2話目「いつもご飯作ってくれてありがとう。」
異世界転生をしてから4年。
産まれたての頃に比べたら、ここでの暮らしにもだいぶ慣れてきた。
それにしても、
「本当に異世界なんだな…」
"真っ赤で丸い豚"、"怖い魔物"
後者は実際に見たことがないから、もしかしたら比喩かもしれないが。
しかしそれを抜きにしても、ここが現実世界とは言えないことは確信している。
"中世ヨーロッパに出てきそうな建築物"、"肉体労働多めのルーティン"
「二人共お疲れ様。ご飯できてるわよ。」
「ミラ、もうそんな時間か。」
「今日は少し奮発しちゃったわ。期待しててね。」
「ああ!お前も今日は早く家に戻るぞ。今日はご馳走だぞ〜!」
「うん。」
そして何より、
「あ〜美味い!美味すぎる…!」
「うふふ、頑張った甲斐があったわ。」
「お母さんありがとう。」
「まああなたまで!お母さん嬉しいわ〜」
(…言えない。)
(お世辞にも美味しいだなんて、言えない…!)
"お世辞も言えない味のご飯"
前世の食文化が恵まれているからかもしれないが、それにしても不味い。
(でも言えない。)
(毎日欠かさずご飯を作ってくれるおかんに、)
(聖母みたいなこのおかんに、)
(「このご飯不味い」だなんて言えない…!)