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恋する青春研究部  作者: 午後の秋翔
3/13

三話 脅迫だよね!?

続きです。


「ごめんごめん。じゃあ活動内容話すね。」


 そもそも、ここの部活に入る予定ではないので、身構えて聞く必要はない。しかし、さっきから妙に目がキラキラした隣の奴と、僕の今日の運の悪さ、そして先輩達の話から()()()の事を考えて、しっかり聞くことにする。


「まあ、さっきも言ってたように、何かをするって言うのはあんまり決まってないけど…とりあえず、青春っぽいものを応援したり、助けてあげたり、俺らもしてみたりするのが活動内容なんだけど…分かるかな?」



 なるほど、全然わからん。青春っぽいものってなに?助ける?僕らもしてみる?やばい、活動内容の一ミリも理解出来なかった。

 雅弘は、何故か分かったように首を縦に降っている。今の説明でどこら辺が理解できたのか、教えてほしい。


「なにその説明w三浦君は何故か分かってるけど、小林君が全然理解出来てないじゃん。」


 隣で小野寺先輩の話を聞いていた、椎名先輩が、僕の気持ちを代弁(だいべん)してくれた。本当に部活内容も、隣が頷いているのも、理解できない。


「すまん、俺説明下手だから、椎名が代わりに説明してくれ。」


 小野寺先輩が少し恥ずかしそうに頭を()く。


「しょうがないなー。じゃあ、優斗と翼は向こうの一年女子と、話しててよ。早く部活に馴れてほしいし。」


 椎名先輩がそう提案(ていあん)すると、小野寺先輩は、分かったと言って、向こうの一年女子の方へ行く。戸村先輩は、もう既に向かい合って一年女子達と話始めていた。


「よしじゃあもう一回、活動内容について具体的に説明するね。」


 小野寺先輩と入れ替わるように、椎名先輩が向かいに座る。やはり、より近くで見ると美人さが際立(きわだ)つ。耳に髪をかけるその仕草(しぐさ)は、もはやコマーシャルに出てきても問題ないくらい完成度の高いものだった。

 そう思いながら僕は、今度こそ内容が聞けるのかと、再度(さいど)身構える。


「まず、ここの部活の一番大事な部活の目的は、色んな人のお悩みを聞くこと。それも、ただのお悩みって言うよりは、恋のお悩み。つまりは、恋愛相談を受け付けている部活なの!」


あーね。

 僕は、大体予想はついていたが、かなり気を落とす。

 恋愛相談。それは、僕の人生の中で一度も関わったことのない言葉だった。

 平凡な顔に加え、なるべく女子と話すのを避けてきた僕は、恋愛相談どころか、恋愛自体したことがない。

 そんな僕が、恋に悩める人達の気持ちを理解することなんて出来る訳がない。理解が出来ないのなら、この部活に絶対に()()()()に決まっている。そう思うと急に、肩の力が抜け、安心して聞けるようになった。


「実は、私がこの部活を作ったんだけど、私のところにあまりにも恋愛相談が来るから、いっそのこと部活にしちゃえって思ったの。そうすれば、今まで解決できなかった問題も部活で人がいれば解決出来る事もあるじゃない?」


 恋に悩める人達が、椎名先輩に恋愛相談をするのは理解ができる。

 椎名先輩は、とても美人で恋多き人に見えるし、実際そうなんだろう。だから、僕がゲームが得意な人に、ゲームの攻略法を教えてもらうように、恋愛に詳しそうな椎名先輩に、恋愛相談を持ちかけているのだろう。

 …でもそれが、部活になって解決できるようになるとは、どう言うことなんだろう。恋愛に(とぼ)しい僕には、分からなかった。


「まあ、相談って言っても恋愛系だけじゃなくて、私達ができる相談にはなるべく乗ってあげるの。くだらない話や、色んな人の人間関係も聞けるから、結構楽しいよ。」


 くだらない話はともかく、他人の人間関係にあまり興味がないので、隣の興奮(こうふん)を抑えられない奴と一緒に、なんとなく首を縦に降る。


「それとさっき優斗が言ってた、俺らもしてみたりするってのは、私達も青春を満喫(まんきつ)するために、夏は海とか、冬はスキーとか自分達の好きなところに行ったりするの。部活の一貫として行くの、ワクワクするでしょ?。」


 好きなところに部活の一貫として行けるのは、インドアな僕でも少しは心の踊る内容だった。これがアウトドアな人だったら部活の一貫で、どこかへ遊びに行くのは、たまらないのだろう。

 その証拠に今、僕の隣の奴が席をたって、言い放った。


「俺、ここの部活入ります!」


 今度は僕が、あきれたように雅弘を見る。さっきから思ってたけど、こいつ多分椎名先輩に一目惚れしてるな。目が分かりやすいぐらい、ハートになってやがる。


「本当に!?ありがとう。じゃあこれからよろしくね。」


 そう言って、椎名先輩は、片目をぱちっと(つぶ)ってウインクをした。あまりに、その姿が様になりすぎて、僕は素直に感心(かんしん)した。

 隣の一目惚れボーイは、あまりに感動(かんどう)しすぎたのか、口をあけたまま、ぽーっと顔を赤くしている。


「じゃあ、だいたい活動内容も話した事だし、そろそろ最初の活動始めるかー。」


 そう言って先輩たちは、黒板のある教壇の机に向かう。嫌な予感…さっきからこの部活は、僕らがもう入る前提(ぜんてい)で動いている気がする。

 まだ入ると決まってないのに、「これからよろしくね。」とか、勝手に活動を始めようとしているのがその証拠(しょうこ)だ。今ここで帰ると言わないと、もう返してもらえない気がして、僕は勇気を振り絞る。


「あの、まだこれから見学したい部活があるので、僕はここら辺で…」


「「「「えっ!?」」」」


 先輩たちと、ついでに雅弘がこちらを向いて声を出す。…僕、そんなに変なこと言った?

 部屋の空気が一瞬止まった後、最初に声を掛けてきたのは、椎名先輩だった。


「そっかー、私結構小林君に入って来て欲しかったんだけどなー。」


 そう言いながら椎名先輩は、手を後ろに組んで、(のぞ)き込むように僕を見つめた。

 その上目遣(うわめづか)いに、僕が一目惚れボーイだったら、心を打たれていたのだろう。

 あいにく僕は、女子と一対一で話すと、ドキドキすると言うより、おどおどしてしまう人なので、心を打たれずに済む。


「いや、お気持ちはありがたいんですけど、その、僕、あんまり恋愛相談とか持ちかけられたことないので、ここの部活に入ってもあまり活躍できないんじゃないかなーって…」


 いやいや、何で僕が言い訳してるみたいになってるの?普通に早く、この部屋から出してくれよー。

 心の中の強気な僕と違って、口から出た僕の声は、あまりにも弱気だった。


「実際、恋愛相談なんかほとんど、椎名がやってくれるから俺らは、その手伝いとかしてるだけなんだけどなー。まあでも、他に行きたいところがあるならしょうがな」


「ねえ、斗真君」


 小野寺先輩が、まだ僕に何かを言う途中だったのにも関わらず、戸村先輩がそれを(さえぎ)って僕に近づく。小野寺先輩は、ちょちょちょと、戸村先輩を止めようとするが、まるで聞いてないようだった。

 そして、笑顔を絶やさない戸村先輩は僕の前に来る。


「この部活が、一番最初に来たんでしょ?なのに、この部活が本命じゃないの?」


「それは、雅弘と一緒にとりあえずここ行ってみるかって、話になって来ただけでどこでも良かったって言うかなんと言うか…」


「どこでも良いなら、ここ楽だしここにすれば?」


 うわ…この人、痛いところついてくる。

やばい、ここままじゃあ、この圧に押されてしまう。僕は、一歩後ろに足を引く。すると、戸村先輩も負けじと、前に出る。


「まあ別に、他のところに行っても良いけど、斗真君。名前覚えたから。」


「え」


 やばいやばい、これって脅迫(きょうはく)だよね!?僕は、背中からひんやりした汗が出ているのを感じながら、そっと戸村先輩の顔を見る。いつもと変わらない笑顔。やばい。この人本当にやばい人だ、誰か助けて。


「翼!後輩怖がってるからその辺にしとけ。」


小野寺先輩が、僕に助け船を渡す。間一髪(かんいっぱつ)、僕はその笑顔の先にある恐ろしいものに触れなくて済んだ。


「ごめんね、斗真君。じゃあどうする?他の部活に行く?」


「…………」


 戸村先輩が笑顔で聞いてくる。本当は、他に行くところなんてないし、ここで逃げたらどうなるのかも怖い。僕は、そのせいですぐに反応が出来なかった。すると、僕より先に戸村先輩の話に反応した奴が居た。


「斗真、別に行きたいところないって、昨日言ってなかった?」


 こんの一目惚れボーイ!何でこのタイミングで、そんなこと言っちゃうんだよ!

 その雅弘の発言に俺含め、皆がそちらを向く。雅弘は、僕をからかいたかった訳でもなく、ただ純粋(じゅんすい)に空気が読めてない様子だった。え、俺なんか凄いこと言った?見たいな顔をしている。


「ふーん?だって、小林君。」


「あはは…」


 椎名先輩が、笑顔で近づいてくる。先輩二人に追い詰められた僕は、もう何も言うことが出来なかった。





次回、ついに一年女子達が...


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