疑惑の解決と決断
さて、急展開である。
『ミレイ』の正体がわかった。
なんと夫の親戚だった。遠いが。
『ミレイ』は私の義父の兄の孫だった。
なんでわかったのか。
私が義母に直接聞きに行こうと家を訪ねた際にその義父の兄の孫はいたのだ。長いので孫、とこれから表記する。
義母が孫のことを『ミレイ』と呼んでいたので孫が帰った後に聞いた。
『ミレイという宛名のメッセージを見かけたことがあったが孫に宛てたものでしょうか?』と。
すると義母は目に涙をうっすら溜めながら話し出した。
なんでもその孫と義父は本が好きということで会ってよく話たりしたらしい。義父の体が悪くなってからは孫は週一のペースで見舞いにきて話し相手になっていたらしい。そんな孫のことを義父はよく気に入っていたようだった。本当の祖父と孫のように仲が良かった2人。
なんでも2人が共通で読んでいた小説に出てきた老舗ブランドのものを『いつか欲しい』といっていたので誕生日にでも渡したいと義父は思ったらしい。
義母もその考えに賛同して、孫が欲しいと思っているアクセサリーを聞き出し、それを購入した。
次の誕生日に渡そう、と2人で話していた。そう、義母は語った。
しかし、その後に義父の容態が急変し孫にプレゼントを渡すことなく亡くなってしまったのである。
義母は義父の急死に混乱してしまっており、プレゼントのことなんて頭から抜け落ちてしまっていた。
プレゼントを渡していないと思い出したのは義父の死にひと段落ついてからだった。
義母は自分が義父の兄の家にいく時にでも渡そう、と考えていたようだった。しかし、夫がそれを見つけ渡しておくといったらしい。義母は自分で渡そうと思っていたが、義父が急死したことで人の一生はどうなるかわからない、と思ったようで早く渡した方がいいと考えを改めて夫に頼んだということのようだった。
「ミレイちゃんプレゼントのこと何も言ってなかったのよ」
義母はそうはっきりとぼやいた。
「いつもお礼とかちゃんとしてる子なのに。あのこはあのアクセサリーをちゃんと渡してくれたのかしら」
ぼやく義母にそのアクセサリー私にくれました。とは流石に言えなかった。
「どうなんでしょう?今度聞いてみますね」
なんて当たり障りのないことしか言えなかった。
家に帰り、義父がミレイさんに贈ろうとしたアクセサリーを見つめる。
高級ブランドの値がはるアクセサリー。
ちっとも会いに来ない息子よりもしょっちゅうくる孫のような存在はとても可愛らしいものだったのだろう。いつか欲しいと言っていたアクセサリーを贈るのはよくわかる。
なぜ、夫は私に、孫にミレイさんに宛てたプレゼントを渡したのか。
それはよくわかった。めんどくさくなったんだろうな。
自分で言い出したのはいいが、用意をして義父の兄の家に行く、ミレイさんにプレゼントを渡すように頼む。これらの過程を考えてめんどくさくなったのだろう。
夫はプレゼントがどういうものなのか知っていたのだろうか。知っていたらきちんと渡したのだろうか、それとも。
なんてことを考えていたら夫が帰ってきた。
仕掛けるならばすぐにしなければ。
「おかえりなさい。今日お義母さんのところに行ってきたのだけど『ミレイちゃんに渡してくれたのかしら』って心配してたわ」
「そうか」
そっけない反応にこれは義母に渡しておいたって適当な嘘をつく気だな?と思ったが突っ込まないでおいた。
しかし、夫のこの返答で私の考えは固まってしまった。
他人への贈り物を私に平気で渡して嘘をつくような人間だ。もう信用することができない。
こういった理由で離婚することは難しいかもしれない、ならばせめて別居をしたい。
自然とため息がでた。
これからやることはたくさんあるから。
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