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休日と吸血鬼

ある休日の日。

部屋の扉が勢いよく開き、僕が寝ている布団を無理やりはがされた。

一度起きたが、まだ寝たりなかったため二度寝をすることに決めた。

そして、目をゆっくりと閉じて夢の中に入ろうとした時、突然耳元で「起きろーー。何時まで寝てるんだ」

と大きな声で叫ばれたので、飛び上がって起きた。

どうやら声の主は僕の自慢の妹である十字架梅じゅうじかうめであった。

「何時って。今何時なんだよ」

その言葉を聞き、呆れたような顔で「もうすぐ10時だよ。これから二度寝してたらお昼を過ぎちゃうよ。」

「いいじゃないか。今日は休みなんだから何時に起きようが。」

「良くない。」と言いながら眉間にしわを寄せて顔を近づけてきた。

そろそろ眉間にしわを寄せるのをやめてほしいと心の中で願った。

「だって、今日はお兄ちゃんとショッピングモールに一緒に行くって約束したじゃん。」

えっ、僕と梅が?ショッピングモール?約束?と過去の自分の行動を遡っていると心の中を悟ったのか

梅が、「まさか忘れたの?2週間前にお兄ちゃんが春子ちゃんと仲直りして帰りにコロッケを買って帰ってきた日に約束したじゃん。」

そうだっけ?確かにあの日は春子と仲直りをしてコロッケを買って帰ってきたけど、その後に約束した覚えがない。

だが、ここは正直に謝ろう。

「ごめん、梅。お兄ちゃんすっかり忘れてた。ちなみにその時僕はいつそのショッピングモールに行くって言ったんだ?」

「だ・か・ら。それが今日じゃんよ。2週間前にいつ私の好きなドーナツを5個買ってくれるのって聞いたときに2週間後の土曜日ならいいよって言ったじゃんよ。」

それを言われ、段々と当時の記憶がよみがえってきた。

確かに、僕はそんな事を約束してカレンダーにも書いた気がする。

僕は机に横にあるカレンダーに目を向けると、確かに赤文字で大きく梅とドーナツを買いに行くと書いてあった。

しかもそれは僕の字ではなく『妹の字で!!!』

すると、扉が開きキングが入ってきた。

「なんだ、お前。妹との約束を破る気か?それは良くないな。」

キングの意見に賛同するように妹も「そうだそうだ」と言った。

「分かったよ。そんなに行きたいなら、梅とキングの二人で行けばいいだろ。お金は渡すから」

「それは、駄目なの。」

妹は勢いよく言ってきた。

「どうしてだよ。」

「だって、私とこの吸血鬼が一緒にいたら変じゃんよ。」

「何が変なんだよ。別に誰もおかしいと思わないよ。」

「絶対おかしいよ。だって、この吸血鬼はかっこいいしもし学校の人に見られたら浮気してると思われて直樹君を悲しませちゃうかもしれないでしょ。」と妹はうつむきながら言った。

(直樹君とは梅の彼氏である。)

かっこいいと言われたキングはなんだか嬉しそうな顔をしていて少しむかついた。

「考えすぎだと思うけどね。まあ、約束は約束だから行くよ。」

それを聞いて妹が顔を上げて満面の笑みで「そうこなくっちゃ。やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだね」と言って、スキップしながら部屋を出て行った。

最後の部分に関しては半分馬鹿にされているような気がしたけど気にしないことにした。

すると今まで黙っていたキングが「よっ、さすが。やっぱり兄というものはこうでなくちゃ」

「完全にバカにしてるだろ」と僕は少し声のトーンを低くしていった。

「いやいやバカにしてるわけないだろ。俺は完全に十太の事を褒めてるんだよ。」

「本当にそうか?ちなみに今、僕の事を名前で呼んだだろ。」

いたいところを突かれたと感じたのかキングは顔を明後日の方向に向け

「いや、そんなことないと思うけどな」と知らない振りをした。


確かに聞いた気がするけどなとどうでもいい事を考えていると、スマホが揺れた。

画面に表示された名前を見ると彼女の立花春子たちばなはるこからだった。

僕は、一度呼吸を整えてから出た。

するとその行動を察したのか「もしもし。今、深呼吸をしてから出たでしょ。」と言ってきた。

あいかわらず察しが良いと思ったが、嘘をつくことにした。

「いや、そんな事ないと思うけどね。」

「本当に?まあ、そんなことはどうでもいいけどね。それより今日空いてる?空いてたら一緒に行きたいところあるんだけど一緒に行かない?」

いつものように春子から誘ってきたが、僕はこれから妹と買い物に行くことを伝えた。

「そんなんだね。それなら仕方ないね。また今度一緒に行こうね。」

「分かった。ごめんね」

そう言って電話を切られた。

スマホを耳元から離そうとすると何かにぶつかった。

横を見るとキングがスマホの反対側に耳を当てて聞いていたようだ。

「何すんだよ。人の電話を勝手に聞くなんていけないことだぞ。」

と僕は注意をした。

しかし「最初から、俺の前で電話をするのが悪い」と開き直ってきた。

僕は、これ以上言い合いはしたくなかったので反論はしないことにした。

僕が反論しないことを良いことにキングが続けざまに「さっきの断ってよかったのか」と聞いてきた。

「仕方ないだろ。梅との約束はもともと入っていて、さっきも行くって言っちゃったんだから。」

「ふーん。まあお前がそれでいいならいいけど」

と最後に意味深なセリフを吐いて僕の部屋から出て行った。

僕は一人で「なんだよ」とつぶやいた。


その後、僕と妹は電車で2駅先にあるショッピングモールに来ていた。

開業したのが5年前だが、相変わらず人が多くて息が詰まりそうになる。

(ちなみに、このショッピングモールには学生たちのたまり場とデートスポットにもなっているらしい)

そんな事を考えていると横から服を引っ張られた。

僕はその方向に顔を向けると妹が迷惑そうな顔をして

「どうして、こいつもいるのよ」と指をさした。

指を差した方を見ると、キングがキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていた。

「仕方ないだろ。あいつも行きたいって言ってたんだから。」

「でも・・・」と眉尻を下げて心配そうな顔をしていた。

まあ確かに分からなくもない。

なぜなら、キングはこのショッピングモールに着いた時から、縦横無尽に移動していて逆の意味で周りから注目を浴びていた。

正直言うと、僕もかなり心配している。

このショッピングモールにはよく春子と来ているが、いつも春子が行きたいところに行っているからいざ、こうして妹と二人で来ると迷ってしまう。

周りを見ると、ところどころに休日なのにあえて学生服を着た学生カップルがいたり、大学生らしい雰囲気を纏ったカップルもいた。

僕と妹とキングはそれらの間を縫うように進んでいった。

すると、お目当てドーナツ屋があったらしく妹の歩くペースが上がった。

お店の前に着くと、すでに沢山の人でにぎわっていた。

すると、横にいたキングが

「なんで、こんなに人がいるんだ。ドーナツって言ったか?それはそんなにおいしいものなのか」

と聞いてきた。

「まあね。かなりおいしいよ。しかもこのお店はかなりの人気店だしな。」

「そうかそうか。俺は普段の食事として生肉を食べたりしているからな」

そうか、時々姿を見せない時があると思ったらそういうことかと合点した。

それでも「ここでいう事じゃないだろ。僕じゃなかったら引いてるぞ。」と注意をした。

そんな事を話していたら、妹が横にいてメニュー表をとってきたらしく並ぶお店に入る前から

何にするかを吟味していた。

メニューをじっと睨んでから数分たってから、これにすると言って5個選んだ。

僕はメニューを受け取り、値段を見て安易に約束した事を後悔したなんと1個が400円もする高級ドーナツであった。

僕は1個が200円から300円の想定でお金を持ってきていたから2000円もある自信がなかった。

僕は、妹に背中を向け財布を開きお金を数え始めた。

財布には1500円あることは確認できた。

あとは100円が5枚あればいいだけだが、数えると4枚しかなく1枚足りなかった。

何度探してもやはり1枚足りなかった。

やばい。今この場で100円玉が1枚足りないって事を知ったら兄としての威厳がなくなってしまう。

でも、キングはお金を持ってないから信用ならないし。

どうしようと悩んでいると、良いことをひらめいた。

確か、メニュー表には300円のドーナツもあったはずと確認すると確かにあった。

そのドーナツを見つけた瞬間、僕は心の中で『よしっ』とガッツポーズをしていた。

さあ、あとは正直に話そうと決心を決めた。

変な兄の様子を見ていたのか妹が「ねえ、お兄ちゃんどうしたの?早く入ろうよ」

と言ってきたので、僕は振り返り本当の事を告げる事にした。

「なあ、梅。ごめんな。お兄ちゃんお金・・・」

とお金がないことを言おうとした瞬間、かぶせるような形で「あれ、十太じゃん」と声がした。

聞き覚えがある声がして、振り返るとそこに春子がいた。


春子をみた瞬間、神様に『ありがとうございます』と手を合わせ感謝を心の中でした。

「あれ、春子ちゃんじゃん。どうしたの?」

春子も妹に気づいたらしく「あれ、梅ちゃんもいるの?どうしたの今日は?」

「実は、お兄ちゃんにドーナツを5個奢ってもらうんだ」と言った。

「いいなあ。私も奢ってほしいなあ」と変な視線を送ってきたので目を合わせないようにする。

だが、これは神様が僕に出してくれた最後の助け舟だと思い存分に使わせてもらうことにする。

「なあ、春子。ちょっと話したい事あるんだけどいいか」

「いいけど、梅ちゃんは大丈夫なの。さっきから睨んでるけど。」

その言葉を聞き、振り返ると、妹が睨みながら「ねえ、どうして入ろうとしないの?」と言ってきたがここは兄の威厳を守るために必要なことなので「少しだけでいいから、頼むよ」と言って何とか許しを得た。

そして、僕は春子を連れて妹に声が届かないところまで移動して事の経緯を説明した。

「まあ確かに分かるけどさ。ここは正直に言ってみた方がいいと思うよ。」

と言われたが、「いや正直に言ったら、家に帰ってから何されるか分からないから怖いんだよ。」

と言った。

春子はその言葉を聞いて、いじわるな顔をして

「じゃあ、私に何をしてほしいの?」と聞いてきた。

何をしてほしいのかわかってくるくせにあえて聞いてくるのが、春子の常套手段であり直してほしいところでもあった。

「100円貸してください」とお願いした。

「いいよ。でもその代わり、今度私の行きたいところに付き合うのと勉強を教えてね」

「100円でそこまでしないといけないか?」と心の声が漏れてしまった。

「別に私は貸さなくてもいいんだよ。でもその代わり十太は100円のために兄の威厳を失って、後々後悔するんだったら、今ここで100円を私から借りてその威厳を失わないようにするなら安いもんだよ思うけどね。」

なんとも卑怯な考え方だなと思ったが、春子の正論に勝てずお金を借りる事にした。

僕は、春子からお金を借りて戻ったら、妹が鋭い目つきで見てきた。

「春子ちゃんと何、話してたの?」と聞いてきた。

僕は春子からお金を借りたことは言えないのでここは仕方ないと思い

「実は、前に春子にお金を貸していてそれを返してもらってたんだよ。」

言った瞬間、横から睨まれている気がしたが怖かったので見ないことにした。

「それでなんで、二人で私から離れてたの?」

僕はまた、嘘をつくことにした。

「梅の前では、恥ずかしい姿を見せたくなかったらしいよ。」

「そうなんだね。それだったら仕方ないね。それじゃ春子ちゃんも一緒に入ろうよ。」

僕は安堵していると、背中に激痛が走った。

振り返ると春子がつねっていた。

そして、つねりながら「さっきのどういうこと。」と聞いてきた

「どういう事ってそれは、あの場面で正直に言ったらお金を借りた意味ないでしょ。」

「それはそうだけど、もう少し別の言い訳ができたんじゃないの。あの言い方だと、私が十太からよくお金を借りているみたいじゃない。」

「梅はそんなに深く考えてないから大丈夫だと思うよ。それよりそろそろつねるのやめてくれないかな。痛みが分からなくなってきたんだけど。」

その言葉を聞き、春子はすぐに背中から指を離してくれたがかすかにジーンとしていた。

僕は自分で背中をさすると、その様子を見ていた春子が

「ごめん。そんなに強くつねってはいないと思うんだけど。でもさっきの仕返しだと思ってね。」

春子が笑顔で見てきたが、目が完全に笑っていなかった。

すると、先に入っていた妹が「お兄ちゃんと春子ちゃん、入らないの?会計もうすぐだよ」

と言ってきたので、僕と春子は二人でドーナツ屋に入った。

僕は、妹の分を奢ったおかげでお金がなかったので、買わないようにしていたら春子が買ってくれた。

僕たちは店内の空いてるスペースに座りそこで食べることにした。

どうやら、妹は一気に5個も食べるらしい。

すると、妹のにある椅子が引かれそこにキングが座ってきた。

その姿をみて、春子が目を見開き、「あーー。あなた、あの時の」と言った。

それに気づいたキングは、「おやおや、あなたはあの時の弁当娘じゃないか」

「弁当娘じゃありません。ちゃんと、立花春子って名前があります。」

ちょっとムキになりながらキングに向けて言った。

すると、その会話を聞いていた妹が「あれ、春子ちゃんってこの吸」

「梅ちゃん。ダメだろ食べながら話しちゃ」と僕はよからぬことを言いそうにしていた妹の声にかぶせるような形で言った。

そして、僕はお手洗いの場所を教えてもらうのを口実に妹を連れ出した。

連れ出された妹は不満顔で「ちょっと、お兄ちゃんってば何するの?」と言ってきた。

僕は、その声に気づき妹の手首を掴んでいた手を離した。

そして、春子にはキングが吸血鬼という事は知らないって事と名前を金君にしてると言った。

「ふーん。そういう事だったら協力してあげるよ。春子ちゃんにバレないようにすればいいんでしょ」

「ありがとう。今度、お兄ちゃんが勉強を見てあげるから」とまた約束をしてしまった。

それを聞き、親指を立てた。

安堵していると、「おい。お前と妹で何を話している。同じ家にいる者として隠し事はやめろよ」

と突然後ろからキングが声をかけてきた。

僕は、一瞬春子かと思い驚いたがキングの姿をみて安心した。

そして、妹に話した時と同じ内容を伝えた。

「そうか。あの立花春子っていう弁当娘には俺が吸血鬼って事を知らないわけか。そして、俺の名前をきんって事にしているわけか。」

「そういう事なんだよ。頼むから協力してくれ」

と僕は手を合わせお願いをした。

その姿をみて「分かった。協力してやろう」

と快く引き受けてくれた。

3人で席に戻ると1人で席にいた春子が「何かあったの?大丈夫?」と心配してくれた。

「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」と僕は返した。

「十太と梅ちゃんが席を立った後に金君もすぐに席を立ってどっか行っちゃうから心配になったよ。大丈夫ならよかったよ」

こういう風に心配してくれている姿は周りから見るといい女性に見えると思うのだが、僕はその裏側の怖い一面も知っているから、何とも言えない。

「それより、一人にして悪かったね。」と僕は謝った。

「全然、大丈夫だよ。それより、さっき梅ちゃんは何を言おうとしていたの?きゅうって言ってたけど」

と視線を僕から妹に切り替えた。

突然話を振られた妹は「そうそう。春子ちゃんってきゅうりは好きなのかなって思って」

僕は心の中で、なんだその変な答え方はと突っ込んだ。

それを聞いた春子は、「きゅうり?」と初めて聞いたかのように声をうわずらせた

そして、僕は妹と目が合い目には助けてほしいと書いてあった。

その言葉通りに僕は「そうそう。最近、梅がきゅうりにはまっていてもし春子が好きなら今度一緒にきゅうりの浅漬けでも食べたいって言ってたんだよ」

と言った。再び目が合い妹の目には助かったと書いてあった。

「まあ、すごい好きかと聞かれるとそこまでではないけど、好きな方ではあるよ。梅ちゃんがいいなら今度、一緒に作ろうね。」

「うん。ありがとう。春子ちゃんと作るの楽しみしてるね」

「梅ちゃんから誘ってくれるなんて嬉しいな。私も楽しみにしてるね」と春子も言った。

僕なりにかなりのファインプレーをしたなと思い自分自身をほめたたえた。

ちなみに、我が家自慢の妹の梅はきゅうりはそこまで好きではない。

「春子ちゃんは今日はどんな用事で来たの?」

「そっ、そっ、それは、えっと、そう買い物に来たの。」

聞かれることを予想していなかったのか、春子にしてはおどおどしていた。

妹もそれに察したらしく「春子ちゃん、何か隠してるでしょ?」と聞いた。

「い、いや、何も隠してないよ。梅ちゃんの気のせいじゃないかな。」

さっきほどではなかったが、何かを隠している素振りだったがこれ以上は聞かない事にした。

妹も何も聞かなかった。

「そうだ。春子ちゃん。折角、会えたんだし、洋服を見に行こうよ。」

妹は満面の笑みで春子に聞いた。

「梅ちゃんがいいなら、私は大丈夫だよ。」

それを聞いて、妹は「やったー」と言って、すごい勢いでドーナツを食べた。

僕は横にいる春子を見ると嬉しそうだった。


モール内で買い物できるところは3階まであるが、洋服を買えるお店が入っているのは2階に集中しているため、僕たちはドーナツを食べた後に1階から2階に移動した。

妹と春子が洋服を選んでいる間、僕とキングはお店の入り口前に椅子があったそこに二人で座った。

「なあ、あの弁当娘に俺の正体を言わなくていいのか?」

と突然、キングが聞いてきた。

「言わないつもりだけど、それに弁当娘じゃなくて立花春子って名前だからな。」

「そうそう。春子って名前だ。」

僕はそろそろ、キングも僕と同じ目に遭いそうな予感がした。

「僕の彼女なんだからしっかり覚えろよ。」

「えっ、誰の彼女だって?」

聞いていなかったのかと思い溜息をしてもう一度言った。

「だから、僕の彼女って言ったんだよ。」

少し声が大きくなってしまった。

「えーーー。じゅ、十太の彼女だって。あんなかわいい子が、どうしてお前みたいなつまらない奴と付き合ってるんだよ。」

包み隠さず言われたので少し傷ついた。

「告白してきたのは向こうからだから僕のどこがいいのかは聞いてないから知らないよ。」

「よし、戻ってきたら聞くしかないな」とニヤニヤしながらつぶやいていた。

「絶対やめろよ。それに今、僕の事を名前で呼んだよな。しっかり聞こえたぞ。」

「確かに、名前で呼んだぞ」と今回は言い訳をしてこなかった。

「どうして、いつも名前で呼んでくれないんだよ」と僕は疑問に思っていたことを聞いた。

「それはだな。お前の名前に漢数字の十が入っているだろ?それが十字架に似ているから気分が悪くなるんだよ。」

「そういう事だったのか。でも声を出して名前を呼ぶときは、その字は見なくて済むと思うけど」

「確かにそうだけど、『じゅう』っていうだけでもなんかいやな気分になるんだよ」

「そうか。なんかごめんな。無理させて。」

「いやいや、お前が謝る事じゃない。俺の性質の問題でもあるから気にするなよ。」

そんな事を話しているうちに、春子と妹が戻ってきた。

二人の手には紙袋が提がっていた。

「遅くなってごめんね。なんか梅ちゃんと結構盛り上がちゃって。」

「いや、全然待ってないよ。ちなみにどんなのを買ったの?」

その言葉を聞かれ、春子は恥ずかしそうに「別になんだっていいじゃんよ」と言った。

その会話を聞いていた妹が僕の近くに寄ってきて小声で

「お兄ちゃんに、試着姿を見せてどれがいいか決めてもらいなよって言ったんだけど断られちゃった。」と言った。

なんか、今日の春子はいつもと様子が違うと心配していた矢先、

キングが春子の近くに移動して、「おい、春子っていう弁当娘。お前、あいつの彼女らしいな」

と聞いた。

それを聞き「そうだけど、なんか文句でもあるの?」といつも通り返事をしていた。

「いや、文句はないんだが、あいつのどこを好きになったのか気になってな。もしよかったら教えてくれないか?」僕は天を見上げた。そのまま聞くやつがあるかと心の中で思った。

その言葉を聞いた瞬間、春子が目を見開いてキングを睨み、「今ここで言う必要ある」と言った。

そして、我に返り「急にきつく言ってごめんね。全然悪気はないから。」

「そうか、俺の方こそ変なこと聞いたみたいで悪かった。」とキングも謝った。

段々、人間の心というものが分かってきたらしくて僕は少し嬉しくなった。

僕は「買い物して疲れたでしょ?ちょっと休もうか」と言った。

それを聞き春子が「私、この後予定あるから先に帰るね。」と言った。

「えっ、あ、そうか。じゃあ気を付けて。」

「うん。また明日ね。」

と言って僕たち3人を残して先に帰っていった。


春子の背中はなんだか寂しそうな背中をしていたが、追ったところで困らせてしまうと思い

追わなかった。

妹も「追わなくていいの?」と聞いてきたけど、僕は「大丈夫だと思うよ」と言った。

それより、僕は2人に顔を向けて「梅とキング、お前ら春子に聞いていい事と聞いちゃいけないことがあるだろ」と少し語気を強めて、注意をした。

妹とキングは「ごめんなさい」と言って謝ってくれたが、明日、迎えに言ったときになんていえばいいのかを考えていた。






そして、ショッピングモールの店内BGMがなんだか応援歌にも聞こえてきた。





















































































































































































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