吸血鬼との出会い
空は快晴に包まれていて、とても気分が良い。
僕こと十字架十太は学校の屋上で空を見上げて一人でつぶやいた。
今年から高校生になった僕はこの二か月を振り返り、我ながら充実な日々を送っていた。
空から降ってくる太陽の日の光に当たり眠気を感じ始めていたその時、屋上につながる扉が勢いよく開いた。
そして、その中の暗闇から一人の女子高生が出てきて、眩しそうに目を細めながら僕のほうに向かってきた。
「やっぱりここにいた。予鈴がなっても十太だけいないから先生もさすがに呆れてたよ。」
「悪い悪い。屋上にいると気持ちよくて音が入ってこないんだよね。春子もここにいると分かると思うよ。それに機嫌悪い見たいだけど怒ってるの?」
ここで紹介をしよう。
この春子という女子高生は僕の幼馴染であり彼女でもある。
本名は、立花春子。
中学の頃から周りから超絶可愛いという事で、有名であり2年生の時に校内で行われたミスコンでは
3年生を破りグランプリに輝いた。
そして、その勢いは落ちることなく3年生の時もグランプリを獲得して、殿堂入りにもなった程だ。
僕自身、小さい頃からいるからなのかそこまで可愛いと思った事もない。
学校の登下校の際も一緒にいるとよく周りから注目を浴びていた。
(本当は、注目されたくなく、一度春子から逃げるように帰ったことがある。
しかし、その日の夜に春子の親から連絡を受けた母親と妹から一緒に『女の子を一人で帰らすな』えらく怒られた。それがトラウマとなりそれ以来一緒に帰る事になっている。)
一緒に帰っていたある日、突然、春子から告白された。
もし断ったら恐ろしい事が起きる予感がしたので、その告白を受けることにして付き合う事になった。
長くなったが続きに戻ろう。
「怒ってるわよ。それに周りの音が聞こえなくなるぐらいなら私はいたくないよ。
それはそうとして、まだ入学して2か月しか経ってないのに今日で授業の遅刻何回目か分かってるの?」
「えっと、確か今日で30回目かな。すごいでしょ」
「全然、すごくないし。それになんで数えてるわけ。」
「自分がいかに充実に過ごしているかを周りに知ってもらうために数えてるんだよ。
このままのペースでいけば1学期中には50回に到達するかもしれないよ。」
「なによ、その不名誉な記録。あんたって成績はずば抜けて良いのにどこか抜けてるわよね。
周りの友達は、あんたと私は付き合ってるって事を知っているんだからこれ以上恥をかかせないで」
「分かったよ。春子には恥をかかせないように記録に挑戦していくよ。」
この言葉を言った直後、春子は何かを言おうとしたがあきらめて踵を返した。
最近、春子は怒る事が増えたなと思い何かあったのかと聞いてみると余計に怒らせたみたいだ。
周りの友達にその事を相談をするが、相談をした全員から僕が悪いという答えが返ってくる。
何がいけないのかを考えながら僕は怒っている春子に続いて屋上から校内に入った。
教室に入って、授業を受けていた時に突然周りが暗闇に包まれた。
その暗闇の中に佇んでいると、体が揺れどこからか音が聞こえてきた。
音が聞こえてきた方角に向かうと段々とその音がでかくなってきた。
その音の正体が分かった時、突然耳が痛くなり立ち上がったら春子がびっくりしたようにこっちを見ていた。
そして、その手にはスマホをもっていた。
どうやら、音の正体は春子のスマホの音楽らしい。
「やあ、春子。おはよう。」
その言葉を聞き、春子が睨んできて。
「おはようじゃないよ。授業が始まった5分もしないうちに寝るなんでありえないよ。
先生も呆れて、注意しようしてなかったんだからね。」
「さすが、先生だね。よくわかってくれてる。
それより、今は何の時間なのかな。みんないないみたいだけど」
春子が溜息をついた。
「そんなつまりじゃないと思うけどね。それに今回は、6時間目が終わって十太が気持ちよさそうに寝ているから、今日はあえて起こさずホームルームまでやってみんなは帰ったよ。」
「そういうことか。じゃあ、僕たちも帰ろうか。」
そう言うと、春子がさっきまでとは違った口調で言ってきた。
「十太は、周りの人の気持ちをちゃんと考えたことあるの。十太の家族がどんな思いで育てて高校に通わせてくれているのかや、先生たちもどんな思いで注意してくれたいるのか。それに私も彼女としていや幼馴染としてどんな思いでいつも一緒にいるのかをしっかり考えたほうがいいよ。」
僕は何も言えなかった。
「今日は、十太と一緒に帰れないから。先に帰るね。」
そう言って、春子は教室から出て行った。
それから一人で帰り道をあるいていた時、そういえば春子から初めて本気で怒られたと気づいた。
春子に言われた事を考えながらあるいていて気づいたら、家が着いていた。
玄関にカギを差し込み家に入ろうとドアノブを持とうとした時、勢いよく開いて僕は顔をぶつけた。
開いたドアから一人の女の子が顔を出した。
彼女こそ、わが妹の十字架梅である。
自慢の妹は、僕を見つけるなり勢いよく服を引っ張り家の中に連れ込みそのままの勢いで部屋まで連れ込まれた。
部屋に入って、僕は正座をさせられた。
そして勢いよく扉を閉めて振り返った顔はとてつもなく怒っていた。
「ねえ、お兄ちゃん。どういうつもりなの」
「どうって?」
「はあ、とぼけるつもりなの。さっき、私の携帯に春子ちゃんから泣きながら連絡がきたんだよ。
お母さんには言わないつもりだけど何かあったの。」
それからは僕はこれまでの経緯を自慢の妹に話した。
それを聞いている妹の眉間にしわが寄ってきているのが分かった。
「なるほどね。それは全部、お兄ちゃんが悪いね。春子ちゃんはお兄ちゃんの事を心本気で配してくれているのにそんな態度はだめだよね。」
「それに春子ちゃんだからこそそこまで心配してくれていると思うよ。明日、しっかり謝った方がいいよ。」
しっかりとした正論を言われ、僕が弟なんじゃないかと思う。
「分かった。明日、しっかり話すようにするよ。」
それを聞き、妹はうなずいてから部屋から出るように言った。
僕は妹の部屋を出て、自分の部屋の扉を開けて電気をつけたら、ベットの上に黒い生物がいた。
一度扉を閉めた。
まだ、夢を見ているのかと、ほっぺをつねり現実であることを確かめてからもう一度部屋に入った。
部屋に入るとまだその黒い生物はいた。
その生物と目があった。
すると、その生物が声をかけてきた。
「おい。そこの人間。お前の名前を教えろ。」
「ああ、僕は十字架十太」
名前を聞いた直後、突然その生物の体は震えだした。
聞こえていなかったのだろうかと思い、もう一度言おうとしたら
「もう、名前を言うな。これ以上、お前の名前を聞きたくない。私の嫌いな名前が入っているじゃないか。」
「嫌いな名前?なんですかそれ。それにあなたは誰ですか。」
その言葉を聞き、その生物は胸を張りながら
「私はかの有名な妖怪、吸血鬼のキングである」
僕と吸血鬼のキングとの物語はここから始まった。