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輪廻転生は甘くない! ~自殺先は地獄です~  作者: 二神 秀
CHAPTER.1 地獄のはじまり
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§ 1-8 生まれ変わるための儀式



 神殿から伸びる唯一の道は、大雑把にき詰められた石畳で、その道を歩く彼女の後ろを無言でついていく。その際、周りをよく見渡すと、この周辺は神殿を中心に半径1km程度の円状の断崖絶壁に囲まれているのが解かる。崖は上るなど到底できないほど切り立っている。


 しばらく歩き続け、一本道が辿りついた先には1つの扉があった。扉は古びた鉄格子てつごうしで、かなり錆びついた頼りない作りをしている。その横には、神殿にあったのと同じような石碑が建っている。


「まずは、これを読んでみて」


「あぁ」


 うながされるままに石碑に視線を落とす。



【 命の価値を示したいなら、この扉を開き苦難に立ち向かえ 】



 どうやら、ここから出るには、この扉の先に進むしかないようだ。


 どうやらここが目的地のようなので、彼女に尋ねてみる。


「そろそろ、いろいろ聞きたいんだど、いいかな?」


「えぇ。でも私が知ってることも、そんなに多くないけどね」


 石碑の傍の岩場に腰を掛けて話し始める。


「……まずはここはどこなんだ? 最初の石碑には『地獄にようこそ』なんて書いてあったけど」


「どこかはわからない……。でも、地獄と言われても、もう疑わないわ」


「……さっきの化け物たちは?」


「あの牛頭うしあたまたちは、毎日、夕方の鐘がなるとね、ここを囲んでいる壁にある扉から出てくるの。そして、ここにいる全員を殺したら帰っていく……。1人残らずね」


「毎日!? それに殺され続けるって……」


「そう、毎日。まぁ、私がここに来たのは7日前なんだけど。奴らに殺されると、夜になって、なぜか無傷で生き返るの」


「きみは7回も、あの恐怖と痛みを……」


「そう……。いくら抵抗しても、奴らには勝てない……。何度殺されても、あの痛みには慣れない……」


 彼女は淡々と語るが、足は微かに震えている。


「なんで、他の者は何も抵抗しないんだ?」


「……すべてをあきらめてるから」


「諦めてる?」


「そう……。あなたも自殺したんでしょ?」


「! …………あなた『も』ってことは、きみも、なのか?」


「そうよ。ここにいる全員、自殺者みたい。書いてあったでしょ? 『自ら命を絶った者』って。ここにいるのは、おそらく全員、自殺した人。もっと言うと、みんな学生……」


 確かにおれが見かけたのは、みんな小・中・高校生だった。


「なんで学生だけなんだ?」


「さぁ。それは私にも解からない。けど、自殺する学生が、あんな化け物に抵抗しようと思う? 何もできないで、ただただ毎日怯おびえながら、あの苦痛を受けるのよ……。どう? 地獄でしょ?」


 正直驚くが、合点がてんもいく。そして、殺され続けたらどうなるのかも最初の石碑の内容から朧げにだが推測できる。


「……そのまま何度も殺され続けると、人じゃない生き物に生まれ変わる、ということか……」


「おそらくね。私が来てから7日の間でも、何人か居なくなった……。いつも同じところに座り込んでた男の子が、気づいたら居なくなってた……」


 石碑にあった『何も感じない生き物』。それが、魚だろうが、虫だろうが、植物だろうが、それでもいいのではないかとも思う。それを望んで、ビルの屋上から飛び降りたのだから……。


「感情を無くさせてから、生まれ変わらせるのでしょうね……。まるで儀式ね。でも、あなたは違う」


「……どういうこと? 同じだよ……」


「あの化け物に立ち向かったのなんて、あなたが初めてよ。角まで折っちゃうだから」


 そう言われると確かにそうだ。なんで俺は、あのとき戦ったのだろう……。倒れてた女子を見て、昔のことを思い出し、気がついたら怒りのままに刀を振るっていた。


「その力を見込んで、お願いがあるの!」


「……あれはたまたまだよ。期待されても困る」


「たまたまでもなんでも、あなたの力があれば、先に進めるかもしれない。あの村の先に……」


「村?」


「そう。この扉の先よ。私はどうしても先に進みたいの!」


 彼女が指し示した鉄格子の扉の先は洞窟になっており、薄暗い空間が侵入者を拒絶するような、はたまた、無知な蛮勇をいざなっているような異様な空気を漂わせていた。



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