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この世界の魔法

 ウィルお兄様が屋敷にいなくて寂しい。お兄様に心配をかけないために、成長を見せたい。私も将来安心して学園生活に臨みたい――。


 お父様にそれらを告げた結果、あっさりと納得して家庭教師との勉強時間を増やし、その内容のレベルを上げることを認めてくれた。


 ほとんどの科目は今までの内容を補完しつつ、より高度なものへと変化することになったが、魔法学だけは別だった。



 ミーティアは魔法のきらきらした部分が好きだった。

 蕾だった花が開花する土魔法。夏には涼しいそよ風が出せる風魔法。暗い場所でも明かりがつく光魔法。そして魔力が動物へと変化する伝達魔法。


 そういう使ってみたい魔法の実践ばかりに夢中になり、座学や興味のない魔法はかなりおろそかだったのだ。


 そのため座学を基礎からやり直すことになった。



 魔法とは、火・水・風・土・光の5大属性と、無属性に分けられる。


 星眼・グラデーション・オッドアイ(特殊眼)を持つ者はその全てが使えるが、持たないものは1、2つの属性と無属性しか使えない。


 だがそもそも人の持つ魔力は誰であっても無属性。


 特殊眼を持つ者、持たない者。両者の違いは体質だ。魔力は人の体を通ることで、その体に合った属性の変化を起こす。つまり特殊眼を持つ者は体が全属性に対応していて、持たない者は限られた属性にしか対応していない。



 特殊眼を持つ者はほんの一握り。結果として発展していったのが魔道具と無属性魔法である。



 5大属性の魔道具は、無属性の魔力を特定の属性に変化させるように作られている。


 例えばコンロ。無属性の魔力に反応し、それを火に変える。無属性のエネルギーを持つ魔石を組み込んで使用する事が多い。


 属性魔法が使える者は魔道具なしで同じ事象を起こせるが、媒介を通すか否かで魔力消費が全然違うため、魔道具で事足りる魔法についてはあまり使わない。



 次に無属性魔法。5大属性以外と分類され、空間魔法や伝達魔法であっても無属性と呼ぶ。


 高度な魔法だと防音や収納などもできて生活に便利なので、大体皆こちらを特訓する。しかしこれらは魔力の大きさと技術が物を言う。


 例えば収納魔法。魔力が大きければ、何もない空間に収納することが可能。しかしこれは魔力も技術もかなりのレベルでなければいけない。



 そこで目をつけたのが、やはり魔道具。

 無属性の魔道具は一般的に、生活道具から作り替えることが多い。


 収納魔法の場合、バッグやケース、大きい物で馬車などがある。そこに圧縮等の魔法陣を組み込むことで収納魔法が可能になる。


 使用頻度が高いと持ち歩くデメリットもあるため、無属性魔法については魔道具ばかりが推奨されるわけではない。



 以上が魔法についての基礎知識である。


 魔力が安定する10歳から座学、魔力操作訓練、魔力量強化と平行して属性魔法使用の順で行っていく。それがある程度可能になってから無属性魔法の練習だ。


 そして15歳で学園に入った後、やっと魔道具作成と研究に取りかかれるのである。


 

 ミーティアは13歳時点、座学はほどほどに魔力操作訓練を終えた後、魔力強化をとばして属性魔法へと移行していた。


 いくら魔力が大きかろうと全属性対応していようと、イメージが肝心のそれらは修得に時間がかかる。10歳で伝達魔法を使用できた皇太子が特別すぎるのだ。


 私は座学をやり直した後、魔力強化訓練を行おうとしたが家庭教師の先生に止められてしまった。


「通常の魔力強化訓練は魔力消費や魔力負荷によって行いますが、特殊眼を持つ方は魔力量が高いので、現在ミーティア様が使用できる魔法では強化できるほどの消費になりません。それに連続使用や体に負荷をかけるなどの危険行為はさせるなと、ウィルフリード様にそれはそれは強く止められております。ですので、魔力強化ではなく魔力操作訓練の延長として、コントロールを極めて無駄な魔力消費をなくすことを重点的に訓練致しましょう。」


 なるほど、だからミーティアが魔力強化をとばしていても何も言われなかったのか。


 それにしてもウィルお兄様。魔法学のやり直しをお願いしたのはお兄様の入寮後なのに、いつの間にそんな指示を出したの。先生が青ざめて震えているのだけれど。


 色々気になることはあるが素直に従い、まずは今まで学んだ属性魔法を使用しながらコントロールを極めることにした。


 何事も基礎の反復が大事。焦りは禁物。



  ◇◇


「防音魔法、ですか?」


「ええ、便利でしょう?これならお仕事の話も気兼ねなくできるわ。実はウィルお兄様から、カイ様とふたりでお話しするのを禁止されてしまって。ソフィーには伝えてあるから今後この部屋でお話しするときは、練習も兼ねて使用してもいいかしら。」


 特訓を始めて数週間。私はいつもの応接室でカイと向き合っていた。


 入学したばかりで忙しいのか止められているのか、ウィルお兄様の帰宅は結局一度もないまま、私は日々勉強と魔法訓練に明け暮れている。


 無属性魔法はまだ後回しにするつもりだが、魔法学の先生にひとつだけ先に取得したいとお願いして防音魔法を教えてもらった。


 商品化の話をするときにはどうしても前世の話題が出ることが多いので、アロマストーンの発売についてという名目で訪ねてきたこのタイミングで使ってみようと思っていたのだ。


「もちろんです。ウィルフリード様のご機嫌を損ねたくなどありませんし、今後の商談を禁止されても困りますからね。」


 カイは真面目な次期会長モードで悪戯っぽく笑うと、ソフィーをちらりと見た。お兄様のシスコンぶりは私が軽く話しただけだが、ソフィーにも念押ししていると察しているのだろう。


「じゃあ今から使うわね。」


 私は防音魔法をゆっくり、丁寧に発動させた。

 範囲指定を今座っているテーブルセットぎりぎりに固定して、魔力消費が最小限になるように。範囲内の空気が変わり、一瞬だけきーんという高い音が鳴る。成功した合図だ。


 防音魔法のような範囲魔法は基本他人には視認できないが、発動者より魔力が高かったり技術が優れていたりすると察知されることもある。私の魔法を感じ取れるのはおそらく特殊眼持ちか上級魔法士くらいだろう。


「展開できたわ。」


 ほっとしてカイにもういいよと笑いかけ合図する。聞こえないだけで姿は見えるので姿勢を崩すことはできないが、これで普通に話せるだろう。


「お、助かるわ。にしてもやっぱりすげーなぁ魔法。俺も商人として防音魔法は使えるようになりたいけど。」


「カイも魔力あるんだよね。平民の魔力持ちは全くいないわけじゃないけど、やっぱり転生者特権だったりするのかな。」


「かもな。俺が魔力に気づいたの、記憶取り戻した後だったし。」


 ということは、やはりカイはゲームには出てこないのかな。転生していなければ魔力がなく、学園にも通わない。せっかく知り合えて同じ学園にも通えるのだから、もっと知人を作ってフライハルト商会をアピールしていかなければ。


魔法は時々出てくる程度なので、設定の作り込みは甘いです。

後々矛盾等出てくるかもしれませんが、寛大な目で見てくださるとありがたいです。

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