていた。
それを聞いた春子が「もし、十太が知ってたらこの世界は終わってるよ。」と当たり前のように言ってきた。
「なんだよそれ。じゃあ、どうやって知ったんだよ。」と僕は聞いた。
その質問を待っていたかのように、春子が得意げに「実は、学校の友達から教えてもらったんだよ。」
と言った。
「じゃあ、春子も人から聞いてるって事は、僕と同じじゃん。」と僕は少し反論してみた。
「そ、そ、そんなことないもん。私は、友達から聞いてそれから実際にお店の前までいってるから。それとあのショッピングモールの時に私の行きたい所に一緒に行ってくれるって言ったことは忘れてないから」
と春子は見上げるようにして悪魔のような笑みを浮かべ言ってきた。
しかし、春子の中では人から聞いた情報でもそのお店の前まで行ったかどうかが重要になってくるらしい。
「お店の前までって事は、実際に中には入ってないの?」
「まだ1度も入ったことないよ。だって、月曜日の時に誘ったけど、私も入部したりと部活の事とかで忙しくて行けなかったじゃん。」
と春子は半分拗ねたように言った。
そういえば、今週の月曜日の登校時に春子から誘われたけどまさかこのカフェの事とは思わなかった。
少し気になっていたことだったから、スッキリした。
「じゃあ、中に入ろうか」と僕は言って春子と一緒にお店の中に入った。
店内は、カウンター席とテーブル席の2つがあった。
カウンター席では10人ほどが座れるようになっていて、テーブル席では椅子が2つの席が5つと椅子が4つの席が5つの合計で10席が置かれていた。
あまり人がいなく落ち着けるため、僕にとってはありがたかった。
僕と春子は椅子が4つある席に座った。
僕たちが座って少したってからウェイトレスさんが注文を聞きに来た。
僕は冷たいカフェオレとチーズケーキ、春子は僕と同じで冷たいカフェオレを注文してケーキは注文しなかった。
注文をしてから、春子が小声で「ちょっと、今日は勉強を教えてもらいたくて誘ったんですけど・・」
と言ってきた。
僕は、「ちゃんと覚えてますよ。」としっかり言った。
「だったら、何でケーキなんか頼んでるのよ。」
「だって、ここに来るまでまだ何も食べてなくてお腹空いてるんだもん。」
僕の言葉を聞いた春子が「それほんと?あの電話の後にご飯食べなかったの?」
と信じられないような顔で聞いてきた。
「食べてないよ。いつもは梅が用意してくれてるんだけど、今日はいないくて自分で用意するのも面倒くさかったからね。」
「全く仕方ないわね。面倒くさいからってなんでも梅ちゃんに頼るのは良くないよ。それにショッピングモールの時に兄の威厳を守りたいとかって言ってたよね。すでにその威厳は崩壊しているように見えるけど」と春子が僕の痛いところ突いてきた。
「そうだね。もう梅に嫌われたくないから反省するよ」
と僕は言ってそれを聞いた春子が「それでよし」と笑顔で答えてくれた。
そして、カフェオレ2つとチーズケーキが届いた。
その届いたチーズケーキを食べると、かなり濃厚であった。
僕がその濃厚なチーズケーキを食べていると春子が羨ましそうにこっちを見ていた。
「どうしたの?春子もお腹空いてるんだったら、何か頼めばいいじゃん。」
「私は、十太とは違ってしっかりお昼も食べてきたから、お腹空いてないもん」と頬を膨らませながら春子は言っていたが、その視線は僕のチーズケーキをとらえているように感じた。
そこで、僕は「じゃあ、このチーズケーキ1口食べる?」と言ってみた。
それを聞いた春子が「いいの?」と目を輝かせながら聞いてきた。
その目を見ると、僕は断る事が出来なかったので1口あげる事にした。
僕はフォークで1口サイズに切って春子に差し出した。
それを春子が食べて、頬を両手で抑えて幸せそうな顔をして「確かに、かなり濃厚だね。1口でお腹いっぱいだよ」
と言ってお腹をさすっていた。
チーズケーキを食べ終わり(春子に手伝ってもらいながら)、「じゃあ、始めようか」と言って待っていたかのように春子は言った。
「そうだね。」と僕は言って始めようとすると、後ろから
「あれれ。その後ろ姿は十太君?そして、春子ちゃん?」と聞きなじみの声がして振り返るとそこに
僕と春子が入部している家庭科部の部長の荒木唯先輩がいた。
僕は驚き、「どうして、先輩がいるんですか?」と聞いた。
「どうしてって。だって、このお店は私のお父さんとお母さんが経営しているお店だから私がいるのは当然だよ」と荒木先輩は当たり前のように言った。
「えっ。それ本当ですか?」
「本当だよ。どうして嘘をつかないといけないの。」
「確かに、それもそうですね。」と僕は納得した。
「それに、お店の名前見てないの?」と逆に荒木先輩が聞いてきた。
そういえば見ていないと思い、「見てませんけど」と僕は言って、春子の方を見ると春子も顔を横に振っていた。
その僕たちの姿を見て、荒木先輩が溜息をついて
「仕方ない後輩だね。じゃあ特別に教えてあげる。ここは『カフェ荒木』って名前だよ」
と自慢げに胸を張って言った。
「そうだったんですね。全然、見てなかったです。ちなみにいつからこのカフェはやってるのですか。外装と内装がかなり新しいように感じるんですが。」
と僕は聞いた。
それを聞いた荒木先輩が嬉しそうに「そう?ここは開店してから今年で12年になるよ。去年に外装と内装を新しくして、お父さんとお母さんが聞いたら絶対喜ぶからあとで伝えておくね。」と言った。
「12年目ですか。春子に誘われるまで全然知りませんでした。隠れ家的存在なんですね。」
「まぁ、チラシとか作ってないから知らなくて当然だよ。それに私もあまり学校で言ってないからね」
と荒木先輩は言った。
「そうなんですね。こんなにおいしいケーキがあるのにもったいないですね。」と今度は春子が言った。
「そう言ってくれて嬉しいよ。でも、あまり忙しくなるとお父さんとお母さんと一緒に居れる時間が短くなるから、全然このままでもいいよ。それに、常連さんが結構いるから困らないからね。」と荒木先輩は僕たちに伝えた。
すると、荒木先輩の後ろから「あら、唯。帰ってたの?帰ってたなら手伝ってよ。」と声がしたので見るとさっき、僕たちにカフェオレとチーズケーキを持ってきてくれたウェイトレスさんが声をかけていた。
その声を聞いた荒木先輩が振り返って「ごめんごめん。お姉ちゃん。今手伝うよ。」
と言ったので、僕はつい「お姉ちゃん!?」と大きな声を出してしまった。
僕の声に驚いたのか荒木先輩が驚き「急に大きな声出してびっくりした。どうしたの?」
と聞いてきた。
「すみません。先輩にお姉ちゃんがいるなんて知らなかったので」と僕は言った。
「だって聞かれてないから言わないのは当然でしょ。」と当たり前のように言った。
「まあ、そうですけど」と僕は言い返すことが出来ずその言葉を受け入れるしかなかった。
「じゃあ、紹介するね。私のお姉ちゃんで大学2年生の荒木海姉ちゃん。そして、この二人が私の後輩の十太君と春子ちゃん」と荒木先輩はお互いに紹介した。
紹介されたお姉ちゃんが近くに来て「こんにちは、唯の姉の荒木海です。あなた達が十太君と春子ちゃんね。唯からよく二人について聞いています。」優しく笑顔で紹介された
荒木先輩のお姉ちゃんも同様に髪をショートカットにしていて少し髪を茶色に染めていた。
僕は、心の中で姉妹揃って、可愛すぎだろと思ったが声にして発することは絶対にできなかった。
僕たちは立ち上がり、「初めまして、十字架十太です。」「立花春子です」と名乗った。
僕たちの紹介を受けた荒木先輩のお姉ちゃんの海さんが、席に座ってと促してきたのでそれに甘えて僕と春子は席に座った。
そして、どっかから椅子を2つ持ってきて僕たちがいる机の横に付けた。
その椅子に先輩のお姉ちゃんの海さんと唯先輩が座り、「ねえねえ。あなた達、付き合ってるんでしょ。唯から聞いたよ。」と体を前のめりにして聞いてきた。
「そうですけど、それよりお店は大丈夫なんですか。」と僕は言った。
「大丈夫大丈夫。ちょうど暇だから、それよりどっちから告白したの?」と立て続けに聞いてきた。
本当に大丈夫なのかと僕は気になった。
「それは、春子からですけど」と僕は戸惑いながら答えた。
それを聞いた海さんが春子の方を向いて「春子ちゃんは十太君のどんなところを好きになったの?」とキングと同じようにそのまま聞いた。
逃げることができないと察したのか春子の顔がすごい赤くなり小さい声で「優しいところ」と言った。
その言葉を聞いた海さんが口に両手を当てて「春子ちゃん、めっちゃ可愛すぎる」と言って抱きつこうとしたが、それを先輩が止めてくれた。
『なんだこの姉妹は』と僕は心の中で突っ込んだ。
「やっぱり、唯が言ってた通りの子だね。」と海さんは目を潤ませながら言った。
それを聞いた唯先輩が「でしょでしょ。いい子なんだよ。十太君は最初の方は部活に全然来てくれなかったんだけど、今週に春子ちゃんが入部してくれたから来てくれるようになったんだよ」と先輩は言った。
すると、今度は海さんがこちらを見て、「十太君もいい子だね。春子ちゃんが入部してから部活に出るようになったって事はよっぽど好きなんだね。」となぜか顔を赤くして聞いてきた。
なぜか僕までも恥ずかしくなり、「いや、そんなことないですよ。」と僕は言った。
「またまた、恥ずかしがなくていいのよ。」と肩を叩いてきた。
唯先輩と同様に手加減というものを知らないらしく強くたたいてくる。
「それより、すごい顔が赤いですけど大丈夫ですか。」と僕は聞いた。
僕の言葉を聞いた唯先輩が横から「大丈夫大丈夫。お姉ちゃんは人の恋愛話を聞くとすぐ顔が赤くなって泣きそうになるから気にしないで」と当たり前のように言ってきたが、初めて見る人は驚くからやめてほしいと心の中で思った。
「ごめんね。唯は全然、そういう浮いた話が出てこなくて代わりに二人の話をいつも聞いてるから勝手に親近感が湧いちゃってるの。」と言った。
どうやら、僕たちは唯先輩の代わりとして勝手に話をされているらしい。
「ところで、お姉さんは彼氏とかいないんですか。」と僕は聞いた。
「いるわけないじゃない。いたら、十太君と春子ちゃんの事でそこまで興奮しないわよ。」となぜか声をさっきよりも大きくしていった。
すると横から唯先輩が「実は、高校を卒業するまではすごい人気だったんだけど大学に入ってからあまり声をかけてもらえなくて落ち込んでたんだよね」と小声で言ったが、すぐに頭を叩かれていた。
「ごめんね。唯が変なこと言って、でも良い人がいたら紹介してね」と言った直後、扉が開き一人の眼鏡をかけた男性が入ってきた。
僕はその姿を見て目を見開いた。
そして、横にいた唯先輩もその姿に気づいて「ああ、金田君じゃん。今日は後輩がたくさん来るわね。」と言って手招きをして金田をこっちに呼び寄せた。
ちょうど僕の横が空いていたので荷物をどけて横に座らせた。
すると、「初めまして。唯の姉の荒木海です。」とさっきまでのテンションとは違い頭を下げて丁寧なあいさつをした。
先輩のお姉ちゃんって事に驚いたのか「お姉さんでしたか。これはこれは初めまして、金田と申します」と言ってキングも頭を下げた。
「ところで金田君は、唯の部活の後輩なの?」
と僕たちと話してた時の口調に戻った。
「いえ。僕は部活には入っておらず、十太君のお友達です。」
「そうなの。金田君は私が直接誘ったのに入部しなかったの。」と唯先輩が海さんに伝えていた
それを聞いた海さんが「あら、そうなの。なんで入らないの?」と聞いてきた。
金田は、「実は、家の事を手伝わないといけないので入部したくてもできないんですよ」と当たり前のように嘘をついた。
「そうなんだね。金田君の家も何かお店やってるの?」
「いえ。特にやってないんですけど、弟と妹がいるのでその面倒を見ないといけなくて」と金田は言った。
「へえ、立派だね。唯にも見習ってほしいぐらいだわ。そんな事を知らずに強引に誘うとして姉として謝るわ」と言って頭を下げ、唯先輩も隣で「ごめんね」と言って頭を下げた。
まさか嘘でここまでの行動をしてくれるとは思っていなかったらしく、キングは驚いていた。
それは、僕も同じ思いで何かありそうだなと感じてきた。
「全然、問題ないですよ。それより早く頭を上げてください。こっちが何か文句を言ったみたいになるので」と金田は困惑気味に言って、
その言葉を聞いた海さんがと先輩が頭を上げ「確かに、大袈裟過ぎたわね。」とお姉さんは言った。
すると、横から唯先輩が「そういえば、金田君って付き合ってる人とかっているんですか。」
と聞いてきた。
それを横で聞いていた海さんが顔を赤くして「ちょっと、唯。何聞いてるの?急にそんな事聞いたら失礼じゃない。」と注意していたが、海さんもすごい気になっている様子であった。
唯先輩の言葉を聞いた金田は、「いえ。そんな人はいないですけどいないといけないんですか?」と聞いていた。
もしかして、キングのやつは付き合うって意味が分かってないんじゃないかと心の中で思った。
「いてもいなくてもいいの。ごめんね。唯が変なことを聞いて。」と早口になりながら言って
時計を見た。
「あら、もう戻らないといけない。ゆっくりしていってね」
と言って、動こうとしない唯先輩に「唯も手伝って」と手招きをしていた。
まさか、海さんはキングの事が・・・と横目で見て思ったがそれはないなとその考えを取り消した。
僕の視線に気づいたのかキングが「どうした。何見てるんだよ。」と言ってきたため
「お前、付き合うって意味分かってる?」と聞いてみた。
「そりゃ、分かってるぞ。男女が共に食事をすることだろ。」と当たり前のように言った。
「まあ、それもそうなんだけど。もう少し密な関係になるって事だよ」と僕は言った。
「そういう事か。また良いことを聞いた。ありがとな。」と
二人で話していると、机をたたく音がしたので見ると春子がこっちを見て
「ねぇ。勉強、教えてよ。」と子供のように頬を膨らませて拗ねた感じで言った。
そういえば、唯先輩と海さんの会話に夢中になりすぎてたと反省した。
「ごめんごめん。今、教えようと思ったんだよ。」と僕はつい嘘をついてしまった。
「本当にそう思ってるの?さっきの話にすごい夢中になってる気がしたけど・・・」と
嘘を見破るように僕の目を見てきた。
「全然、夢中になんかなってないよ。春子に勉強を教えるために今日は来たんだから」と
言い切った。
それを聞いた春子が「それなら、よかった。」と安堵の表情を浮かべていた。
「じゃあ、始めようか。」と僕が言うと、春子が視線が僕の横に向けられていた。
僕はその視線の方向に顔を向けるとキングが平然とした表情で座っていた。
僕の視線に気づいたのか「どうした?」と言ってきた。
「今から春子に勉強を教えるんだけど、金田はどうする?」と聞いた。
「どうするって?」と聞いてきた。
「いや。ちょっとつまらなくなるけど」と僕は言った。
僕たちの空気を察したのか「そうだな。そしたら、カウンターにでも行って海さんと話してこようかな」とキングは言った。
今、海さんと話すのは危険だと思ったが心の中でとどめておくことにした。
そして、キングが席を立ちカウンターに行って空いた僕のとなりの席に春子が座ってきた。
「なんで、席を移動したの?」と聞いた。
「だって、対面だと教える方も教わる方も大変でしょ。」と体を寄せてきた。
寄せられると、いい匂いがしたので「そういえば、いい匂いするけど香水とかつけてるの?」と
聞いた。
それを聞いて、「そうだよ、いい香りでしょ。桜の香りがする香水なの。やっと気づいてくれた。」
と嬉しそうに自慢しながら言ってきた。
「桜の香りかぁ。春の香りだから春子にすごい合ってるね。」と僕は思った事をそのまま伝えた。
「何よ。それ、全然うまくないんだけど」と肩を叩いてきた。
「えっ。違うの?ダジャレとかのつもりでいったわけじゃないんだけど」
「嘘だよ。春だから桜の香りを選んだんだよ。」と意地悪な顔をしていった。
「なんだよ。それじゃ始めるよ。」と僕は言って、春子の勉強を教え始めた。
案の定、国語と英語が分からないと言われ、国語は文章問題、英語は全体的に教えたため
かなり大変であった。
春子も分からないところはすぐ聞いているので僕としてもすごい教えやすかった。
それに春子からも「十太って、やっぱり教えるの上手だね」と言われ褒めてくれた。
僕は怒られるのを覚悟に「じゃあ、ここ奢ってよ。」と言ってみた。
すると、「いいよ。元々、そのつもりでいたから」と言ってくれた。
僕は驚き、つい「えっ、いいの。」と聞いていた。
「全然いいよ。なんでそんな意外そうな顔をしているわけ。」
と言われ僕はいつもの顔に戻すと、笑われてしまった。
すると、横から「はーい。そこのお二人さん。アツアツの所すみませんがもうすぐお店閉めますよ。」
と言われ顔を向けると海さんがいた。
スマホの時間を見ると、18時30分になっていた。
「もうこんな時間でしたか。居心地がよくて全然時間を気にしてませんでした。すみませんすぐに帰る準備をします」
と言って僕と春子は勉強道具をしまって帰る準備をした。
「そういってくれて嬉しいわ。」と笑顔で答えてくれた。
「でも、勉強で使ってくれてもいいけど、普通にお客さんとして来てくれたらもっと嬉しいかな」と
海さんは言った。
「分かりました。次も春子とお客さんとしてきます。」と僕は答えた。
僕は周りを見て「そういえば、金田はどこですか?」と金田がいないことについて聞いた。
「金田君なら先に帰ったわよ。あなた達がすごい楽しそうにしてて声をかけづらそうにしてたわよ。」
「そうでしたか。今度会ったときに謝ります。ちなみに、ここって何時までなんですか。」
「そうね。今度会ったら必ず謝りなよ。そして、ここは18時45分までですよ。」
「そうでしたか、そしたら部活終わりとかに来れそうですね。」と僕は言った。
「それでもいいけど、あまり学校で言わないでね。今の忙しさが丁度いいから。」と海さんは言った。
それと、と言って小声で「ちなみに十太君は金田君の連絡先知ってる?さっき聞きそびれちゃって。」
と海さんは言ってきた。
「すみません。僕も知らないんですよ。」
「そっか。残念だわ」と海さんは残念そうにして言った。
「でも、金田とも一緒に来ますよ。」と僕は言った。
その言葉を聞いて、嬉しそうに「本当に?じゃあ、会えるのを楽しみしてるわ」と海さんは言った。
やはり、この人はと思い聞いてみることにした。
「海さんは、金田の事が好きなんですか?」と聞いてみた。
「えっそ、そんなことないけど。ちょっと気になってるだけだよ」と見抜かれ事に動揺しながらちょっと照れ臭そうに言った。
「やっぱり、じゃあこのことは僕と春子と海さんの3人の秘密にしておきますね。」と僕は言った。
「それだと、助かるわ。唯にも言わないでね」と言われた。
「どうしてですか?」
「唯に言うと、すぐ言いそうだからよ。」と言った。
「確かに、わかります。じゃあ、先輩にも秘密にしておきます。」と言って納得してくれた。
そういって、僕たちはお店を出た。
帰り道に「ごめんね。遅くなって」と僕は謝った。
「全然、大丈夫だよ。私も、十太といて楽しかったから。」と春子がこっちを見て言った。
「それならよかった。また来ようね。」
「うん。それと明日暇?」と聞いてきた。
「明日なんだけど、由梨と夏樹と買い物に行くんだけど春子も一緒に行く?」
と僕は聞いてみた。
「いいの?」と上目遣いに聞いてきた。
「別に由梨と夏樹だから全然問題ないよ。」
「分かった。」
「じゃあ、また連絡するね」と僕は言って手をつないで帰った。
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