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22話 海戦

 出航された貿易船。


 ゆっくりとさざ波打たれながら、揺れる船の上で、港町よりも濃い潮風が顔を撫でる。

 ふと、上空を見ると、カモメが優雅に舞っていた。


 とても、のどかで美しい風景だ。


 だが、その一方で船内の様子は物々しい雰囲気に包まれていた。

 自分の他にも屈強な男たちが武器の手入れをしたり、船員と共にマストに昇って見張りをしている。

 その空気にあてられて、船員たちもみんなピリピリしているな。


 無理もない。

 いつどこで海の魔物が襲ってくるのかわからないのだ。

 僕と同じようにこの船を守るように雇われた冒険者だろう。僕自身親父さんから貰った剣の手入れに勤しんでいた。

 

 襲ってくる魔物とやらはクラーケンや大怪魚だとか、一向に手掛かりがないのだ。

 既にここは戦場……敵地と言っても良い。

 僕も彼らを見習い、常に船の周囲に気を配ろう。


「ふんふんふーん」


 そんな中でリズベルはのんびりと釣りに勤しんでいた。

 このマイペースぶりは無敵と呼ぶにふさわしい。


「だってそんなに硬くしてもしょうがないでしょ? そんな気を張っていたら、疲れちゃうよ」


 うっ。確かに一理ある。


「あ。ところで釣れた魚誰か調理してくれない? 誰か―いませんかー?」


 一理あるんだけど、君のペースに他の人まで巻き込むのはやめてくれませんかね。

やめて?

冒険者の皆さんが癇に障ったような顔でこっちを見てきてるから本当にやめて?


「おい坊主」


 そこへ一人の巨漢が声をかけてきた。

 背に大きな斧を担いだ日に焼けた肌の厳つい大男……ってあれ、この人。


「あ、あの時のおじさんですか?」

「ふん、覚えてたのか。まあ、どうでもいいがな」


 あのギルドの寄合所で会った時から、かなりの腕の持ち主だというのは僕でもわかっていたが、こうして冒険者としての空気を纏った彼は余計に頼もしく感じる。


「俺のことはいいんだ。それよりもあの小娘を何とかしろ。こちとら遊びじゃねえんだぞ。遠足気分なら今からでも船に飛び降りて泳いで帰るか、目的地に着くまで隅っこでガタガタ震えてな」


 無愛想で突き放したように言い放つ。

 その物言いに少しばかり言い返したくもあったが、こちらにも非があるため何も言えなかった。


「あんだとー! 釣った魚やんねーぞー!」


 だからリズベルさん、少し引っ込んでてください。それと、僕の後ろでシュッシュッと拳を放つような動作はやめてください。

 いい加減にしないと、僕が君に拳骨を放ちそうです。


「ふん、まぁいい。威勢の良い奴らは嫌いじゃあない。せいぜい俺たちの邪魔にならないように大人しくしてるんだな」


 鼻で笑いながら、その場を後にする。

 とりあえず喧嘩にならないで済んだようだ。


「はは。楽しそうですなぁ」


 そこへ恰幅の良い中年のおじさんがやってきた。僕らをこの船に誘った商人さんだ。


「それにして、もわざわざあなた自身まで乗り込まなくても良かったのでは?」

「いえいえ。今回の商談は私自身が向こうへ赴かなくてはならなかったのでね」


 どこまでも考えの読めない人だ。

 すると、商人さんはこちたの考えを察したようにニッと笑う。


「私はただ強欲なだけですよ。シンプルでしょう?」


 どこか釈然としない答えをしながら、彼は船内へと足を運んでいった。


 やがて僕も武器の手入れに戻ろうとしたのも束の間、ふと視界が霞んできた。


 ……違う。


 船の周りに霧が立ち込めてきたのだ。


「なんだこりゃ……」

「野郎ども、いつでも魔法を使えるように魔力を練っておけ」

「おい船員さんら、あんた等は船室に入ってろ。操作は俺らでやる」


 他の冒険者たちもそれぞれ武器を取り始める。

 僕も剣の柄に手を触れようとしたの瞬間、ドゴンという音と共に船に強い衝撃が襲う。


「な、なんだぁ⁉」

「振り落とされるぞぉ。しがみ付け!」


 船体は大きく揺れ、乗っていた僕らは船に必死にしがみ付く


 ……これはきたかな。


 その瞬間、僕の直感が当たった事を告げるように海からいくつもの大きな触手が飛び出てくる。

 人の大人サイズはあるそれらは船のマストや船首などに巻き付き、無理矢理にでも動きを押さえようと絡みついてくる。


「て、敵襲ー!」


 その時、冒険者の誰かが声を上げる。

 みると、既に船の両舷から人型のイカのような魔物が何匹も船に這い上がってくる。

 この巨大な魔物の眷属もとい子供だろう。


「ジュルジュルジュルルウ」

「う、うわぁ!」


 逃げ遅れていた商人のおじさんへと奇怪な鳴き声を上げて幽鬼の如く近付いていく、だがその寸前、イカを大男が手に持った戦斧で斬り飛ばす。


「アンタらはさっさと船の中に入ってろ!」

「は、はい……!」


 僕らも彼に倣ってイカたちを迎撃する。

 リズベルも両手に持ったナイフでイカたちを仕留める。

 僕も隣から襲い掛かるイカを剣で切り裂く。


 よし。コイツら思っていたよりも強くないぞ。


「フン。最低でも足手まといにはならないか」


 見ると、最初の奇襲で出鼻をくじかれていた他の冒険者たちも既に状況に対応して、順調にイカたちを撃退していった。

 さっきの斧の人なんて襲い来るイカを数匹丸ごと横からの一薙ぎで真っ二つにしていた。

 さすがに歴戦の冒険者揃いだ。

 

 だが、イカの魔物たちを粗方倒せたと思ったその時、船が大きく揺れる。


 見ると、船の動きを封じていた巨大なイカ……クラーケンの本体が海面から顔を出す。

 こいつが海難事故の原因か!


「ブオオオオオッ!」


 さっきよりもさらに多い触手が襲い来るも、僕らはなんとかそれを斬り捌いていく。


「ぐおおおおっ」


 足を取られたデカい人だが、その寸前リズベルが両手のナイフで触手を突き刺す。

 離すことはできなかったが、力が緩んだその瞬間を狙ってオジさんは斧で切断する。


「おじ様大丈夫?」

「お、おう……」


 リズベルが暢気に話しかけてくる。


「くっくっく。ねぇねぇ絡んだ相手に助けられてどんな気ぶ――ぐはっ」


 調子に乗りそうな所で僕は彼女の頭を思いきりチョップで叩いて黙らせる。


「野郎、次はこっちの番だぁ」

「くらえぇ!」


「ブゴォーー!」


 そんな馬鹿をやっていると、魔法攻撃の直撃を受けたクラーケンが悲鳴を上げていた。

 

 冒険者一党のどこかのパーティーたちが放った氷の氷柱による一撃だ。


 海の魔物といえど、海面から顔を出した状態で、そんな大質量の物理攻撃をまともに受けてしまえばひとたまりもないだろう。


「おお。やったか!」


 案の定、怯んでいるクラーケンを見ながら、皆が歓声を上げる。

 その中で僕は嫌な予感があった。


「待ってください。様子がおかしいです」


 クラーケンが弱っている中で霧が一層と濃くなってくる。


 それと同時に嫌な気配も濃くなっていくのだ。


 霧の奥から一艘の帆船が現れた。

 ……穴だらけの帆に朽ちた船体。

 船の周囲には鬼火が舞い、乗組員である骸骨スケルトンたちがゲラゲラと笑っている。

 間違いない。アンデッドの駆る幽霊船だ。


「キィハァーハハハハ!」


 その中で特に偉そうな……ボロボロの海軍将校の軍服を着た骸骨が愉快そうに笑っている。


「我が名はシーガー・スカルティアス三世! この幽霊船の船長にして三魔将メア様の一の側近であるぅ!」


 高らかに名乗りを上げるアンデッド。

 まさか最近の魔物による海難事故はこいつが絡んでいたのか?

 しかも三魔将の側近という事は幹部クラスか。厄介だな。


「貴様らはこれより我らがメアお嬢様へと捧げる供物なるのだぁ! 光栄に涙しろぉ!」


 カタカタと頭蓋を震わせながら、狂ったように笑いを上げるスケルトン。

 そいつが腕を上げるのを合図に、幽霊船の砲台が火を噴く。


「何をしている我が下僕よ。起きて戦えぃ!」


 さらにそのスケルトン……シーガは叫びながら、手に持った水晶を高く掲げると、それは紫色に怪しく光り始める。


 やがて、動きを鈍らせていたクラーケンはどこか夢遊病者のような動きで再び動き出した。

 あのクラーケンはあいつが操っていたのか。

 という事は先の海難事故もあいつらが黒幕か。


「キハハハハッ」

「クカカカカッ」


 見ると、幽霊船のスケルトンたちがロープを伝って、こちらに飛び移ってくる。


 応戦する冒険者たちとのぶつかり合いで船内は乱戦状態に突入した。


「なんか。面倒な事になっちゃったね。どうする?」


 リズベルが問うてくる。どうするも何も戦うしかないだろう。


 ふと、スケルトンの一体が僕の方へ襲ってきた。

 僕は体内の魔力を練り上げて全力で髑髏を殴り砕く。


 どこぞの骸骨の戦士に比べれば脆いもんだ。


「おお。アイツに続けぇ!」

「俺らも負けてられねぇなぁ!」


 すると、後ろの方でも他の冒険者も続いて、スケルトンたちを駆逐していく。


「ええい。大人しく海の藻屑と消えればよいものの……! 者どもかかれぇ!」


 シーガーは吐き捨てるように眼窩の奥の光で睨み付けてくる。


 再び号令と共に、今度は船の骸骨たちが一斉に襲い掛かってくる。

 僕は一回転しながら、剣を一閃して取り囲もうとしていた。スケルトンを全て斬り伏せる。


 シーガーといったか。

 あの幽霊船の船長がクラーケンを操っているのであれば奴だけは絶対にここで倒さねばならない。


「ここは任せます」

「お、おい!」


 斧の人の制止を振り切り、僕は船の外へ飛び出す。


 そのままなら海面に真っ逆さまだが、僕は風の魔法で足場を作り、それを飛び伝って、幽霊船の甲板に無事に到着した。


 本来の風魔法の使い手なら、普通に空を飛ぶことも可能だが、今の付け焼刃の僕ではこれが限界だ。


「なんだ貴様、たった一人で我らに戦おうとは……もしや自殺志願者かぁ?」


 シーガーとかいうスケルトンのアンデッドは小馬鹿にしたように笑う。

 おそらく、自分の圧倒的優位を疑っていないんだろう。なんにせよ付け入る隙があるのはありがたい。


 僕は改めてシーガーと相対してみる。

 魔王軍の幹部が相手か。

 ヴェロニカの時とはわけが違う。

 果たして今の状態で戦えるだろうか?


「やっほぉ! やっと追いついたよぉ!」

「リズベル!」


 間合いを図っていると、いつの間にかリズベルが上から降りてきた。

 どうやら、後方からスケルトンが使っていたロープを応用して、ぶら下がって滑走してきたようだ。

 なんでこんな所までついてきちゃうんだよ。危ないだろ!


「むぅ。私を足手まといだと思ってない? ジャーンこれを見よ!」


 彼女の手の中には導火線の付いた黒い球体があった。

 見るからに怪しいな……。


「ふふっ。旅に出る前におじいちゃんの研究室からいくつか拝借してきたんだよねぇ」


 リズベルは導火線に火をつけて、そのまま勢いをつけて投げようとする。


「いっせぇーの……おぉっと⁉」


 寸前。船の揺れに揺られて、バランスを崩して、あらぬ方向へと投げ飛ばしてしまう。

 爆弾はそのまま海面にポチャンと落ちる。


 ドッゴオオオオォォォォオオオオオオオオオオオンッ!


 直後、凄まじい爆発音と共に水柱が立ち上る。


「ど、どうよ‥‥‥」

「やり過ぎだ。バカ!」


 ここまでもの威力だとは本人も思ってなかったらしい。

 震えながら涙目で語るリズベルを僕は拳骨をお見舞いする。


 なんだよ、あの威力。

 下手すればこっちの船も沈むんですけど!


「ところでもう一つの爆弾どうしよう?」

「まだあんの⁉」


 この子、今までこんな危険物を複数持って旅してたのか!

 今更ながら、こっちも震えそうになる。


「えぇい。何をしておる。あの小娘を捕えろぉ! 船内の者らは船を先に落とすのに集中しろぉ!」


 一方で、さっきの爆発で泡をくったシーガーの命令を受けて、再び幽霊船の砲撃が開始される。


 まずい。


 このままでは先に商船の方が先に落とされる。


「そうはいくかぁ!」


 見ると、大斧の人も含めた冒険者の人たちが掛け声と共にから鎖付きの鏃を振り回している。


「どっせーい!」


 彼らの手によって大きく投げられたそれは幽霊船のマストに勢いよく巻き付いた。

 

 クラーケンに引っ張られていた商船とも繋がってしまった幽霊船は当然共に引っ張られる。


 船体がバランスを傾かせる。


「誰かぁ錨を外せぇ。ええい。き、貴様らぁ絶対に許さんぞぉ!」


 シーガーは慌ててスケルトンを率いて、巻き付いた錨を外している。

 それが隙となった。

 リズベルは背に持っていた弓矢をつがえて、シーガーの右手の水晶に狙いをつける。


「ノオオオオオオオオオ! メアお嬢様からたまわった宝珠がぁあああああ!」


 放たれた彼女の矢は見事に水晶に命中して砕ける。


「ブゴォ……?」


 するとクラーケンの動きが弱まったと思ったら、完全に動きを停止させる。


「……ブゴォオオオオオオッ!」


 やがて、クラーケンは再び動き出し、今度は幽霊船の方に攻撃を始める。


「ギャアア! や、やめろぉ! 言う事を‥‥‥言う事を聞かんかぁ!」


 白骨の船長は絶叫する。


 クラーケンは何度も触手を叩きつけて船体を攻撃していく。元々はボロ船なのだから脆いものだ。


 やはり、さっきの水晶で操っていたのか。

 以前のゴブリンとサラマンダーと同じだ。クラーケンは無理矢理操られていた分、その恨みを果たそうというのだろう。


 ついでに言うと、この幽霊船がボロ船で沈めやすそうだったと言うのもあるかも。

 もっとも獲物は骨だけだろうけど。

 

 時間がかかっても、ちゃんと一から調教しておくんだったな。


「うぬぅ。許さん。許さんぞぉ! 生者ごときが死を超越した我らに逆らうとは生意気な!」

「成仏し損ねただけじゃん」

「貴様ー!」


 リズベルのペースに飲まれるシーガー。

 いいぞ。そのままソイツを引き付けてくれ。


 その間に僕はスケルトンたちを押しのけて、船室への扉を開く。

 僕はそちらに向けて、さっきリズベルから没収した。爆弾を点火させて、投げ込む。


 簡易的な風魔法で長い飛距離を飛んでいくそれはスケルトンたちの頭上を通り過ぎていく。


「な、なんだ? 貴様何をやって……はっ!」


 リズベルにおちょくられていたシーガーはようやくこちらに気付いたようだ。

 

 ドッゴォオオオオオオオオオンッ!


 やがて本日二度目の大爆発。


 思わず正気に戻っていたクラーケンも驚いて、船から大きく距離を取る。


 あっという間に船体の半分を失った幽霊船は大きく傾くが、なんとか沈まぬように維持していた。

 でも、この損傷では時間の問題だろう。


「どうよ! 私ったらまた大活躍!」


 合流したリズベルが照れ臭そうに笑っている。

 なんでも、向こうの冒険者たちが巻きつけた錨を外していたらしい。


 ……とりあえず今回は本当によくやってくれた。

 爆弾もまあ役には立ったし、あの骸骨を引きつけてくれてありがとう。


 そう素直に礼を言ったら、一瞬ポカンとしていたリズベルがやがてみるみる頬を赤くしていく。


「えっ。ナニコレ。普通に礼を言われるとか……雨でも降るのかな?」


 なんだ、その反応。

 釈然としないなら、君はもう少し日々の言動を改めなさい。


 そこへ一人のスケルトンが降り立つ。シーガーだ。


「おのれぇっ! せめて貴様だけでもぉ!」


 所々服に火が燃え移っているが、アンデッドであるシーガーには関係ないだろう。


 骸骨の船長は剣を抜いて、最後の意地でこちらに戦いを挑んでくる。


「覚悟ぉ!」


 僕はそれを真っ向から受ける。

 さすがに幹部だけあって、剣の腕はそこらの自我が希薄なスケルトン……いや、A級冒険者よりも上だ。

 そのまま鍔迫り合いが始まるが、僕は力だけで押し返す。

 相手は骨の身体であるため体重が軽い、膂力だけならこちらに分がある。


「チッ。ならば喰らえぃ!」


 シーガーは口をパカリと開いて、そこから瘴気のガスを吐き出してきた。

 普通の人間がまともに浴びたら一瞬で昏倒するレベルのものだ。


 僕は充分に距離を取り、剣の風で斬り払う。

 上級アンデッドの能力を熟知してよかった。


 だが、よく見ると、払った剣身がどんどん錆びていってる。

 ……喰らったら、昏倒どころじゃ済まなさそうだ。


「小僧、隙を見せたなぁ!」


 思わず身震いしていると、そこへシーガーがさらに斬りかかる。


「そう来ると思った!」

「何ィ⁉」


 僕はそれを何とかかいくぐり、カウンターで渾身の突きを繰り出す。


「ガアアアアアアッ!」


 心臓の部分を貫通させるが、こいつはアンデッドだ。この程度では死にはしないだろう。だが、彼らは現世に己を縛り付けるための核という者が存在する。


 魔力を流し、こいつの身体に疑似神経を作り出す。


 見つけた。


 僕はその場所へ向けて、貫いた剣をシーガーの身体を斜め下に切り裂いた。


「メ……アお嬢さまぁ……」


 誰かへ向けた最後の言葉とともにシーガーの身体は呆気なく崩れ落ちた。


「勝った……」


 単独で……今の自分の力だけで、僕は魔王軍の幹部に勝利することができた。


 思わず力が抜けて、腰を落とす。

 さすがに今回は意識を失うわけにはいかない。


 まだ向こうにはクラーケンがいるのだ。

 さすがにアイツとまで戦う余裕はない。


 この幽霊船を破壊し尽くすまでに脱出せねばならない。


「立てる?」

「なんとか」


 そこをリズベルに肩を貸してもらい、僕は何とか立ち上がる。

 船のロープに身体を縛らせて、そのまま僕らは商船の方へ戻る。


「おい。お前ら無事か⁉」


 向こうの船も戦いが終わったのか。斧の人が手を振りながら、駆け寄ってくる。


 こうして僕らは船の戦いを終えた。


 以降は海の魔物の襲撃にあう事はなく、ようやく陸が見えてきたのはその数日後の事だった。

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