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嵐に隠した真実


 高校三年生にもなると恋だの愛だのという感情に振り回されることなく、進路を決めてそれに向かっている同級生も少なくない。にも拘らず「凪君、可愛いよ会いたいよ欲しいよぉ~」と嘆いているのは同じクラスの牧野恵。

 赤毛のショートボブで容姿も悪くない。学年内でも彼女にしたいランキング二位になるほどの人気があるんだが、ちょっと可哀そうな性格のせいで一人狼のような学校生活を送っている。

 俺の机に腰かけてはスマホの画面を見せてきては乙女な表情で上半身をユラユラメトロノームしている姿は可愛いのに、口から漏れている一言一句が「抱きしめたい・持ち帰りたい・どうにかしたい」と三密ならぬ三たいと、ストーカー染みていて怖い。

 これが彼女にしたいランキング二位の牧野恵である。

 残念だよな、まったく。

「恵、昼飯の邪魔だ」

「いいじゃん、つばさ。それより見てよ! 凪君、どう?」

 スマホの画面には恵と凪君、黒髪の女性が映っていた。

「凪君ってこいつか、冴えない顔してるけど」

 恵はほっぺたを膨らませてスマホをスカートのポケットに入れた。

「つばさには分かんないんだよ、凪君の可愛さが」

 男の俺に分かるわけがない。だからそのままを口にする。

「分かるわけないだろ、同意もしかねる」

 そんなぁ~という表情を浮かべる恵には悪いが、女性同士特有の共感は他でしてほしいと友達になってからずっと思っているんだが。

「そもそも恋バナなら茜たちがいるだろ」

「茜は勉強が忙しいって相手してくれないし、彼氏もいるから私の恋なんて鼻で笑いそうだもん」

 教室の入り口で茜の声が飛んできたが無視しよう。俺のせいではない。うん、そのはずだ。そう心の中で言い訳していると、恵は何かを思いついたようで顔を近づけてきた。

「そうだ! 今週末に凪君とはるかの三人で会うからつばさも来てよ!」

「もともと呼ぶ気だったんだろ、あと近いな」

「……バ、バレてる」

 いつものようなやり取りに笑いながらも、スケジュールを確認する。

「今週末なら空いてるけど、どこ?」

「越谷レイクタウン、十一時に駅前集合」

 胸の前でこぶしを握る恵は、目をハートにしながら「分かってるよね?」と聞いてきた。

「分かってる、二人きりにすればいいんだろ」

 告白する気ならデートにでも誘えばいいのに。

 そういえば、はるかと呼んでいたのは映っていた黒髪の女性のことだろうか? 何も聞かずにOKしてしまった。ブンブンと頷いている恵に聞いてみる。

「その前に、はるかって誰?」

 ふふ~んと何故か自慢げな表情に変わる。そして、またスマホを取り出し俺に画面を向けながら話し始めた。

「さっきの写真の黒髪の子、可愛いでしょ~! この子がはるか。つばさはどう?」

 そう聞かれ、まじまじと画面を見てみた。

「可愛いというより、綺麗な感じ。恵と違って」

「綺麗な感じ、かぁ。ふ~ん、そっかぁ~」

「なんかむかつくな」

「はるか、彼氏いないんだって。チャンスだね、つ・ば・さ!」

 本当むかつく奴だと思う。高校からの付き合いだが、好みまで把握されているとは……。咳払いをしつつ話題を反らしてみる。

「そのはるかとはどう知り合ったんだ?」

「そう来るか。小学校の頃からかな、はるかが転校してきたの。最初は無口で孤立しかけててさ、気になってたから友達になろうって声掛けたのがきっかけ。それから中学卒業までは一緒だったんだけど、高校から別々になっちゃって……。いまでもよく会うからいいんだけど」

 如何にも恵らしいなと思う。いまでも変わらず周りを見ているというか、カースト上位にいながらも誰とでも隔てなく接しているのを知っている。

「でもね、最近また無口になりだして心配してるんだよね」

 その声音はさっきよりも弱く、耳に強い不安が掠めた。

「なにかあった……?」

 すると、少し考えるようにして。

「っぽいんだよね」

 と、それだけを口にした。それから「会った時は話聞いてあげてよ」と付け足し笑顔に戻った。

「分かった」

「じゃあ週末はよろしくね!」

 そう言うと、恵は帰るために机からすっと立ち上がり自分の机にスクールバッグを取りに戻った。


                                   続く



初めまして、天ヶ瀬衣那と申します。

名前が読めないと多々言われますが。。。

あまがせ えなと読みます。

平仮名だと選挙ポスターみたいに見えますね笑


何者?と言われると難しいのですが、別名義で普段は歌詞や漫画原作などを書く仕事をしています。

皆さまが知っているものにも関与しているかも。


なろう系というものに初投稿なので、これでいいのかなと思いつつも書かせていただきました。

Butterfly Effect(以下バタエフ)というエンタメユニットでYoutubeなどで現在配信中のシチュエーションボイスドラマ「何度も聞かせて」のシナリオ・脚本を担当しています。


バタエフって何?と思いますよね。

作曲家のKainé・芸能事務所アーティストクルー代表の松田薫・シナリオライター天ヶ瀬衣那の三人で立ち上げたエンタメユニットです。そして、この作品はその第一弾にあたります。


ボイスドラマが先行して配信されていますが、お聴きになりましたでしょうか?

実は主人公の近野つばさは出演していないのです。

これは何故か?


これから明かされていく久遠はるかという女の子にあなた自身が向き合ってほしいから。

様々な境遇や選択肢の中で、人との繋がりとは何か?

そういったものを考え合える作品になってほしくて、違うテイストとなっています。


この物語はまだまだ始まったばかり。

どうかお付き合いいただければと心より願います。

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