一話 因果応報ってこう言う時に使うんだ。
初投稿です。よろしくお願いします。
「斗真ー?もう8時だけど時間大丈夫なの?」
一階から母の声がした。
「んー、もーちょい……今何時?」
「だから、もう八時よ?」
「まだ、8時かー…ん?8時!?」
驚きのあまり、さっきまで絶対に手放したくなかった布団を、ベッドの外に投げる。
やばい、完全に寝坊した。後三十分しか時間が無い。しかも今日は、大事な入学式当日。完全に終わった。嘘だと信じて、慌ててスマホを確認する。
「しっかり、8時だ。」
完全に目が覚めた僕は、取りあえず階段を急いで降りて、一階にある洗面所で顔を洗い、歯を磨く。朝ごはんを食べてる時間は無いので、食器を洗っている母に愚痴る。
「何で、もっと早く起こさないの?」
「起こしたわよー。斗真が起きないのが悪いんでしょう?」
もっと大きな声で起こしてくれよと、心の中で反論する。僕はもう一度階段を登って、自分の部屋にある高校の新しい制服に着替えた。鏡の前で自分の全身を確認する。
「よし!」
そして昨日準備してあったバッグを持って、玄関に向かう。今何時かをもう一回確認するために、スマホを開く。まだ3分しかたって無い。これならまだ、ぎりぎり間に合うかもしれない。
「行ってきまーす。」
僕の家は山の上の方にあって、行きなら30分で学校に付くはずなので、飛ばせばまだ間に合う距離だ。
僕は中学の頃に使っていた近道を使って、車があまり通らない坂道の道路を、ペダルを漕がずに下っていく。この場所は、町の景色を一望できるので、とてもお気に入りだった。
しかも今日は雲一つない晴れだったので、景色がとても綺麗で気分がとても良い。そのまま僕は、のんきに鼻歌を歌いながら学校へ急ぐ。
「えーじゃあ次、小林は居な…」
「遅れましたー!」
教室の後野のドアをがらっと開けて、僕は担任と思われる先生の出席確認の声を遮る。
「お前、小林か?」
「はい、小林斗真です。遅れてすいませんでした。」
「分かった、席に座れ。」
意外にもさらっと流された僕は、クラスの人達に見られながら席に向かう。中には中学の頃からの知り合いも、にやにやしながらこちらに「頭おかしいだろ?」とジェスチャーを送って来た。
入学式はどこも変わらず、学校長挨拶や、新入生代表の宣誓、在校生代表挨拶など、退屈なものだった。
僕は、寝不足で今にも寝そうな体を起こして、あくびをかみ殺す。途中、隣の女子が眠気に負けて、首をかくんと前に倒して寝ていたのでそっとしておいたら、その子はそのまま退場ぎりぎりまで寝ていたので流石に焦って、「ねえ」と起こしてあげた。
「えー、じゃあ明日からは通常授業だから教科書やノートを持ってくるように。」
やる気の無さそうな担任の先生はそう言うと、号令をかけてそのまま教室を出る。と同時にクラスは、がやがやとうるさくなった。
「斗真ー。お前、登校初日から遅刻ってヤバイなw」
僕が帰りの支度をしていると後ろから、さっきジェスチャーを送ってきた男子に声をかけられた。こいつの名前は三浦雅弘で、中学の頃からの友達だ。よくゲームや遊びに行ったりする仲で、昨日も一緒に深夜までゲームをしていた。なんなら今日遅刻したのはこいつのせいでもある。
「お前、よく遅刻しなかったな。てかお前が昨日、深夜まで僕とゲームしてたんだから、もうちょっと申し訳なさそうにしろよ。」
「いや、お前が俺に惨敗したから、ムキになって何度も対戦を申し込んできたんだろ?じゃなきゃ、12時には寝れてたぜ?」
うん。完全に僕のせいだ。でも、それを言うのは負けた気がするので、僕は無視して帰りの支度を続ける。会話に未練を残さないタイプの雅弘は、依然としてにやにやしながら、僕の支度を待っている。
「そう言えば、昨日、負けた方が明日の部活動見学についていくって言う約束したよな?、俺が勝負に勝ったから、今日一緒に来てよ。」
「学生で賭け事は良くないぞ。」
早く家に帰って寝たいので、反論する。
「斗真の提案だろ?」
「…………」
完全に僕のせいだ。何をやっているんだ昨日の僕は。仕方ないので素直に命令に従う。
「どこ行きたいのさ。」
「おっ、やけに素直じゃん。んー、運動部は面倒臭そうだから、取りあえず文化部だな。」
見るからに運動部そうな見た目をしている雅弘は、見た目と違って運動がとても苦手なのだ。だから僕は、昨日勝負に勝って運動部に行かせるつもりだった。なのに負けてしまったら意味がない。「はあ」と、ため息をついた。
「おっ、これは?」
今僕が、ため息をついたのをまるで気にしてないかのように雅弘は、部活動見学の紙を僕に見せる。様々な部活がある中、雅弘が指を指したのは、文化部の一覧でも一番下にあった部活だった。
「何これ?青春研究部?嫌だよ。絶対こんなの、男女が出会う為に作られた部活じゃん。僕、そう言うのあんまり興味ないから違うのに…」
そこまで、言って嫌な予感に気づき雅弘を見る。案の定雅弘は、これでもかと言うほど、にやにやしていた。あー、やってしまった。完全に返り討ちにあった。
「じゃあ、今日はここ見学してみるかw」
最悪。たださえ、女子と喋るのが苦手な僕が、こんな部活に見学しに行ったら、浮いてしまうに違いない。雅弘、お前は悪魔か?と思ったが、自分も同じような事をしようとしたので何も言えない。今日と言う日をきっかけに、もう金輪際賭け事をするのは辞めようと、心に誓った。
不定期更新です。これからよろしくお願いします。