九話 めちゃくちゃな論争、展開。
新しいお話です。
「昨日は、本当にお疲れ様!お陰でテニス部は、結構一年生が入ってきたみたい。楓もめちゃめちゃ感謝してたし、よく頑張ったよ!」
椎名さんは僕らに、嬉しそうに昨日の事を伝えた。
部活動見学三日目。昨日の、少しだけ楽しかったと言う気持ちや、今更だと言う気持ちが邪魔して、もはや抵抗すること無くここまで来てしまった僕は、他の一年生三人と共に、一列に席に座っている。
「ありがとうございます、椎名さん。それで、これは何でしょうか…」
鈴木さんは、僕と同じように一列に座り、黒板に書かれている内容をみながら、不思議そうに椎名さんに質問する。椎名さんは、その質問待っていたのか、嬉しそうに鈴木さんを見て、それから黒板の方へ向く。
「今日はこれから、朝ごはんはご飯派と言う人と、パン派と言う人による、大討論会をします!」
椎名さんは、黒板を指しながら、意気揚々とそう答える。その目には、気合いが溢れていた。しかし一年生達は、微妙な目で椎名さんと、その黒板を見つめる。
「なにそれ、どうでも良くない?w」
戸村さんが笑いながらツッコミを入れる。その場にいた全員が、戸村さんと同じことを思っていたのか、微妙な空気になる。しかし、その空気をぶち壊すように、そのツッコミに反論してくる人が、僕らの後ろに居た。
「どうでも良くない!大体、朝ごはんなのにパンを食べるとか、おかしいでしょ?」
「何がおかしいの?朝ごはんなんて、何を食べようと私の勝手でしょ?そもそも、朝からご飯を食べるなんて、私には出来ないわ。だって、お腹いっぱいになっちゃうもの。」
「パンだけだったら、バランスの取れた食事じゃないだろ!ご飯だったらそこに、主食、副菜、汁物、飲み物とかがあって、めちゃめちゃバランスが取れているんだぞ。」
「あら。別にパンだからと言って、それらを取らないなんて一言も言って無いわよ?私はパンに、スープやコーヒ、目玉焼きなんかをいつも付けているわ。お洒落で美味しい朝ごはんを、いつも頂いておりますわ。」
椎名さんは煽っているのか、口を手で隠しながら、お嬢様のように上品に笑って見せた。小野寺さんは、それにカチンときたのか、余計にヒートアップし始める。
「一年生が見てる前で、そんな子供みたいなことしないでよー。ごめんね皆、いつもこの二人はこうなんだよねー。」
戸村さんが、全く止める気が無さそうに、笑顔でそう言った。本当に二人は、収まる気も僕らを気にかけるとこもせずに、勝手に盛り上がっている。
「本当はさ、ここあんまり活動しないから、部活動見学でもする事無いんだよね。うちの学校、文化部と文化部だったら兼部出来るから、そうした方が良いかも。お悩み相談とかは、部室に誰か一人でも居れば良いし、滅多に来ないから、基本暇なんだよね。」
確かにお悩み相談は、そう毎日来るものでは無い。いつも暇なら、こんなくだらない論争を繰り広げているのも、納得がいく。僕は、兼部について少し考えてみる。
いや、ちょっと待ってくれ。まだ僕はこの部活に入るなんて一言も言っていないのに、何故この部活は確定みたいになっているのだろう。僕は、不安になって戸村さんの方を見る。すると、戸村さんも僕を見ていたのか、目が合った。
「どうしたの斗真、なんかあった?」
戸村さんは、意味深な笑顔で首を傾げる。完全に分かっててとぼけているのが、まるわかりだった。僕は、悔しくて「いや、何でも無いです…」と言いながら、フイッと視線を逸らす。雅弘は、本当に何も分かってないのか、首を傾げて、不思議そうに僕の顔を覗く。
「私達は、一応写真部を兼部するつもりです。」
鈴木さんがそう言って、少し離れたバッグから、自分用のと思われるカメラを持ってきた。カメラには詳しくないが、相当高そうなカメラのような気がする。
「良いね、写真部。もう見学した?」
「いや、まだです。」
「じゃあ、今から行ってくれば?今日は大した活動じゃ無いし、どうせだったら色んなところ見学した方が良いよ。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
そう言って鈴木さんと橋本さんは、写真部へいく準備をし始めた。僕が他の部活の見学に行きたいと言ったときには全然行かせてくれなかった事を思い出す。僕は余計にイラッと来て、もう一度戸村さんを見た。今度は睨むように。するとそれに気づいた戸村さんが、一瞬驚いた後、すぐにまた意味深な笑顔になって、首を傾げる。
「だって斗真は、兼部じゃなくて他の部活に入ろうとしたじゃん。」
「……なんで……」
なんで僕の心の中を当たり前のように読むんだろう。
「だって、顔に出てるんだもんw」
「…………」
僕は咄嗟に顔を下に向ける。雅弘は、さっきからついていけないのか、僕と戸村さんを交互に見て、不思議そうに頭を掻く。
「一応、部長の小野寺さんに、兼部の事いった方が良いですよね?」
未だに論争を繰り広げている先輩二人をチラッと見ながら、鈴木さんは戸村さんに質問する。
「うん一応言っといた方が良いね。でもなーw…」
この二人は完全に二人の世界に入っているようだった。よく聞くと、朝ごはんの話から段々とただの口喧嘩に変わっていっている。
「あの…小野寺さん……」
鈴木さんが、恐る恐る声を掛けようとする。しかし案の定、二人には全く聞こえていない。それどころかその口喧嘩は、鈴木さんに話し掛けられた事によって、何故か勢いを増していく。
「そもそもお前、恋愛相談なんかされる程、恋愛したこと無いだろw」
「あの…」
「はあ?失礼ですが、あんたよりはありますけどぉ?」
「はあ?俺の方があるわ!」
「ちょっと……」
「いや、私の方があるね!」
「いや、俺の方が……」
「あんた達!」
二人の口喧嘩を遮って、勢いよくノックもせずドアを開けて怒鳴ったその声の主は、仁王立ちで腰に手を当てて、いかにも叱りに来ました見たいな顔をして、そこに立っていた。
一斉に、皆がそちらを向く。一瞬にして部室が静かになった。
「「げっ、辻井先生!」」
さっきまで、うるさかった二人が声を合わせる。
僕はあまりにも展開が速すぎて、さっきから着いていけていない。そして、めんどくさい予感がしたので、なるべく僕の方に注意が向かないように傍観を決め込む事にした。
次回、青春研究部の誕生秘話...
どういうお話にするか、かなり迷いました。
先輩回だとネタが多くなってしまう...
沢山の人に見られて嬉しいです!これからも頑張ります!