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12 鳥の視点で見てやろう

 マティッダの見ているものをアルパカタを通して他の四人が共有する。

 前へ前へと凄まじい速度で景色が流れて行く。

 真っ直ぐ進んで行く光景はともかく、脇では山々や木々やひょいとかすめる動物が原型を留めないでひたすら流れて行く。

 青い空に浮かぶ雲も常の長閑さは何処へやら、常に押し寄せてきては背後へと飛び去って行く。

 酔いそうだ、とビートやトイスはつぶやきつつもそれに付き合う。

 レンテはそれを見ながら、頭の中に叩き込んだ目的地への正確な方角や距離を並行して計算し、先導するマティッダに心話で微調整を加える。


『そろそろですよ、少し速度落として下さい』


 飛んで行く景色の速度が落ちて行く。


『ここ』

『――壁?』


 見えてきたのは、大きな壁だった。


『いいえ壁じゃない、筒? と言えばいいのかしら?』


 マティッダは瞬時にそこから視点を上方へと動かす。


『鳥の視点』

『ええそう。もう少し上がるわ』


 見下ろす格好で、そのまま高く高く視点が上がって行く。


『確かに筒……』


 アルパカタは思う。


『何だか北東の、冬の家に似てるな』


 ビートはやや弱々しくも感想を述べる。

 鳥の視界――上空から見下ろすそれは、石造りの壁に囲まれた場所だった。


『けどずいぶんと広いわね』


 その壁は幾つかの山すら含んでいる。


『こんなのがあったなら、報告が陛下に入っていてもおかしくはないはずだけど』

『その円内が、例の空白地帯とほぼ一致するんですけど』

『ほぼ?』


 アルパカタはレンテに問う。

 彼は一致したなら一致したと言うはずだ。「ほぼ」と付けるからには。


『資料にあった空白地帯とは微妙にずれてるんですよ。それも、円そのものが滑ったかの様に』

『資料の方が間違っているのじゃないの? 計測ミスとか』

『その辺りは』

『降りて中を見てみるわ』


 お願い、頼む、と他の四人はマティッダをうながす。

 壁を一望した彼女はある一点を目指して視線を下ろしだした。


『あの辺りに入り口らしいものがあるの』

『入り口?』


 そして今度はゆっくりとだが、降りて行く視点。

 さすがにそれにはビートがごめん、とばかりに接続を切った。


『落ちてくみたいで』


 それは確かにそうだった。

 鳥の急降下の視点なのだ。普段から様々な地を歩き、時には難所越えもしているだろうビートには、落ちる恐怖が実感できてしまうのだろう。


『あ』


 入り口――壁の門に当たる様なものが皆の視界に入ってくる。

 するとそこに一人の少女の姿が。


『人が居る?』


 アルパカタがそう言うと、マティッダは少女に視点を寄せて行く。

 ――と。

 少女が彼等の方を向いた――様に見えた。

 そしてその瞳がぎらりと。

 彼等の方に向かった時。


 ――視界から全てが消えた。

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