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恋する青春研究部  作者: 午後の秋翔
5/13

五話 僕だけ強制じゃん...

お悩み解決編


 波乱(はらん)の部活動見学の初日が終わり、二日目が訪れようとしていた。



 僕は、昨日のような失態(しったい)を起こさない為にはどういう行動をとるべきか、一日中考えていた。しかし、考えれば考える程、苦し紛れな作戦しか思い付かない。


「きょ、今日は、どこ見学する?俺、実は行きたいことあるんだけど。」


 結局は、一番始めに思い付いた作戦を実行していた。頼む雅弘、乗ってくれ。


「なに言ってんだよ、昨日小野寺さんが明日も宜しくって言ってたじゃんか。今日も青春研究部行くんだろ?」


「…………」


 こんなにもあっさりと返されると、逆に清々(すがすが)しい。「ほら行くぞ」と、僕の手を引っ張る雅弘に身を任せて、席を立つ。


「あー、行くかー。」


伸びをしながら、あからさまにめんどくさそうな顔をする僕。それを見た雅弘は、不思議そうに首をかしげる。


「あの部活、そんなに嫌?」


「え?」


「いや、なんかめんどくさそうな顔してるなって思ったからさ。さっきも、他の部活に行こうとしてたし。」


 そこまで、読まれてたんだ。雅弘は、僕にだけ(かん)(するど)いような気がする。


「俺は良いと思うんだけどな。だって、あの部活めっちゃ(らく)そうだし、凄く先輩達優しいし、それに…」


「椎名先輩が可愛いからだろ?」


「なんで分かった!?」


「昨日、目がハートになってたぞ。」


 雅弘は「まじかー」と言いつつ、(ほほ)()く。


「そうだよ。てか椎名()()な?また戸村さんに言われるぞ。」


 戸村さんは本当に怖い。そう言えば、名前も覚えられているので、違うところへ行ったら、何されるか分からない恐怖(きょうふ)もある事も忘れていた。


「結局、なんで行きたくないの?」


「…………」


 すぐに言おうとして、言葉につまる。あれ?そう言えば何故僕は、行きたくないと感じるのだろう。

 理由は沢山(たくさん)ある。活動内容が僕に合ってないから。あの部活の人達に馴染(なじ)めなさそうだから。戸村さんが怖いから。しかし、そのどれもがしっくり来る理由にはならなかった。


「まあ、斗真が本当に嫌なら、別に違う部活見学しても良いよ?」


「うーん。そんなに嫌って訳ではないけどさ…」


 僕は答えに困って、目線を下げてごにょごにょと、小さく(つぶや)く。

 

「じゃあ、どうするか決めるためにも今日は行ってみようぜ?」


 雅弘の提案(ていあん)に、一瞬考えてから「そうするわ」と、返事をする。


「よっしゃー!じゃあ今日は、今日は椎名さんの連絡先を聞いてやるぞー!」


 今日も、椎名さんに会える喜びで、雅弘は大胆(だいたん)で大きな宣言(せんげん)をする。そのせいで、クラスの人達の視線(しせん)が、一気に僕らに集中した。僕は慌てて雅弘に、小声で止めに入る。


「雅弘!登校二日目でそんなに、大きな声で凄いこと言っちゃうと、目立つから辞めて。それに、椎名さんに彼氏が居る線もちゃんと考えてるのか?」


 雅弘は、さっきの宣言の時に(かか)げていた腕を、がくんと落とす。


「うーわ…確かに。」


 そして一人でぶつぶつ、「そうじゃん…」とか、「まじかよー」とか言ってので、僕はなんとなく頃合いをみて、先に行こうとする。

 予想通り雅弘は、ぶつぶつ言いながら僕についてくるのが、声で分かった。




 僕らが第二理科室へ入ると、昨日の五人に加えて一人の女子が、椎名さんと向かい合って話し合っていた。

 一瞬、新しい部活動見学の子かなと思ったけれど、運動部のオリジナルTシャツのようなものを着ていることから、先輩だと言うことがすぐに分かった。

 僕らは、挨拶を小声で済ませ、なんとなくそこから離れた席に着く。


「椎名ー。どうしよー。これじゃあ、部員集まらないよー…」


「うーんそうだね…でもまだ一日目でしょ?」


「運動部は、一日目が勝負だったんだよ…」


 なるほど、部活動見学で中々人が集まらないから、ここに相談しにきたのか。

 それにしても、昨日までは正直、相談の話が来ることなんてほとんどないだろうと思っていたが、本当に椎名さんが対応(たいおう)しているので、そこにびっくりする。


「そう言えば、ここには一年生誰か来た?」


「来たよ。ほらあそこの四人。」


 そう言いながら椎名さんは、僕らの方と一年女子達の方を見る。相談に来た先輩も「へー」と言いながら、興味深(きょうみぶか)そうに見た。


 二人が興味深そうにこちらを見ているので、なんとなく視線(しせん)を逸らしたくて、戸村さんと小野寺さんの方を見る。すると、急に立ち上がった戸村さんが、二人の方へ向かっていった。


「ねーねー。こうするのはどう?」


 後ろから急に話し掛けられたその先輩が、びっくりして立ち上がる。椎名さんもこちらを見ていたので、突然(とつぜん)の戸村さんの登場に目を丸くする。しかし、戸村さんはそんな事お構い無しかのように、にこにこしながらその話に割り込んだ。


「要するに、見学してくれれば楽しさ分かってくれるのに、見学してもらえなくて困ってるんでしょ?」


「うん。」


 その先輩は、戸村さんに話掛けられて、少し戸惑(とまど)いながら(うなず)く。


「じゃあ誰かが見学して、その見学している姿を他の一年生が見たら、自然と人が集まるんじゃない?」


 確かに、誰も入ってないと、入るのにも少し勇気がいる。しかし、誰かが入っていれば、その部活の見学内容も見れるし、入る時にも、すんなり入れるだろう。でも…


「でも、翼?それだと結局(けっきょく)、誰か入らないと始まらないよね?てことは、今のこの状況(じょうきょう)から変わってなくない?」


 椎名さんは、僕の思っていたことと、同じことを口にする。しかし戸村さんは、いたずらを思い付いたような笑顔のまま続ける。


「見学してれば誰でも良いんでしょ?一年生なら。ならさ、この部活の一年生達に、見学のふりをして(もら)えば?そうすれば、自然と人が集まるんでしょ?」


 なるほど、一年生が居れば他の一年生達も…


 ん?


「それ良いじゃん、そうしようよ!翼、ナイスアイデア!」


 椎名さんもその先輩も、その戸村さんの作戦に賛同(さんどう)していた。隣を見ると、あからさまに目が死んでいる運動の出来ない男が、ため息をついている。今回は、自分より雅弘の方がピンチなので、なんとも言えない気持ちだった。


「じゃあ、どうする?最低(さいてい)何人なら足りる?」


 椎名さんが、こっちの了解(りょうかい)もなしに話を進める。普段(ふだん)だったら、絶対に口出しをしているであろう雅弘も、椎名さんが進めていたので、何も言えない。


「うーん、最低二人かな。そうだねー、あの子とあの子かな?」


 そう言って指を指した先に、何故か僕と入学式寝ていた子が居た。あれ、確か橋本さんだったような。

 そんなことは、どうでも良い。隣で、さっきまで絶望(ぜつぼう)寸前(すんぜん)だった運動の出来ない男が、(にく)たらしい笑顔で僕を嘲笑(あざわら)う。なんて、調子の良いやろうなんだと思いつつ、何故僕ら何だろうかと、疑問(ぎもん)に思う。雅弘や橋本さんの隣の子(確か、鈴木さん)の方が、運動出来そうなのに。


「何で、あの二人なの?」


 戸村さんが、面白そうに僕を見ながら、その先輩に質問する。


「だって、運動出来そうな子より、運動出来なそうな子の方が、練習風景(れんしゅうふうけい)を見てて、親しみやすいでしょ?」


 一瞬だけ、なるほど!と思ったが、馬鹿(ばか)にされているのに気づいた。無意識(むいしき)なのが一番(たち)が悪い。

 僕は、さっきからにやにやしながら見ている雅弘と戸村さんを、あえて無視して橋本さんの様子を確認(かくにん)する。すると、向こうもこちらを見ていたのか、目が合ってしまった。しかも、どちらも目を離すタイミングを(うしな)ってしまい、石化(せきか)したみたいに、どうすることも出来なくなってしまう。


 橋本さんがにこっと笑って首をかしげる。僕は、呪いが解けたみたいに、目線を下に移す。こんなにも女子と目が合ったのは、いつぶりだろうか。僕は、急に恥ずかしくなって頭を掻く。

 隣ではまだ、雅弘がにやにやしていたので、あまりに一瞬の出来事(できごと)だったのだろうと、実感(じっかん)する。


「静香を一人にさせたくないので、私も参加して良いですか?」


 鈴木さんがいきなり立ち上がって、そう(うった)える。その時、一瞬だけ僕を見た…と言うより、(にら)んだような気がする。


「まあ、多いに越したことはないし、良いんじゃない?」


 椎名さんは、鈴木さんの訴えに、軽々しく承諾(しょうだく)する。

 じゃあ、僕が抜けて、その二人で良いのでは?と思ったときに、戸村さんがあまりにも余計な提案をする。


「じゃあ、もう四人全員で参加しちゃえば?」


 (あん)(じょう)雅弘は、驚きのあまり口をポカンと開けて、呆然(ぼうぜん)としていた。

 僕はその顔の変わりようと、部活前の連絡先の話を思い出して、思わず他人事(たにんごと)のように鼻で笑ってしまった。戸村さんも、よりいっそう笑顔で雅弘を見る。


「ちょっと待ってくれ!さっきから、勝手に話を決めてるけど、一年生がまだ鈴木しかやるって言ってないぞ。一年生、皆がやりたくなかったら、言って良いんだぞ?」


 さっきまでずっと傍観(ぼうかん)を決め込んでいた小野寺さんが、一年生に助け船を渡す。


「茜が一緒なら、わたしはやります。」


 橋本さんは、鈴木さんの腕に巻き付きながらすぐに言う。


「じゃあ、雅弘は?」


「え、あ…」


 考える時間もないうちに、椎名さんにどうするかを聞かれた雅弘は、困惑(こんわく)と焦りで変な声が出る。名前呼びも含めて、これは完全に誘惑(ゆうわく)だが、運動が苦手な雅弘はどうするのだろうか。期待(きたい)と不安が一気に雅弘に(ゆだ)ねられる。


「え…は、はい。俺も参加します。」


 おい。


「本当に!?ありがとうね!」


 椎名さんが、嬉しそう目をキラキラさせている。それを見て雅弘は、自分の不甲斐(ふがい)なさからか、あるいは椎名さんの喜んでいる姿からか、愛想笑(あいそわら)いを浮かべていた。僕も、少なからず自分も(ことわ)る線が薄くなって、落胆(らくたん)した。


「よしまあ、一年生も大丈夫らしいから、後は(たの)んだよ。」


「本当に一年生の皆も翼君も、椎名もありがとう!じゃあ、私に着いてきて!」


 雅弘には申し訳ないが、僕は参加しないぞ…


 ん?



 あれ?もしかして僕、忘れられている?


 小野寺さんとその先輩は、嬉しそうに一年生を見ていて、全く気づいている素振りがない。それどころか、意味深(いみしん)に笑っている戸村さん以外皆、僕がまだ聞かれてないことに気づいていないようだった。怒りではなく、(むな)しさが込み上がってくる。



 僕は大きなため息をついて、わざわざ言うのもめんどくさくなり、なにも考えずついていく事にした。





 次回、運動部に仮入部する四人。一体何故、部活に人が入らないのか...



 少しづつ、見てもらえる数が増えていっているので、とても嬉しいです!


良ければ、コメントや感想も頂けると、ありがたいです。


もっと文章を上手く書けるように、頑張ります!



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