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11 空白地帯にまず飛ぶまえに

「この駒の間は私の名で出入り禁止にしておくから、君等は好きに出入りしてくれ。あ、必要なものに関しては、この盤上に手紙を置いてくれれば用意させておくよ」

「分かりました。ではとりあえず行っては来ますが、そのための用意が欲しいのですが」


 今にも飛び出しそうな男達を抑え、アルパカタはそう言った。


「とりあえず行くのはいいんですが、そのとりあえずがどれだけかかるか分からないですから、野営もすることになるでしょうし」

「おや、毎日この部屋まで移動するのでは駄目なのかな?」


 不思議そうな顔で皇帝はトイスに訊ねた。


「できますが…… やっぱりその場にじっくり腰を据えてですね」

「え、野営するの?」


 マティッダは素早くトイスの方を向いた。


「嫌よそれ。そんなこと私、したことないし」

「そう言えば今までのお願いはいつも日帰りだったしな」


 ふむ、と皇帝も大きく頷く。


「よし、野営の準備をしっかりさせよう」

「そっちなんですかあ」

「そんなこと言わないのマティ。貴女が居ないと何が起こってるかそもそも向こうについても分からないでしょ。貴女の力は凄く大事」

「そうそう、その力をしっかり発揮して、さっさと終わらせればいいだろ?」

「それはそうだけど……」

「え、さっさと終わらせたいんですか! こんな面白い依頼を!」


 皆で一斉にそう叫んだレンテの方を向いた。

 特にマティッダはレンテの襟を両手で引っ張り。


「貴方には子供が居ないからそんなこと言えるのよ…… ああもう、一日でも離れていたくないのに」

「……マティ、だったら時々俺が家に送ってやるからさ……」

「そうよマティ、それでともかくさくっと、さくっっっっと! 終わらせればいいだけの話でしょ?」


 トイスとアルパカタが口々になだめることで、ようやくマティッダは納得する。


「そうね、とっととそんな問題解決しましょう!」

「……そんな問題って、なあ……」


 背後で皇帝がぶつぶつとつぶやいているが、彼等は無視した。



 野営するにしてもどんな装備が必要かも分からない、とばかりに彼等はとりあえずの更にまたとりあえず、その地点に飛んでみた。


「……とりあえず、時差はあまり無いな」

「帝都より少し涼しい、と」

「少し頭が痛いわね……」

「ああそれは帝都より高い場所にあるからでしょう。アルパはずっと帝都だから」

「私はそうではないけど」

「その方がいいわ、とりあえずマティ、この先をざっと視て欲しいんだけど」 


 そうね、と言ってマティッダは目をつぶった。

 彼女の「視る」は目によるものではないのだ。


「方向は今向いてる側でいいの?」

「良いですよ」


 方位磁針と地図を持ったレンテとビードが頷く。


「それじゃ繋ぐわ」


 すると唐突に彼等の中にぐん、と風景が恐ろしい速度で流れてきた。

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