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注目を浴びるのは必至 (2)

「ですから私達、ほっとしておりますの。ミーティア様は皇太子殿下の覚えがめでたいお方。私共の中心になると言ってもおかしくありませんわ。それにあの麗しのウィルフリード様がそれは溺愛なさっているとか。」


 派閥を作るつもりはないです。ごめんなさい。人を率いるなんて能力不足に違いない。

 ユリア様はウィルお兄様推しなのですね。ほう……っと顔を赤くして目を潤ませながら手を頬に当てている。まさに恋する乙女な様子でとても可愛い。しかしウィルお兄様のシスコン度合いは知っているのだろうか。彼女の夢が壊れなければいいのだが。


「第二皇子殿下とも幼馴染みで親しいご様子だとお聞きしましてよ。殿下は複雑なお立場ではありますが、笑顔がとてもお可愛らしい方ですわよね。ちょっとやんちゃそうな所もまた素敵ですわ。」


 リリー様はアル推し?アルがそうやって好意的に見られているのは嬉しい。アルは口は悪いし意地悪な所もあるけれど、本当は世話焼きで優しいのだ。兄っぽくもあるし、弟属性でもある。


 それからも暫く皆から賛辞を受け続けて疲労困憊だったが、漸くそれも落ち着き今年の流行やドレスの話に移っていった。フライハルト商会の話題も出たためヒヤヒヤしつつも、久しぶりの女子トークに気分が高揚していく。


 園遊会も後半になるとさすがに大勢に囲まれることもなくなり、皆それぞれ少人数グループを作って思い思いに過ごしている。私も途中で皇后陛下に呼ばれてお話させて頂き、その後は公爵家に関わりのないご令嬢とも挨拶を交わしていた。


 ローザフィア様は時折取り巻き方と一緒にこちらを不快そうにじっと睨んできたり、皇后陛下と長く歓談して勝ち誇った顔で嘲笑を浮かべていたりはしたが、直接お話することはなかった。

 本来であれば挨拶をした方が良いのかもしれないが、私と彼女だとどちらが先に声をかけに行くべきなのか微妙なのだ。基本こういう場では身分の低い方が自ら挨拶しに行くのがマナー。(高位からが駄目という訳ではないし、あまりに身分が違いすぎると仲介者なしでは逆に失礼になる)


 自分で言うのもなんだが私は帝国一の公爵家の令嬢で、元皇女様の孫。ローザフィア様は2番手の家柄ではあるが、皇后陛下の姪で皇太子殿下の婚約者候補。家柄と血筋と現在の力関係を全て掛け合わせると、どちらが上とも言えない結果になる。もちろん彼女がこのまま皇太子妃になった場合はあちらがはっきり上なのだが。


 従ってこのような大勢の前で私から挨拶しに行くと、我が公爵家の方が下だと認めたという風に周りから受け取られる恐れがあるのだ。私個人としては正直どちらが上でもよいのだが、最初に挨拶してくれた我が家に縁のあるご令嬢方のことを考えるとそうも言っていられない。社交界での立場のバランス取りは非常に面倒な上デリケートだ。ローザフィア様から来ることもまずないだろう。挨拶もせず絡んでくるかもしれないと身構えていたが、さすがに皇后陛下主催の場、しかも死角すらないようなオープンな庭園ではそれもないようだ。


 結果的にお互い意識しながらも近づくことは一切なく、周りもそれが分かっているためさりげなく気を遣ってくれている。ディアナ様達と再び合流し、これならなんとか平和に終われそうだと気を抜いていたときだった。「きゃー!!」と女性特有の甲高い歓声が、会場入り口から波紋が広がるように奥へ奥へと段々近づいてきたのは。


 あまりの勢いと騒ぎに唖然としていると、その波紋と合わせるように会場奥の皇后陛下までの道がざっと開けていく。そこで私はようやく誰か高貴な人物がこの場にやってきたのだと気づく。その事実に戦々恐々としつつ開いた道の先を覗くと、言わずもがな、そこにはこの場の視線を全てかっさらいながら進む4名の美形の姿があった。こんなサプライズいらない。


「ま、まさかこの場にいらっしゃるなんて!」


 ディアナ様の目線の先には一際目立っているロイヤルブルーの髪を持つお方。ディアナ様はルークお兄様推しだったのか。穏やかだった表情が一変して頬を真っ赤に染めており、興奮を隠せない様子で倒れんばかりになっている。分かる。慣れていなければ無表情でも腰が抜けそうになるくらい色気過多で格好良いよね。


「ウィ、ウィルフリード様!なんて素敵な微笑みかしら……。」


 ユリア様、ウィルお兄様が素敵なのは否定しませんが騙されてはいけません。あれはご機嫌斜めな笑顔です。多分視線が鬱陶しいのでしょう。彼女の目からはお兄様のバックにキラキラが見えるのでしょうが、私からは真っ黒です。お兄様を穏やかだと思っていた昔の私どこ行った。


「アルドリック殿下の不機嫌そうなお顔もまたお可愛らしいですわ……。」


 それも分かる。ぶすっとしたお顔も憎めない愛嬌があるのよね。でもこの場でその表情はまずいのではないかしら。きっと無理矢理連れてこられたのだろうな。それにしてもリリー様、何だか獰猛な目つきじゃありませんか。少し怖い。あ、アルが身震いしている。


 この3人はそれぞれの推しに夢中で言及していないが、もちろんレオン様への賛辞を向けているご令嬢もちらほらいる。今日初めて彼を見たという人も多いらしく、「あの素敵な殿方は一体どなた?」とか「あのがっしりとした騎士様に抱き締めて貰いたいですわ……。」と言った声も聞こえてくる。

 レオン様は私のタイプではないが、逞しい男性にぎゅっとして貰うのは確かに憧れるかもしれない。そんな恥ずかしいこと口が裂けても言えないけど。


 4人はまず皇后陛下のもとへ行き、それぞれ挨拶を交わしているようだ。私はその間にゆっくりと後退していき、さっとディアナ様達の後ろに隠れた。きっとこの後色々回ったり囲まれたりするのだろうが、見つかれば絡まないといけないのは分かりきっている。いつもの癖がお互いに出ないとも限らない。

 私が皇太子殿下と親しいのはすでに知られていることだが、公式の場でわざわざ見せつける必要もないはずだ。彼らが参加することを事前に知っていたらウィルお兄様に釘を刺しておけたのに。


「皆様、彼らは本日のサプライズゲストとしてお呼びしましたの。デビュタント前の貴女方は普段会う事も少ないでしょうけれど、今後学園で先輩後輩になるのですもの。是非この機会に交流してもらいたいわ。」


 彼らと挨拶を終えたらしい陛下が会場中にそう告げた瞬間、ご令嬢方の目の色が変わった気がした。陛下はさあどうぞと言わんばかりの良い笑みで促すが、この場にいるのは高位貴族や有力貴族の令嬢ばかり。さすがにいきなり押し寄せる真似はせず、まずは彼らの動向を窺っているようだ。


 そして彼らはといえば、きょろきょろと誰かを探すような素振りを見せる。散り散りになる様子もないとすると、その誰かに一先ず全員で挨拶してから解散と決めてあったのだろう。特別ゲストが主催者→主賓の順で挨拶をするのはよくあるマナーらしい。とはいえ彼らの中心はこの場の誰より高貴なお方だ。それに則る必要はないと思うのだけど。……ん?主賓??


 まずい。こめかみからたらりと一筋の汗が流れた。この場で主賓と言えそうな身分の令嬢はふたり。当然、公爵令嬢であるローザフィア様と私だ。


 嫌な予感がして思わず先程よりもっと後退りそうになる。しかし今私はディアナ様達を盾にしているのだ。これ以上下がると逆に見つかってしまうだろう。

 いや、皇太子殿下が彼らの中心なのだ。となると探しているのは婚約者候補であるローザフィア様であるはずだ。マナーに則る必要のない殿下が自ら出向いて最初に声をかけるということは即ち、そのご令嬢をこの中で一番重んじているということなのだから。主賓の扱いは主催者の意向も加味されるだろうが、それなら尚更姪である彼女だろう。


 ほら、ローザフィア様が満面の笑みで出迎える準備をしているじゃないか。2番目ならば声をかけられてもそう目立たない。


 私が冷や汗をかきながらも必死でそう自分を落ち着かせている間に、彼らの様子に気づいたご令嬢方がさっと動き始める。彼らとローザフィア様の間にいたご令嬢と……私の周りにいたご令嬢も。

 おそらく皆もどちらか判断しかねているのだろう。気持ちは分かるが、隠していてほしかった。私を見つけたウィルお兄様の蕩けた笑顔ったらない。また奇声がどこからともなく上がった。私の近くにいるユリア様なんて崩れ落ちそうになったところをリリー様に支えられている。

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