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ヴォルガドラ英雄記  作者: 夢現雛
プロローグ
1/1

大陸歴

 遥か遠い過去、中央大陸ベルゴッドでは小国が乱立し、国々はより莫大な財を、より広大な領土を求めて不毛な争いを繰り返していた。


 尽きることのない欲望、終わることのない争い。


 次第に人々は疲弊し、いつしかこの悠久とも思える闘争の時代に終止符が打たれることを望み始めた。


 そんな中、数ある小国の一つフェイブァーンで一人の英雄が誕生する。


 後世において救済王と呼ばれる男、ドゥーガン・ウォン・ギャーラシュである。


 彼はフェイブァーンの国王として数々の部下達に支えられながら、ついには中央大陸ベルゴッドの統一を成し遂げ、統一国家レイフェール盟連合をおこすに至る。


 人々は争いから解放され、名王ドゥーガンの名の下に平和を謳歌した。


 彼らはこの記念すべき年を大陸歴1年と定め、以来この暦はベルゴッド大陸で刻々と刻まれ続けている。


 しかしこの世に終わり無きものが存在せず、万物が時と共に腐り朽ちていくように、数百年という歳月をかけてレイフェール盟連合の政治中枢もまた、権力という美酒の魅力に取り憑かれた特権階級の者達によって徐々に病魔に蝕まれていった。


 民衆は腐敗した政治中枢に不満を抱き、国王に対する不信感は募る一方だった。


 そして大陸歴335年、第11代国王ラーガァル・ウォン・ギャーラシュは一人の男児を授かる。


 後に暗王の象徴として語り継がれることとなる盟連合最後の王、ペルポネ・ウォン・ギャーラシュである。


 彼は幼い頃から言動に知能の高さがうかがえ、人々はペルポネが建国の父ドゥーガンの名に恥じぬ賢君として、盟連合の中興の祖となることを期待した。


 しかし、父である11代国王が亡き後、王位を継いだペルポネはまるで人が変わったかの様に暗君としての道を歩み始めた。


 彼は些細なことで臣下を疑い処刑を繰り返した。


 暗君ペルポネの魔の手は部下達だけに留まらず、民衆にまで伸びた。


 秘密警察が設立され、僅かでも王に対して叛意ありと判断された者は次々と処刑されていった。その上、民衆には厳しい税が課され、苦しい生活を送る彼らとは対照的に王を中心とした一部貴族達は、贅を凝らした優雅な生活を送っていた。


 いったい何が賢王とまで期待された男をこうまで豹変させたのかは、今となっては永遠の謎だが、事実として彼は民衆に対して恐怖政治を敷き、自らの贅沢な暮らしの為に彼らに苦しい生活を強いた。


 数百年という時をかけて溜まった民衆の国王を中心とする上流階級に対する憎悪が、ペルポネという明らかな「悪」の出現により形になる。


 溜まりに溜まった民衆の不満が決壊し、溢れ出す。一人が声を上げ、周囲の者達も声を上げだし、遂には皆が反旗を翻す。


 各地で続々と起こる反乱に対して盟連合は苦戦を強いられた。


 大陸歴356年には王都サガンを含む3つの城を除く全ての城が陥落し、形勢が絶望的と悟ったペルポネ王が自刃したことにより、この内乱は王勢力の打倒という形で幕をとじた。


 さて、ペルポネという象徴的な悪を打倒し、暗闇の時代からの解放という悲願を達成した民衆はついに名王ドゥーガンの御代の再来、或いはその輝かしい時代すらも霞むような自由と希望に満ちた新たな時代を迎えることはかなったのだろうか。


 否である。長きに渡る内乱は大陸各地に深い傷跡を残した。


 その上、各地の反乱の統率者達がベルゴッド大陸の統治権を求めて覇を競い始めた。


 権力という美酒に酔いしれ、他者を踏み台にして自身の栄華を築こうとする彼らの姿は皮肉なことに彼らが悪と断じ、憎み、打倒したはずのペルポネ王そのものであった。


 かくして歴史は繰り返す。


 ベルゴッド大陸には小国が乱立し、不毛な争いが繰り広げられる。


 やがて時が経ち、国々が呑み呑まれてを繰り返し、大陸には5つの国が残る。


 大陸中央にはレバァルフ帝国、東にはフレーベル協商連合、北にはベジュラグ評議国、西にはノーモン法国、南にはガーリスベルグがそれぞれ位置する。


 そして大陸歴498年、レバァルフ帝国で一人の赤子が産声をあげる。


 その髪は燃えるように紅く、左右の瞳はそれぞれ異なる色を有していた。


 大陸は再び激動の時代を迎えようとしている。

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