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注目を浴びるのは必至 (3)


 見つかってしまったが、ウィルお兄様に笑いかけられただけだ。このままローザフィア様の所に行くのだろう。って何で彼らはこっちに足を向けるの。ローザフィア様は反対側!般若の顔で私を睨んでいますけどね!!


「ティア。」


 ああ駄目だ、逃げられない。皇太子殿下に声をかけられてしまっては終わりだ。愛称で呼ぶなんて、親密さを隠す気は全くないようだ。諦めの境地に達して若干遠い目をしつつカーテシーでお迎えする。


 仕方ない、きっと今回は家柄順だったのだ。皇后陛下も初参加の私に配慮してくださったのだろう。


「ご機嫌麗しゅう。皇太子殿下、第二皇子殿下、そしてお兄様にレオンハルト様も。お声がけくださり感謝致します。」


「ああ。ティア、漸く公式の場で会うことができたな。何か困ったことはないか?そなたは皇室の身内も同然だ。遠慮なく言ってくれ。」


「いいえ、十分に楽しませて頂いておりますわ。」


 ローザフィア様の憎悪の視線が痛いです。心中で呟きつつも声に出して言えるはずもなく、淑やかに微笑んでおく。

 わざわざ皇室の身内なんて強調しているのは、私を丁重に扱うようにという他のご令嬢への意思表示なのだろうか。ウィルお兄様に負けないくらいの心配性だ。


「そうか、よかった。」


 慈愛の眼差しで私に笑いかけるルークお兄様に、多くの令嬢が魅了されている。笑顔と言っても普段私に見せるような柔らかいものではなく、軽く口角を上げただけではあったが、破壊力は抜群だったようだ。


 幸い頭を撫でられたりすることはなく、最低限の注目で済んだことにほっと胸を撫で下ろす。ウィルお兄様もまた後で、と去っていったのでありがたい。やはり周りに配慮してくれているのだろう。彼らがローザフィア様のもとに向かうのを確認し、こっそり安堵の溜め息を吐いた。


 そのまま様子を窺っていると、ローザフィア様は彼らと挨拶を交わした後、必死に話しかけながら近付こうとしているのが見える。会話を引き延ばそうとしているのだろう。


 だがルークお兄様の態度はどこか冷たくよそよそしい。やはりゲームと同じで仲は良くないのだろうか。といっても傍目に見てそれが分かるのは一緒にいる3人と私だけで、周りにはいつもの皇太子殿下としか映らないらしく、頬を紅潮させながらうっとりと見つめている。


 ディアナ様やユリア様、リリー様も彼らに熱い視線を送りつつ、開けていた距離を詰めて再び4人で集まった。


「私、皇太子殿下をこんな間近で拝見したのは初めてです。殿下はあまり表情を変えない方だと聞いておりましたけれど、とてもお優しい目をなさっていましたわ。やはりミーティア様は殿下にとって特別ですのね。」


 ディアナ様のその言葉にヒヤッとしたが、彼女の声に嫌味の色や嫉妬は感じない。


 実は先程からローザフィア様以外にも嫉妬や敵意の視線が突き刺さってくるので警戒せざるを得ないが、彼女とは今のところは良い関係を築けそうだと思っていいのだろうか。彼女は十分に皇太子妃を狙える身分だ。私やローザフィア様をライバル認定していてもおかしくはない。穏やかに接してくれる彼女に疑いの目を向けるのは心苦しいが、完全に安心はできない。


 ローザフィア様や今後登場するヒロインはともかく、妹分である私をライバル視しても意味がないのだが。皇帝陛下も私を候補に入れるつもりはないようなので、周囲の反応はお門違いだ……と言いたいが、妹分であること自体が嫉妬の対象なのだろう。


「幼い頃から知っている親戚だから気安いのでしょう。もうひとりのお兄様のようなものです。」


 それでも恋のライバルよりは妹として目をかけられていると思われる方がマシだろう。自分は無害な妹ですよーとアピールしておく。


「素敵なお兄様がお二人もいらっしゃるなんて、本当に羨ましいです。率直な話としてお聞きしたいのですが、ミーティア様はどんな殿方がタイプなのですか?それとももう決められた方がいらっしゃるとか。ミーティア様ならどんな方でも選り取り見取りでございましょう?」


 ユリア様はずずいっと前のめりになりながら、期待に満ちた眼差しで私を見つめてくる。推しでいうならルークお兄様ともうひとりの攻略対象者だ。しかし変な噂になるのも困るため、具体的な人物を挙げることはできない。狙っていると思われるのは困る。


 あと、そもそも私は攻略対象者以外の年の近い男性を全く知らないのだ。抽象的な人物像を答えるのが無難だろうが、それが広まるのも何だか恥ずかしい。


「い、いえ。私には決められた方など……。恋に憧れてはいますが、具体的なことはまだ何も考えておりませんの。身内以外の男性と出会う機会もあまりありませんし、そういうことは時期を見てからでも遅くないと思っておりますわ。」


 嘘ではない。推しはいても、付き合いたいならこんな男性とはっきり考えているわけではない。

 今はまだ攻略対象者に恋をしてはならないし、学園に入らなければ他の出会いもないのだ。だからこそ今は自分磨きに専念し、妹キャラ脱却だけを目標としている。まずそこから抜け出さないと好きな人ができても叶う気がしない。


「まあ、そうなのですか!ふふ、でしたらうちの兄にもチャンスはありますわね。ミーティア様、是非今度我が家のお茶会にいらしてくださいな。」


「あら、ずるいですわ。それなら我が家にもおいでください。自慢の美味しいスイーツをお出し致しますので、是非ご兄妹で――」


「では我が侯爵家では薔薇園をご覧になりませんか?私の兄は植物に詳しいので、案内役としてミーティア様にご挨拶を――」


 しまった。こういうのを隙を見せるというのだろうか。たとえ内心で別の思惑があったとしても、好意的に投げられた言葉を避けるのは私には難しい。悪意とはっきり分かるならば言い返せないまでも流すくらいはできるのに。


 いやしかし、元々貴族のお茶会に参加したいとは思っていたのだ。現時点で男性を紹介されるのは困るが、招待くらいは受けておくべきだろうか。公爵家と懇意にしている家ならばそれもいいのかもしれない。


「そ、そうね――『ごめんね、貴女達のご家族をティアへ紹介するのはまた今度にしてもらえるかな?』」


「……っ!」


「「「きゃーー!!」」」


 機会がありましたら是非にと続けようとしたところで、腕をぐいっと柔らかい力で引き寄せられた。ぽすっと誰かの胸に背中が当たり警戒で身を強張らせてしまったが、続けて聞こえてきた声と台詞で正体が分かり、ほっと力を抜く。


「ティアを取られてしまうのは僕が寂しいからね。」


「ウィルお兄様。」


 これでもかなり抑えているのだろう。言っていることはシスコンのそれだが、口調は随分柔らかい。突然現れたお兄様に彼女達は赤面して固まってしまっている。顔だけ振り向いてお兄様の顔を覗くと、目を眇めてにこにこと笑っていた。これは有無を言わせない怖い笑顔だ。台詞に毒が入っていないだけマシだが。


「ということで、少しティアを借りていってもいいかな?最近会えてなかったから、兄妹水入らずで話したいことがあるんだ。」


「「「は、はいぃ!」」」


 目をハートにしてそれしか言えない様子の彼女達を放置して、お兄様は私の腕を引いて場所を移動する。ユリア様以外もお兄様の笑顔にはやはり弱いらしい。私は彼女達とは対照的に青ざめた表情で、ドナドナされる子牛の気分で大人しく引き摺られていった。


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