疑惑
「これ」
そう言われて渡されたのは高級ブランドのアクセサリーだった。
夫がこんな高価ですてきなものをくれるなんて!と感動したのも束の間だった。
「親父の遺産が入ってきたからな」
さっきまでの感動がしぼんでいく。わざわざ言わなくてもいいのに。
でも、ものに罪はない。そう思って気持ちを切り替える。
「ありがとう、あなた」
そういうと満足したようで上機嫌でお酒を飲み始めた。
ものに罪はないから、と思って箱から出して気づいた。
メッセージカードが入っている。
一体どうしたのだろうか。よくよく考えてみれば夫はプレゼントをこんなにオシャレな包装にするように頼む人ではない。今まで貰ったプレゼントは簡単な包装でしかなかった。メッセージカードも一緒になんてこともなかった。義父の遺産はそんな夫を変えるほどに多かったのか?いままで無頓着だったプレゼントにこんなにお金をかけるくらいに?
ここまで考えて不倫で別れた知人を思い出した。不倫相手へのプレゼントを間違って知人に渡してしまったことで不倫が発覚。紆余曲折あり、別れてしまった。もしかしてこの人も不倫相手のためにプレゼントを?不倫相手に用意していたものを誤って私に渡してしまった?
瞬時に悪い考えが頭を駆け巡る。
震える指でそっとメッセージカードを開ける。
『君がこの贈り物を気に入ってくれると嬉しい』
宛名はミレイ。送り主の名前は義父だった。
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