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06.十五夜

満月は、自分には明るすぎる。

その、満ちて、何の過不足も無い有様が、自分には明るすぎるように思うのだ。


「またですか」

「どういう意味だ」


眉間に皺を寄せるザインを、クレアはため息をつきつつ眺めた。

数日前も、この道でザインに会っている。

あの時も月を見ていた時だった。


「別に意味はありません」


そう言い、立ち去ろうとしたが、ザインの声がそれを止める。


「今、手合わせ願えないか」


ひた、とザインと正面から向き合った。


「何のために」

「強い奴とは戦ってみたい。お前が出て行く前に、と思ってな」

「それだけですか。お断りします」


無下に断るクレアに、ザインは戦闘体制をとり走り寄った。

ただし、剣は抜いていない。

クレアは音もなくそれを避けた。


「お前は以前、女であることを捨てた、と言ったな」

「えぇ、申しました」


何故だ、とザインの目が問う。


「私は家事の一切が出来ません。剣を振るうことしか出来ない人間です」


そんな女が家庭の中に大人しく収まるわけがない。

そうクレアは言っているのだ。

冷たい目と頬には、迷いも苦悩も無いように見えた。


ただ…

そう、クレアは自分が女であろうが、男であろうが関係は無いのだ。

ただ、漠として国から国を渡り歩くだけである。

確固たる理由が自分には無い、ということを知っている。

しかし、ザインは違う。

彼には確固たる信念があり、その信念に基づき居を構え、国に与することなく兵をまとめ上げ戦う。

クレアには、ザインの持っているであろう、その信念が多少まぶしく感じられた。


「それが、手合わせの申し出と何か関係が?」

「いや、ただ聞いてみただけだ」


ザインもクレアも、男性論や女性論を唱えるつもりは毛頭無い。

ザインは、ただ、クレアと剣を交えてみたいだけだ。

そうすることで、クレアのことがわかる気がして…

クレアの興味が自分に向く気がして…

そうしたクレアへの執着にも似た思いには、未だに気が付いていない。


二人は結局、夜明けまで、剣を取れ、いやだ、という問答を繰り広げた。


満月は過不足の無い円。

それはそれで、確かに見事であると思う。

しかし、多少欠けてあっても、面白みはあると思える。


私は欠けたままであっても、今のところは構わない。

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