これは成り代わりなのか元通りなのか?
子どもの頃、よく屋敷を抜け出して街に遊びに行っていた時期があった。その時に初めてあの子と会ったの。
「ねぇあなた。何してるの?」
道端にうずくまっていたあなたに。
「…かぁさんに追い出された。大事な商品をダメにしちまったから」
見窄らしい格好のあなたは私にいろいろなことを教えてくれた。母と二人で暮らしていること。街で名の知れた貧乏だということ。自分が母とあまり似ていないこと。
私は彼女を心底憐れんだ。可哀想にって。だから私は彼女と友達になりたいって思ったの。
友達ならあなたを助けられるでしょう?
「これでお揃いね!」
彼女と私、二人で同じヘアピンを付けて笑い合った。奇遇にも私達は同じ髪と瞳の色を持っていたから本当に双子みたいだった。雨宿りした軒先が急に雨漏りして二人仲良くびしょ濡れになったのもいい思い出ね。
――――なのにどうしてあなたがいるの?
もう何年も街には行ってないし、彼女とも会ってないけど分かる。あのヘアピンを忘れるはずがないもの。
屋敷で開かれた誕生日パーティー。そこに座っていいのは私だけのはずよ。
私が着るはずの服を着て、化粧をして、名声を受けた彼女がいる。
どうなってるの?
冷たく閉じられた檻の向こうには無邪気に笑うあの子の姿。
ねぇ、私が本物のこの屋敷のお嬢様よ。
誰か信じてよ……
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